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  • 2022/11/18 掲載

「Unity」「Unreal Engine」とは? 2大ゲームエンジンの仕組み・活用事例を徹底解説

連載:デジタル産業構造論

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ここ数年、産業領域における先端技術の活用が進み、従来のオペレーションの効率化やビジネスモデルの変革が急速に進んでいる。そうした進歩をさらに加速させる技術として、現在コンピューターゲームを動かすためのソフトウェアである「ゲームエンジン」に注目が集まっている。ゲームの技術であったゲームエンジンが産業領域に大きな変革をもたらそうとしているのだ。本記事では、『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)の内容の一部に加え、本記事のために追加した内容をもとに、『ポケモンGO!』に採用されている「Unity」、『フォートナイト』に採用されている「Unreal Engine」といった世界の2大ゲームエンジンの特徴、ゲームエンジンの産業界の活用事例を1万5000字にわたって徹底解説する。
執筆:d-strategy,inc 代表取締役 、東京国際大学 特任准教授 小宮昌人

執筆:d-strategy,inc 代表取締役 、東京国際大学 特任准教授 小宮昌人

株式会社d-strategy,inc 代表取締役CEO、東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授

 日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、産業革新投資機構 JIC-ベンチャーグロースインベストメンツを経て現職。2024年4月より東京国際大学データサイエンス研究所の特任准教授としてサプライチェーン×データサイエンスの教育・研究に従事。加えて、株式会社d-strategy,inc代表取締役CEOとして下記の企業支援を実施(https://dstrategyinc.com/)。

(1)企業のDX・ソリューション戦略・新規事業支援
(2)スタートアップの経営・事業戦略・事業開発支援
(3)大企業・CVCのオープンイノベーション・スタートアップ連携支援
(4)コンサルティングファーム・ソリューション会社向け後方支援

 専門は生成AIを用いた経営変革(Generative DX戦略)、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム・リカーリング・ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス・ロボットSIer、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

 近著に『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)、 『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、経済産業省『デジタル時代のグローバルサプライチェーン高度化研究会/グローバルサプライチェーンデータ共有・連携WG』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)、日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

【問い合わせ:masahito.komiya@dstrategyinc.com】

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図表1:ゲーム・コンテンツ産業と、産業・都市領域の融合が進んでいる。その中核技術に「ゲームエンジン」がある
(出典:拙著『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』より作成)



ゲームエンジンとは

 ゲームエンジンとは、ゲームのソフトウェアにおいて、3D描画処理や物理演算、サウンド入力といった共通して用いられる主要な処理を代行して効率化するソフトウェアであり、昨今のゲーム開発においては広く活用されている。ゲームを開発する際、ゲーム内におけるあらゆる処理を1から作りこもうとすると工数がかかるが、これら処理をゲームエンジンを活用することで、開発工程は大幅に削減できる。

 代表的な例が、『ポケモンGO!』など幅広いゲームで活用されている『Unity』と呼ばれるゲームエンジンや、世界的なゲームフォートナイトを展開するEpic Games社が展開している『Unreal Engine』などだ(『Unity』『Unreal Engine』については、後ほど詳しく解説する)。

ゲームエンジンが注目される理由

 ゲームエンジンに注目が集まっている背景には、近年、産業領域で活用が進む「メタバース」と「デジタルツイン」と呼ばれる技術が関係している。

 メタバースとは、「アバターを介して相互交流することができる3次元仮想空間」を指す。メタバースの例としては、バーチャル空間上で複数人が自分のアバターを介して共同作業ができるようになる、メタ(旧フェイスブック)が提供している「Meta Horizon Workrooms」などが挙げられる。

 一方、デジタルツインとは、現実世界に存在する“物体”にそっくりな物体をデジタル空間上に再現し、可視化やシミュレーション、機器の制御などの最適化などに活用するための技術を指す。たとえば、建築物の設計3Dデータとともに、センサーから収集した情報を基に、デジタル空間に本物そっくりな建築物を再現し、建設工程のシミュレーションなどが行われているが、それらに活用されている技術がデジタルツインだ。

 重要なのは、この2つの技術が融合・補完しあうことによって、産業・都市に大きな変革をもたらすことができるようになってきている点だ。そうした、メタバース・デジタルツインを活用した変革を「メタ産業革命」と呼ぶ。そして、このメタ産業革命の実現において重要な役割を担うのが、ゲームエンジンというわけだ。

 具体的に、どのように「メタバース」「デジタルツイン」「ゲームエンジン」が交わるようになってきたのだろうか。

融合が進む「ゲームの技術」と「産業界の技術」

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メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP/小宮昌人著)
本書は60を超える事例を通じて、さまざまな産業・都市でのメタバース×デジタルツインの融合による「メタ産業革命」のインパクトについて解説している
 従来から、イノベーションがゲーム・コンテンツ領域から先に生まれて、産業・都市領域へ応用されるといったケースは多く見られた。近年は、メタバースやデジタルツインを融合した技術の活用が産業領域で進む中、ゲーム・アニメ・コンテンツ領域において活用されてきた技術と、産業・都市領域の技術の垣根も低くなってきており、技術がゲーム領域から産業領域へ(その逆も)といった流れがより直接的につながるようになってきている。

 具体的には、規制や既存の商慣習などに縛られないゲーム・コンテンツ領域で誕生した技術が、スパンの長い取り組みとなる産業・都市領域の取り組みを引っ張り、一方で産業・都市での取り組みがゲーム・コンテンツにフィードバックされるという関係性になってきているのだ。

 また、人材面においても、ゲームエンジンや3Dクリエイターが産業・都市の領域において重宝され、活躍するケースも増えてきている。

どう交わる?「デジタルツイン」「メタバース」「ゲームエンジン」

 これまでも産業領域では、3D設計データやIoTのセンシングデータに基づくデジタルツインの活用が進んできた。下図が製造業や建設業、インフラ管理、農業、スマートシティ・都市におけるデジタルツイン活用の一例だ。

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図表2:産業・都市におけるデジタルツイン活用例
(出典:拙著『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』)

 近年は、これらデジタルツインの技術進化に加え、メタバースやゲームエンジンといった技術が融合することによって、産業・都市の3D活用が加速している。デジタルツインの進化の過程としては下図の通りだ。

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図表3:デジタルツインの進化と、メタバース・ゲームエンジンとの融合の過程
(出典:筆者作成)

 デジタルツインの進化の流れと、その流れにメタバースやゲームエンジンの技術が融合していく過程としては、まず先述の通り(1)デジタルツインが登場しあらゆる産業での活用が進みつつある。こうした中で、(2)DAPSA(ダッソー・アンシス・PTC・シーメンス・オートデスクの頭文字をとった筆者による造語)と呼ばれる大手デジタルツインプレイヤーによる買収を背景に、プレイヤーの集約が進んでいった。

 こうして誕生した巨大な大手デジタルツイン企業は、製造業をはじめ、建設業、スマートシティ、モビリティなど、幅広い領域で統合的にデジタルツインサービス展開している。一方、大手総合系デジタルツイン企業との差別化を図るべく、特化型・低価型のデジタルツインサービスの展開を行う企業も出てきている。

 こうした中、現在、(3)企業があらゆる目的で活用しており個別化している複数のデジタルツインを統合的に管理・シミュレーションをしようとする動きが進んでいるとともに、3D活用が誰の手にも届くような民主化が進んでいるそして、これらを実現するミドルウェアとして「統合UI基盤」を構築しようとする動きが出てきており、その基盤構築を支える技術としてゲームエンジン、そしてより高度なシミュレーションを支える技術としてメタバースが関係してくる。

 後述する『Unity』と『Unreal Engine』といったゲームエンジンや、NVIDIAが展開している仮想空間の開発プラットフォーム「NVIDIA Ommniverse Enterprise」がそのミドルウェアにあたる。これら技術によりユーザーは、既存の3Dライブラリや複数のデジタルツイン、データをつないで統合し3D環境を構築することができるようになってきている。

 また、メタバース技術を取り入れることにより、シミュレーションは高度化しており、たとえば、シミュレーションできる対象が製品・建物・設備などだけから、人や社会活動などに範囲が拡大しているのだ。

 ここからは、主要なゲームエンジン『Unity』と『Unreal Engine』の特徴と、それぞれがどのように産業で活用されているかについて、詳しく解説していく。

『ポケモンGO!』のゲームエンジン『Unity』

 先述の通り、産業・都市・自動運転など、あらゆる領域でゲームエンジンが活用されてきており、メタ産業革命でも重要な役割を担うようになった。さらに、ゲームエンジンは、ゲームエンジン内に3D空間を生成したり、シミュレーションを実施できるライブラリが含まれているほか、個別化・細分化する各種デジタルツインやシミュレーション基盤、データモデルなどを組み合わせることで、統合デジタルツイン・メタバースを実現できる。ここからは、『Unity』と『Unreal Engine』の特徴について解説していく。

・特徴(1):複数のデジタルツイン・分析モデルを統合
 Unityは、2004年設立のゲーム開発プラットフォーム企業である。Unreal Engineとともに世界で最も採用されているゲームエンジンであり、たとえば、「ポケモンGO!」など幅広いゲームにおいて活用されているほか、自動車、建築、航空宇宙、ロボティクス、医療など幅広い産業で活用されている。

 産業・都市用途では、さまざまなデジタルツインや分析モデルが細分化しており管理が煩雑化している。これらをUnityを活用して統合し、用途や目的に応じたシミュレーションを実施できるようになることが強みだ。

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図表4:Unityの提供スキーム
(出典:拙著『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』)

・特徴(2):統合的なシミュレーションができる
 Unityの強みは、ロボットなど個別機器の制御や動作モデルなど、現実空間に即したシミュレーションを実施できることにある。摩擦や抵抗などの物理計算もシミュレーションに加味することができ、自動運転や、ロボティクスなど幅広い複雑な用途で活用が進む。

 ロボットのプログラミングについてはロボット企業や産業ごとに異なる言語や技術を習得する必要があったが、Unityでロボットをシミュレーション・ティーチングできるようにすることで、より簡易・柔軟にロボットを取り扱えるようになる。

 また、パッケージ製品として提供されるデジタルツインとは異なり、自社の用途や目的に合わせて最適に調整できることもUnityを活用することで得られるメリットだ。

 同社は、ローコードやノーコード開発を取り入れて、今後のロボット社会、自動化社会のインフラとなることを目指している。

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Unityを活用したロボットシミュレーション
(出典:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)

『フォートナイト』のゲームエンジン『Unreal Engine』

・特徴(1):本業のゲーム技術を幅広い産業に無料提供
 Unreal Engineは、1991年設立、フォートナイトなどのゲームを提供しているEpic Games社によるゲームエンジンである。

 もともとは同社のシューティングゲームの『Unreal』向けのゲームエンジンであったが、これらを標準化し、ゲーム業界はもちろんのこと、都市・産業・行政などへ提供している。後述の九州地方整備局の河川開発においてもUnreal Engineが活用されているほか、建築・都市・自動車業界・航空業界など幅広い産業での用途が広がっている。

 Unreal Engineの特徴としては、ゲーム業界での活用については売上の5%を課金するモデルとなっているが、ゲーム用途以外では無料で提供されている点だ。3D開発エンジンを広く提供することで、ゲーム外を含む幅広い業界での活用のデータやノウハウを蓄積し、本業のゲームにフィードバックさせるサイクルを作る狙いだ。

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図表5:Unreal Engineの提供スキーム
(出典:拙著『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』)

・特徴(2):開発者エコシステムを支援
 同社は他産業領域へ浸透する上で、開発者エコシステムの支援に力を入れている。たとえば1億ドル規模の開発者支援(Epic MegaGrants)を行い、開発者の育成・支援を行っている。

 また、無償のトレーニングも実施し、開発者や導入を支援する企業の裾野拡大・育成を図っている。フォートナイトなど本業での収益を、ゲームのみならず幅広い領域で活用される3DプラットフォームとしてのUnreal Engineに投入し、次世代のビジネスモデルに向けた「投資」を行っているのだ。

・特徴(3):物理モデルにもとづく詳細シミュレーション
 Unreal Engineなら、3Dの表現とともに実際の物理的なパターンに応じてシミュレーションも可能である。下の写真にあるように、自動運転のシミュレータにおいては、道のぬかるみや、雨の際の視界なども再現し、現実世界で起こりうるさまざまな状況を想定したシミュレーションが可能となっている。

 これらにおいてもUnreal Engine上で道路はじめ周辺情報を3D構成し、その上で自動車のCADデータ、走行シミュレーションなどの既存データと統合してリアル環境に近いシミュレーションを行っている。

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Unreal Engineを活用した自動運転シミュレーション
(出典:Epic Games)

 また、都市のシミュレーションにおいても人間の動作モデルをもとに、人流のシミュレーションや、それにもとづく街づくりを行える。その際、フォートナイトをはじめ、Epic Gamesがリアリティを追求したゲーム開発で培った高精度な3D技術が武器となっており、たとえば外科医の手術シミュレーションにおいてもUnreal Engineが活用されている。

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Unreal Engineを活用した人流シミュレーション・外科医の手術シミュレーション
(出典:Epic Games)

 同社は今後メタバースやデジタルツインにおける「インフラ」となるべく、本業としてのゲーム展開とともに、その技術・ノウハウを活かしたUnreal Engineの各産業への提供を加速する計画だ。

【次ページ】『Unity』『Unreal Engine』はどのようにビジネスで活用されている?事例4選をまとめて解説

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