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  • 2024/03/01 掲載

【最高益】トヨタに拡がる影…エネルギー視点から見た経営の不安要素

連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」

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トヨタ自動車の業績が素晴らしい。2023年の単体での販売台数が過去最高の1000万台を越え、4年連続で世界の新車販売の首位となった。2024年の3月期の連結決算見通しは2回上方修正している。車両の値上げで1兆円の効果を得て、ついに日本企業初の時価総額50兆円に達した。絶好調の同社だが、不安要素はないのだろうか。今回は、脱炭素やエネルギーに着目し、派手な業績を透かして、見え始めている同社の影を2つの視点からまとめる。

執筆:日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村 和也

執筆:日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村 和也

早稲田大学政治経済学部卒。ドイツ留学などを経て、日本における再生可能エネルギーの拡大、地域脱炭素の実現などに関する執筆、セミナー、また企業や自治体へのコンサルティングを行う。最近は、脱炭素先行地域選定のアドバイスや、地域経済循環や地域活性化との連動を主たるテーマとする。埼玉大学工学部非常勤講師。

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トヨタグループであるダイハツ、豊田織機による不正問題も明るみに出た。背景に、トヨタの売り物である“効率性”の過剰な追及があるとも言われる
(Photo/Shutterstock.com)

派手な業績に隠れた実態、海外市場におけるシェアの落ち込み

1ページ目を1分でまとめた動画
 1つ目の視点は、トヨタの実業そのものである。ここではタイの自動車マーケットを取り上げる。

 私は自動車産業の専門家ではなく、タイの市場がどうなっているかについて、今回ほぼ初めて細かく調べてみた。そこには、日本系のブランドがおよそ85%を占める(2022年)絶対的な支配があった。ところがそこに異変が起き始めている。

 下のグラフは、昨年12月のタイにおける乗用車の新車販売をメーカー/ブランド別に示している。左が2023年で右の2022年と比較されている。

 日本のブランドが上位を占めているのだが、前年同月比の数字はほぼどれもマイナスとなっている。

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タイにおける2023年12月の小売販売のメーカーランキングとシェア
(出典:マークラインズ)

 トップのトヨタ(赤枠)を見てみよう。もちろん1位は変わらないが、台数でおよそ1700台、前年同月比18.8%の減少であった。さらに、1/3を軽く超えていたシェアが9ポイント近く落ち込んでいることも分かる。

タイの市場で何が? BEVの急拡大とBYDの躍進

 タイの市場で何が起きているのだろうか。それは、読者のみなさんの想像に難くないように、BEV(バッテリーEV)の急拡大とメーカーとしての中国の躍進である。2022年のゼロから13%近いシェアで一気に3位に登場したBYD(青枠)はその象徴である。

 下のグラフは、タイでのBEVの新規登録台数とタイ市場でのBEVの割合の変化を示している。統計の関係で1月から9月のデータで比較しているが、2022年に1万台に満たなかった新規登録数(青の棒グラフ)が2023年には一気に5万台を超えている。シェア(オレンジの折れ線)も1%未満から8.6%へと爆発的に増えた。

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タイのBEV新規登録台数と国内自動車市場に占めるBEVの割合
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)(データ:タイ工業連盟、陸運局など))

 ちなみに、日本では2022年のBEV新車登録比率が1%台、2023年が2%台とされている。タイは、あっという間に日本の実績を抜いてしまったのである。

 では、どのブランドのBEVが売れているのであろうか。トップ10モデルの表を下に示した。

画像
タイにおけるBEV上位10モデル(2023年1~9月の新規登録台数)
(出典:ジェトロ)

 メーカーの国名を載せようかと思ったが、簡単すぎるのでやめることにした。米国のテスラ、スウェーデンのボルボ以外は、すべて中国のメーカーである。

 比亜迪(BYD)、哪吒汽車(NETA)、長城汽車(GWM)、上海汽車グループ(MG)と並び、中国系のトータルシェアは圧倒的で85%を越える。この数字は、タイの市場全体に対する日本のシェア(2022年)とほぼ同じで、これを牙城と呼ぶならば、タイのBEV市場は、“中国の牙城”である。

 BEVの拡大をきっかけに日本が支配していた市場のシェアが大きく揺らいでいるのは、タイだけではない。インドネシア国内でもEVの売り上げが2021年から2022年にかけておよそ15倍にも跳ね上がった。そして、そのほとんどが中国と韓国ブランドである。9割の市場を日本のメーカーが支配してきたインドネシアでも、タイ同様の変動が起きている。

 これらアジアの一角で起きていることが、数字としては現在絶好調を示すトヨタの将来に影を差す火種になる可能性が十分にある。 【次ページ】乗り遅れ…トヨタの安泰を揺るがすBEV開発の遅れ

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