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  • 2023/07/25 掲載

ドイツの「脱原発」は失敗か?完了3カ月後に起こった2つの“異変”とは

連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」

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4月中旬、ドイツは国内すべての原子力発電所の停止することで、「脱原発」を果たした。20年以上前にドイツは脱原発を決定したが、かつてと違って国民のムードは歓迎一色とはいかない。それでもなぜドイツは脱原発を決行したのだろうか。また、脱原発3カ月後に起きた2つの異変とは。
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ドイツ原発の最後の日、2023年4月15日
(出典:Parents 4 future)

1960年代末から始まったドイツの原発の廃止運動

 ロシアのウクライナ侵略による電気代高騰の余波で4カ月半ずれたとはいえ、4月15日の24時ちょうど、原発の電気は送電線へと流れなくなった。

 写真にある原発へ照射されたメッセージは、「原発?二度といらない!」の意味だが、これは、原発“最後の日”用である。これまでは、「ATOMKRAFT? NEIN, DANKE!(原発?いりません!)」が使われ、ドイツ国民なら誰もが知っているフレーズであった。

 1960年代末から始まった原発建設への反対は、市民運動としてしっかり根を下ろしてきた。その後、1979年のアメリカ・スリーマイル島や1986年のチェルノブイリ(旧来の呼び方)事故を見ながら、核廃棄物の最終処分場の選定や国内での移送を巡る激しい抵抗運動が行われてきた。ドイツの脱原発は、昨日今日の思い付きではなく、筋金入りといってよい。

 筆者は、20世紀の最後の2年間をドイツのミュンヘン近郊などで過ごしたが、チェルノブイリ事故時の恐怖を語るドイツ市民の声は、特に迫ってくるものがあった。そして、2011年の福島事故が最後の背中を押した。

 それまで、お得意の優柔不断から原発延命も考えていたメルケル政権が、原発運転の期限をはっきり2022年末に設定したのである。

 勘違いしてはいけないのは、最後の段階でドイツ世論の過半数が支持していたのは、あくまでの期限付きの運転延長であって、脱原発の撤回ではない。与党に限らず、既存の政党は原発を止めることでは一致している。

感情だけではない、ドイツの脱原発の実行の4つの根拠

 一部の日本での報道に、脱原発断行の理由に、欧州の盟主としてのドイツのプライドなどを挙げるものも見られる。その側面は否定されないとはいえ、ドイツらしい計算がしっかりのぞいている。一言でいうと、原発はコストが合わないのだ。

 ドイツ政府は、昨年の脱原発の先送りや再延長の検討の際にいわゆるストレステストを行った。原発延長にかかる費用、たとえば、燃料の再調達コスト、原発運営会社の追加運転費用などから始まり、新たに増える放射性廃棄物の処分費や政策変更による訴訟リスクまでも含まれている。

 これらのデメリットを、運転の延長によるメリット(化石燃料による発電の炊き増し費用の回避など)と比べた計算の末、一定の結論を導いたのである。

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フランスの原発発電量、毎年第1四半期(1番右が2023年)
(出典:フラウンホーファーISE)

 ドイツ政府の公式見解として、脱原発の正当性を、(1) 原発は事故のリスクを伴っていること、(2)放射性廃棄物の最終処分場が決まらない問題、(3)フランス原発の長期運転を要因とする補修や改修の頻発による発電量の低下(上記グラフ参照)、(4)世界の原発の新規建設が高コストであること等、実際のデータに基づいて説明している。

 ストレステストの結果も含め、“ドイツらしい計算”が脱原発の決断につながっていると考えてよい。 【次ページ】ドイツの脱原発後に起きた2つの異変

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