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  • 2024/02/21 掲載

ネガティブエミッションとは何か?川崎重工ら開発進める最新技術の全貌

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脱炭素の分野で、大気中の二酸化炭素(CO2)を直接除去する「ネガティブエミッション」に注目が集まっている。CO2の排出量をただ減らす(ゼロに近づける)だけでなく、ゼロ以下のマイナスにすることでカーボンニュートラルを確実に実現しようと、政府は官民の投資資金を呼び集めて関連技術の開発を促す考えだ。目に見えない空気中のCO2を一体どのような方法で除去するのか。川崎重工での開発事例や課題について解説する。

執筆:三上 剛輝、編集:川辺 和将

執筆:三上 剛輝、編集:川辺 和将

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政府は炭素回収技術の開発に力を入れる
(Photo/Shutterstock.com)

注目集まる「ネガティブエミッション」とは

1ページ目を1分でまとめた動画
 「ネガティブエミッション」とは、大気に含まれるCO2(広義ではCO2以外の各種温室効果ガスを含む)を、テクノロジーや光合成をおこなう植物の力を駆使して除去し、地下などに貯留することだ。カーボンニュートラル(排出量の差し引きゼロ化)を実現する手段として注目されている。

 現状ではネガティブエミッションよりも、工場などで排出されている温室効果ガスを減らす「排出量削減」のほうが、カーボンニュートラル達成のための手段としては一般的だ。

 とはいえ、大型トラックや航空機、船舶など大型輸送機のように、排出量のゼロ化が難しい分野もある。やむを得ず排出した分については、大気中に浮かぶ同じ量のCO2を除去することで、差し引きゼロを目指すのが有効というわけだ。

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国は排出量削減とネガティブエミッションの両輪でゼロ化を目指す
(出典:経済産業省公表資料)

 政府の試算では、2050年のカーボンニュートラル目標を達成するためには、産業や運輸の部門を中心として想定される年間約0.5億~2.4億トン/年の排出を相殺するためには、年間数億トン規模のCO2除去が必要になる。

自然プロセスと工学的プロセスの2つの方法

 大気中の温室効果ガスを除去する技術を「ネガティブエミッション技術(NETs、Negative Emission Technologies)」と呼ぶ。

 NETsには2つの種類がある。自然プロセスを人為的に加速させる手法と、工学的プロセスだ。

 自然プロセスの人為的加速にあたる手法として、最もイメージしやすいのは、CO2を吸収する木を増やす植林だ。ほかにも、岩石を粉砕・散布して人工的に風化を促進し、その過程でCO2を吸収する「風化促進」、海水にアルカリ性の物質を添加し、海洋の自然な炭素吸収を促進する「海洋アルカリ化」などが挙げられる。

 一方、工学的プロセスとしては、バイオマスエネルギーの燃焼により発生したCO2を捕集・貯留する「BECCS」(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)、大気中のCO2を直接回収し貯留する「DACCS」(Direct Air Capture with Carbon Storage)などが挙げられる。これらは比較的、除去効果の検証がしやすく、NETsの中でも拡大が期待されている分野といえる。

 国際エネルギー機関(IEA)の推計では、2050年の世界全体におけるCO2削減量約50Gtのうち、DACCSとBECCSで約2Gtの削減寄与が想定されている。

 自然プロセスの人為的加速と工学プロセスを組み合わせた手法もある。海洋への養分散布などで生物学的生産を促してCO2吸収を加速させ、最終的に大気中からのCO2の吸収量増加を見込む「海洋肥沃(ひよく)」、海洋中で植物残りかすに含まれる炭素を隔離し、自然分解によるCO2発生を防ぐ「植物残渣海洋隔離」などだ。

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ネガティブエミッションにはさまざまな手法がある
(出典:経産省審議会のNEDO提出資料)

 このようにNETsにはさまざまな手法があるが、その技術レベル、普及度合いはまちまちだ。また、資源採取から製品製造や加工、流通、廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合し、客観的に評価するライフサイクルアセスメント(LCA)やコスト評価についても評価手法が確立されていないのが現状で、技術面と制度面の双方に成熟の余地がある。

 米国では、2021年11月に成立した超党派インフラ投資雇用法(BIL)に基づいて、エネルギー省などが関連技術の支援を進めている。また、2022年8月に成立したインフレ抑制法(IRA)によって税額控除の枠も設け、制度面から技術開発の促進を後押ししている。 【次ページ】川崎重工も技術開発に注力

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