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- 2024/04/17 掲載
荷主企業は結局どんな「物流改革」が必要か? 商品を運べない「最悪の結末」の回避法
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
いよいよ「物流の2024年問題」が到来
残業時間の上限規制が働き方改革(労働基準法の改正)により、月45時間、年360時間以内と定められました(労使合意の下、臨時的な特別事情を考慮可能)。トラックドライバーについては上限が年960時間の制限となり、また5年間の猶予期間が設けられましたが、その猶予期限である2024年4月をいよいよ迎えてしまいました。トラックドライバーはこれまでのような長時間労働が難しくなり、今までどおりモノを運ぶことが困難になるという最悪な結末をたどることになります。しかし有識者の間では、日本における物流の継続性は、2024年問題が指摘される以前から危ぶまれていました。トラックドライバーの労働時間は他の職種と比較して2割長く、一方で賃金は1~2割低いというデータが知られています(図)。
また長時間の運転だけでなく、ドライバーの本来の業務ではない物流拠点での荷役作業も請け負っている場合があり、肉体的に大きな負荷のかかる仕事です。
この結果、トラックドライバー志望者は少なくなり、高齢化も相まって、中長期的にはドライバー数が不足することが想定されていたのです。現状、国内における主要な輸送手段はトラックです。重量ベースでは9割以上、距離を掛け合わせても過半数がトラック輸送となっています。国土が比較的狭い日本においては、ドアツードアで届けられるトラックの利便性から、このような大きな構成比になっており、ドライバー不足は重大な課題なのです。
荷主企業が確認すべき「主な3点」
こうした日本の物流クライシスを受け、政府が2023年6月に「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を発表しました。トラックドライバーの賃金や荷役作業などに関わる問題は、物流企業だけで解決できるものではありません。製造業や小売業といった荷主企業の積極的な関与が必須であり、ガイドラインはそうした企業に向けても提示されたものです。つまり荷主企業も物流現場の実態を把握する必要があります。具体的には、以下のような点などが挙げられます。
- 契約に書かれていない荷役作業を誰が、どれくらいの時間をかけて行っているか
- 荷受け、荷下ろしの待ち時間はどれくらいなのか
- 実際の輸配送は何次の下請けが担っているのか
こうした状況を正しく把握しなければ、業務の改善や適正な運賃に関する契約は進められません。ですが、実態を把握し、物流クライシスに対応していくためには、荷主企業がまず初めにすべきことがあります。 【次ページ】まずやるべき物流改革「はじめの一歩」
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