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  • 2024/09/25 掲載

iPhone16で方針転換、アップルが生産拠点を「インド→中国回帰」させた根深すぎる理由

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9月10日にアップルが発表した「iPhone 16」シリーズ。今回から搭載したAI機能が目玉であるが、実は生産拠点もこれまでと異なる。アップルは近年、さまざまな理由から「脱中国」とともに「インド進出」を図ってきた。だが、今回の16シリーズでは生産拠点の「中国回帰」をしている。その背景には、iPhone 15での「悪夢」と言える失敗があった。なぜ、アップルはここにきて「脱中国」を後退させたのか、新しく描く生産網とその課題とは何か。
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アップルの生産拠点事情に今何が起きているのか……
(写真:ロイター/アフロ)

なぜ、iPhone 15は中国で「ボロ負け」したのか

 iPhone 16が発売されて5日、実は今、一番注目を集めているのが中国での売れ行きだ。なぜなら、2023年のiPhone 15は販売が振るわず、2024年5月には2,000元(約4万円)前後の値下げをするところまで追い込まれたからだ。値下げ後もシェアを落とし、今回の16で以前のシェアを回復できるかどうかが注目されている。

 アップルは新製品が発売になる第4四半期(Q4)にシェアが伸びる傾向があるが、その次の四半期である2024年Q1にはシェアが15.7%にまで落ち込み、前年比19.1%減、さらにはファーウェイに逆転を許すという悪夢のような事態になった。

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中国市場でのアップルとファーウェイの出荷シェアの推移。2024年Q1は、前年よりも落ち方が早く、ファーウェイの逆転を許してしまった
(出典:「China Smartphone Shipments Market Data」(Counterpoint))

 iPhone 15不振の要因の1つとなったのが、インド製iPhoneの流通だった。鴻海(フォックスコン)のインド工場で生産されたiPhone 15は、インド国内だけでなく欧州と中国にも出荷されたが、このインド製iPhoneの返品が相次ぎ、iPhoneはシェアを大きく落とすことになった。

 中国は中古スマホ市場に厚みがあるため、良質の中古スマホを格安で手に入れることができる。マイナーチェンジとも言われるほど機能向上が少なかったiPhone 15を返品した人の多くが、中古のiPhone 14に流れたと言われている。中古iPhoneがいくら売れてもアップルの業績にはならない。つまり、アップルはアップル自身に負けてしまったのだ。

 この問題を受けて、ティム・クックCEOは中国に飛び、直接サプライチェーンの再編成に乗り出した。そして、インドでの生産機能のかなりの部分を中国の河南省鄭州市と深圳市に戻すことになった。この決断で、アップルが進めている脱中国化は数歩後退することになる。一体、インドで何があったのだろうか。

そもそもアップルが「脱中国」「インド進出」を急いだ理由

 そもそもアップルはなぜ、脱中国化を図らなければならないのだろうか。

 よく言われる「安い人件費を求めて」は、今では重要ではなくなっている。生産工場も自動化が進み、以前ほど大量の工員を必要としない。むしろ、それを管理したり、手作業でなければできない部分を担当する熟練工が世界的に不足している。ところが、この熟練工は年単位の育成が必要になる。安い人件費を求めて途上国に移転しても、熟練工育成コストはかえって高くなり、コスト削減効果は薄くなってしまう。

 アップルには、脱中国化を図ってインドに生産拠点を移さなければならない理由が、少なくとも3つあった。

1)インドがアップルにとっての成長市場になる
 アップルの売上高の国別シェアを見ると、北南米、欧州の2つは安定している。しかし、中国のシェアが下がる可能性が生まれ、日本も年々縮小してきている。

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アップルの地域別売上高構成比の推移。北南米と欧州は安定しているが、2024年の中国市場は危機を迎え、日本市場はじわじわと縮小している
(出典:アップル有価証券報告書)
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次ページではサプライヤー一覧を基にアップルの新しい生産網をひも解きます

 今後、アップルが成長するにはインドを含むアジア市場を伸ばしていく必要がある。

 インドは14億人の人口があり、経済成長が始まっている。今後もアップル製品を買う人の割合は増えていくことが予想され、アップルとしては力を入れざるを得ない。2023年4月には、ムンバイとニューデリーにアップルストアもオープンしている。 【次ページ】一致したインド政府とアップルの思惑

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