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  • 2023/09/04 掲載

なぜ日立製作所は絶好調? 約7,800億の赤字からの「地道な復活劇」がスゴすぎる理由

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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日立製作所はリーマンショック後の2009年、約7,800億円もの最終赤字に陥った。そんな苦い体験をした企業は、いかにしてどん底から這い上がり、再び黒字化に成功したのか。足元でも、3期連続で最高益を更新する強さの根源はどこにあるのか。同社デジタルシステム&サービス統括本部 E2E改革本部 本部長の片山薫氏に、日本最大手のモノづくり企業が取り組んだ“地道な経営改革”について聞いた。

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:吉成大輔

聞き手:中澤智弥、執筆:井上猛雄、写真:吉成大輔

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日立製作所
デジタルシステム&サービス統括本部 E2E改革本部 本部長
片山 薫 氏
1987年、日立製作所入社。その後、日立神奈川マニュファクチャリングサービスへの出向(2001~2008年)、日立コンピュータテクノロジー&マニュファクチャリングへの出向(2009~2011年)を経て、2012年から現職。

製造業の経営者に降りかかる課題

 ここ数年、新型コロナウイルスの蔓延による社会の変容、国家間の紛争による地政学的なリスクなど、予測のできなかった事態がビジネスに影響を与えるようになりました。複雑な時代で経営判断は難しくなるばかりですが、判断はスピーディに行わなければ取り残されてしまいます。

 また中長期的に見れば、今後、先進国の人口減少により、主要なマーケットは消費の多い国に移っていきます。そうしたときに、新たな市場の消費者のニーズをくみ取り、しっかりシェアを獲得していけるかどうかが大きなポイントになります。さらに製品を供給するにあたっても、欧州を中心に広がる環境規制などをクリアしなければ、その国で販売すらできませんから、同時に各国の規制には十分に目を配る必要があるのです。

 そのうえで、多様な消費者ニーズを踏まえた製品開発、そして安定的な製品供給を維持するための迅速な経営判断が求められますが、それらを同時に実現するには、財務データだけでなく、サプライチェーン上のデータや、開発工程におけるデータの分析・活用は不可欠になるでしょう。

 そのほか、日本の製造業が直面する深刻な課題として、あらゆるところで指摘されているのが、熟練技術者の技術の伝承の問題です。これまで日本の製造業の成長を支えてきた熟練技術者の技術やノウハウは、あまり形式知化・標準化されてきていません。これら日本の製造業の競争力のコアとなる部分を次の世代に残していけなれば、競争力を落としてしまう可能性もあるでしょう。

企業の生存確率を決める「体質」

 ここまで現代における経営課題をいくつか挙げましたが、これら多岐にわたる課題を同時に乗り越えられるかどうかは、“経営”にかかっていると言えるかもしれません。今後、経営スピードを速め、柔軟に変化していける体質に変わらなければなりません。

 しかし、対応が遅れてしまえば、あっという間に経営状況は悪化し、後戻りできないほど赤字を抱えることになってしまいます。それはグローバル企業など規模の大きい企業であればなおさらでしょう。

 日立製作所もリーマンショック後の2009年3月期に、国内製造業で最大となる7,873億円もの最終赤字を出しました。しかし、そこから抜本的な構造改革を断行し、その後も絶え間ないモノづくり改革を進めながら、業績を戻していった経験があります。

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日立製作所の純損益の推移(2005年~2020年)
(出典:日立製作所)

 リーマンショック後の2008年から2010年の時期に行った改革の第1ステージでは、リカバリーのための地固めを行いました。2011年から2015年の第2ステージでは、成長の基盤づくりに注力しました。大赤字から業績を回復するには、とにかく利益とキャッシュを生み出す必要があったのです。2015年からは第3ステージとして、成長を加速させるための取り組みを進めました。

 ここからは、これら3つのステージを通じた改革の全貌を紹介します。具体的には、成長投資のために必要な資金をどう確保したのか、そのために実践したコスト構造改革、成長事業の創出について解説していきます。 【次ページ】最大7,800億円の赤字、日立はどう這い上がったか?

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