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- 2023/09/04 掲載
なぜ日立製作所は絶好調? 約7,800億の赤字からの「地道な復活劇」がスゴすぎる理由
Seizo Trend創刊記念インタビュー
製造業の経営者に降りかかる課題
ここ数年、新型コロナウイルスの蔓延による社会の変容、国家間の紛争による地政学的なリスクなど、予測のできなかった事態がビジネスに影響を与えるようになりました。複雑な時代で経営判断は難しくなるばかりですが、判断はスピーディに行わなければ取り残されてしまいます。そのうえで、多様な消費者ニーズを踏まえた製品開発、そして安定的な製品供給を維持するための迅速な経営判断が求められますが、それらを同時に実現するには、財務データだけでなく、サプライチェーン上のデータや、開発工程におけるデータの分析・活用は不可欠になるでしょう。
そのほか、日本の製造業が直面する深刻な課題として、あらゆるところで指摘されているのが、熟練技術者の技術の伝承の問題です。これまで日本の製造業の成長を支えてきた熟練技術者の技術やノウハウは、あまり形式知化・標準化されてきていません。これら日本の製造業の競争力のコアとなる部分を次の世代に残していけなれば、競争力を落としてしまう可能性もあるでしょう。
企業の生存確率を決める「体質」
ここまで現代における経営課題をいくつか挙げましたが、これら多岐にわたる課題を同時に乗り越えられるかどうかは、“経営”にかかっていると言えるかもしれません。今後、経営スピードを速め、柔軟に変化していける体質に変わらなければなりません。しかし、対応が遅れてしまえば、あっという間に経営状況は悪化し、後戻りできないほど赤字を抱えることになってしまいます。それはグローバル企業など規模の大きい企業であればなおさらでしょう。
日立製作所もリーマンショック後の2009年3月期に、国内製造業で最大となる7,873億円もの最終赤字を出しました。しかし、そこから抜本的な構造改革を断行し、その後も絶え間ないモノづくり改革を進めながら、業績を戻していった経験があります。
リーマンショック後の2008年から2010年の時期に行った改革の第1ステージでは、リカバリーのための地固めを行いました。2011年から2015年の第2ステージでは、成長の基盤づくりに注力しました。大赤字から業績を回復するには、とにかく利益とキャッシュを生み出す必要があったのです。2015年からは第3ステージとして、成長を加速させるための取り組みを進めました。
ここからは、これら3つのステージを通じた改革の全貌を紹介します。具体的には、成長投資のために必要な資金をどう確保したのか、そのために実践したコスト構造改革、成長事業の創出について解説していきます。 【次ページ】最大7,800億円の赤字、日立はどう這い上がったか?
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