- 2026/02/06 掲載
ソニーや東エレより強すぎる…時価総額10兆円「キオクシア」が投資家を熱狂させるワケ(2/2)
東エレ・ルネサス・ローム・ソニーと徹底比較
ここで日本の半導体関連の主力4社とキオクシアを比較してみよう。それにより強みと弱みが浮き彫りになってくる。■東京エレクトロン
東京エレクトロンは半導体製造装置の最大手の一角で、顧客の設備投資が伸びる局面で利益が膨らむ。メモリーは波が大きいが、装置はロジック、ファウンドリー、メモリーなど複数領域に分散できる。キオクシアがサイクルの当事者であるのに対し、東京エレクトロンはサイクルの“上流で商機を拾う”側だ。ここが評価の安定度の差になる。
■ルネサス
ルネサスはマイコンやSoCなど、長期供給と品質が重視される分野が軸だ。製品ライフが長く、顧客の切り替えコストも高い。需給の波はあっても、メモリーほど「価格が一斉に崩れる」構造ではない。キオクシアが“市況”で揺れるのに対し、ルネサスは“採用設計”で積み上がる。投資家が見るリスクの種類が異なる。
■ローム
ロームはSiCなど次世代材料も含め、電力制御の要となるデバイスを手掛ける。EVや産業機器、再エネ関連で需要が伸びる局面はあるが、メモリーほど急激な供給過剰になりにくい。一方で、材料・プロセス開発に時間がかかり、量産立ち上げの難度は高い。キオクシアは巨額投資で一気に容量を増やすが、ロームは信頼性と歩留まりでじわじわ勝つ。勝ち筋が対照的だ。
■ソニー
ソニーは半導体でイメージセンサーを強みとし、スマホや車載など用途の進化とセットで価値を上げてきた。加えて、ゲーム、音楽、映画など多角化が評価を下支えする。キオクシアは“単一事業の集中”が強さにも弱さにもなる。AI需要が長期化すればレバレッジが効くが、需給が逆回転すると逃げ場が少ない。
キオクシアの評価「維持する3条件」「落ちる3条件」
キオクシアのNANDは国際市況の影響が大きく、短期では販売価格よりも需給が先に立つ。対してルネサスやロームは、設計採用後の供給契約や品質保証が価格の下支えになりやすい。またソニーのイメージセンサーは、画質や機能差が付加価値に直結し、価格競争になりにくい。東京エレクトロンは装置の性能・歩留まりへの寄与が評価の中心で、顧客が次世代プロセスへ移行するタイミングが受注の波になる。
つまり、同じ「半導体」でもどこに技術差が現れ、どこで利益が確定するかが異なるのだ。
メモリー企業が高評価を維持するには、以下の3点が欠かせない。
(2)価格下落局面で赤字を深掘りしないこと
(3)在庫と設備稼働を制御できること
ここが揺らぐと、評価はサイクル以上の速度で縮む。逆に言えば、キオクシアが10兆円に届いた意味は、単発の好況ではなく“経営の制御”にプレミアムが付いた可能性にある。
キオクシアの評価が崩れる条件としては、「需給」「投資」「地政学」の3つにあると考える。
第2:投資が過不足すると次の世代でコスト競争力を失う
第3:サプライチェーンと輸出管理の制約が強まれば、設備・材料の調達や販売先の制限が利益に直撃する
市場が10兆円の企業に求めるのは、好況期の利益だけではなく、谷での耐久力と意思決定の透明性だ。
装置(東京エレクトロン)、車載・産業(ルネサス)、用途特化(ソニー)、アナログ・パワー(ローム)と、日本企業はそれぞれ違う勝ち筋を持つ。キオクシアの10兆円は、その中で「メモリー」という最もボラティリティが高い領域でも、グローバルで戦える規模を確立したことを示す。
国内で次に問われるのは、個社の成功を点で終わらせず、材料、装置、設計、実装の連鎖をどう太くするかだ。キオクシアの評価は、日本の半導体産業が世界の投資サイクルにどう接続できているかを映す鏡になる。
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