- 2026/05/27 掲載
従業員20人未満の「町工場」に年200人超が殺到、若者が集まりまくる“驚きの秘密”(2/2)
連載:勝てる工場のつくり方~タシロ編~
採用の潮目が一気に変わった「ある瞬間」
このような活動を続けること数年。大きな成果を得る。日本最大級の商品見本市である東京インターナショナル・ギフト・ショーの第93回春2022の「LIFE×DESIGNアワード」(ギフト・ショー)にて、キャンプ製品の「3WAYピザ窯」が国内外2000を超える応募の中からグランプリを受賞したのである。この受賞をきっかけに、採用の潮目が一気に変わる。
「ギフト・ショーでの受賞効果は採用にも大きく効果を及ぼしました。私が入社した2019年は応募者が数名で、2022年のギフト・ショー前後では20~30名から、一気に120名にまで増えました。中にはタシロだったら自分のアイデアを商品化できると思った。このような理由で応募してくる、プロダクトデザインなどを学ぶ大学生も現れるようになりました」
そのような学生に対し田城氏は、正式にタシロに入社する前から、内定者をアルバイトとして働いてもらい、自らが企画・デザインした案の商品化を進める。そうして製品化されたのが、おしゃれな蚊取り線香「BONSEKI―盆石―」だ。
「タシロには若い作り手が挑戦できる土台があると思いますし、ここで働いていれば、自分のデザインやアイデアの幅が広がる」。同製品を開発したメンバーはこのように語ったという。
売上約2億円から10億円へ…「10年後のビジョン」とは
2023年、代表取締役に就任した田城氏は、名刺、ロゴ、ユニフォーム、Webサイトなどを刷新するなどして、これまでの取り組みを推進、加速していく。このような取り組みでも、田城氏は従業員も巻き込むことでやる気を感化するように意識しているという。たとえば、名刺のデザインは入社2年目の若手(現在は入社3年目)が担当している。一方で、ロゴの刷新では神奈川産業技術総合研究所のプロジェクト「次世代事業創出デザイン支援事業」を活用し、外部のデザイナーの力を借りることもあった。新たに開発中のカプセルトイマシーンも同様で、「ここまでの設計スキルは当社にはありませんから」と、他者の力を借りるメリットを口にした。なおこの辺りの取り組みついては後編の「共創」のくだりで、改めて深掘りする。
「町工場のイメージをカッコよく!」というビジョンならびに、「日本一挑戦するベンチャー型町工場」とのミッションも策定。カッコいい町工場の実現に向けては、10年後に新社屋を建てることも掲げている
また、そして、ここでも社員と一緒になって考えた。新社屋のアイデアはもちろん、全社員を集めて意見を出し合うワークショップを実施。また同プロジェクトでも外部の資源を活用した。自分や家族はもちろん、地域なども含めた未来を絵日記に描く、中小企業庁が後援している「中小企業ミライ絵日記」である。
「新社屋が建つ10年後には、年商は10億円(前期売上高は約2億1,000万円)、社員は50~60人規模に拡大したいですし、町工場が人気就職先になるとの未来も描いています」
この頃になると、タシロには多くのメディアから取材依頼が舞い込むまでに注目される企業になっていた。
国も大注目、採用応募は「年200人以上」に
こうした地道な努力を継続した結果、今では年間の応募者数は200名以上にまで伸びた。ものづくりに興味を持つプロダクトデザイン専攻の学生だけでなく、同業他社で働くスキルを持つキャリア人材が、タシロの働き方に魅力を感じ、転職してくるようなケースも生まれている。2月には、日本の官民が協力して米国に投資する、総額約84兆円のプロジェクトの第1弾候補に名前が挙がった。政府ならびに各種メディアが取材も含めタシロの名を取り上げたことで、知名度がさらにアップしたことは言うまでもない。
「プロジェクトの詳細や今後のことは未定ですが、発電設備やプラント設備における筐体や支持部材、船舶用熱交換器関連部材など、我々が普段から取り組んでいる対応可能な分野ですので、ご協力できるのではないかと考えています。」
そして同トピックもしっかりと自社のWebサイトにニュースとして記述。このような1つひとつの積み重ねが、採用も含めたタシロのブランディングを高めているのである。
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