- 2026/08/07 06:50 掲載
義務化から1年「建設現場の熱中症対策」“酷暑”に何を見直すべき?【社労士が解説】(2/3)
【2事例解説】義務化後に起きた建設業における熱中症事故
■ 事案(1)50歳代の男性作業員が、道路改良工事の現場で、午前中から型枠の解体などの屋外作業に従事していました。昼休憩後、現場内の片付け作業中に姿が見えなくなり、同僚が捜したところ、15時30分ごろ、冷房が効いた軽トラックの車内で倒れている状態で発見されました。病院へ救急搬送されましたが、2日後に死亡が確認されました。
当日の気温は33.2℃、WBGT値は31.5で、熱中症の危険性が極めて高い環境でした。
この事例では、作業員の体調の異変を早期に把握できず、発見が遅れたことが重篤化につながった可能性があります。高温環境下では、単独になる時間をできる限り減らし、休憩時や作業の区切りごとに所在と体調を確認するなど、異変を早期に把握できる体制を整えることが重要です。
■ 事案(2)
50歳代の男性作業員が、集合住宅の新築工事現場で、解体した壁型枠の材料を上階にいる同僚へ手渡す屋外作業に従事していました。作業中に床へ座り込んでいるところを同僚に発見されました。
男性には意識があり、水分を補給した後エアコンのある車内で休んでいました。しかし症状が改善しなかったため、同僚の車で病院へ向かいましたが、その途中で意識不明となりました。その後、救急搬送されましたが死亡が確認されました。
当日の気温は34.7℃、WBGT値は31.4で、熱中症の危険性が高い環境でした。
この事例で注意すべきなのは、「意識がある」「呼びかけに応じる」という事実だけで、救急要請が不要だとは判断できない点です。作業中に床へ座り込んでいるところを発見した時点で本人の応え方や受け答えの状態まで確認し、その反応によっては、水分補給や車内での休憩によって経過を見るのではなく、直ちに救急車を呼ぶべき状況だった可能性があります。
義務化後の事案から見る「事故が起きる共通点」と「対応策」
2つの事例は、熱中症による重篤化を防ぐためには、異変を早期に発見するだけでなく発見後の状態を適切に確認し、必要な対応へ速やかにつなげる必要があることを示しているといえるでしょう。厚生労働省が公表している災害事例では、作業中に何らかの体調不良のサインが現れていたにもかかわらず「少し休めば回復するだろう」「本人が大丈夫と言っているから問題ない」と判断し対応が遅れたケースが見られます。熱中症対策の義務化も、こうした異変の見落としや初動の遅れを防ぐことを目的の1つとしています。
日本救急医学会が公表している『熱中症診療ガイドライン2024』によると、熱中症の初期症状としては、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のけいれん(こむら返り)、頭痛、倦怠感、吐き気などが挙げられます。さらに症状が進行すると、意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍くなる、けいれんを起こす、高体温になるなど、自力での対応が困難な状態に陥ることがあります。
熱中症が疑われる場合には直ちに作業を中止し、風通しの良い日陰や冷房の効いた場所へ移動させます。その上で、衣服を緩め、首・脇の下・太ももの付け根などを冷却し、状態に応じて水分や塩分などの電解質を補給します。
ただし、自力で水分を摂取できない場合や、意識がない、受け答えがおかしいなどの異常が見られる場合は、無理に飲ませることはせず直ちに救急要請を行う必要があります。
次の図は、熱中症が疑われる場合の一般的な初動対応の流れを示したものです。事案(2)のように、呼びかけに応じている場合でも、その応え方や受け答えに異常があれば、その時点で救急要請が必要な状態と判断する必要があります。
熱中症対策の義務化によって求められているのは、単にWBGT値を測定したり、休憩所を設けたりすることだけではありません。
現場で体調不良者が発生した際に、誰が本人の状態を確認し、どの段階で救急要請を行うのかをあらかじめ定め、迷わず実行できる体制を構築することが重要です。 【次ページ】義務化2年目の今だからこそ、企業が取り組むべき「効果的アプローチ」
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