- 2026/09/09 06:50 掲載
【単独】廃業予定から「売上10倍」…名古屋の100年和菓子店を救った「バズへの備え」(3/3)
すべては「バズへの備え」、緻密すぎる「動線設計」の中身
もともと不動産業でレンタルスペース事業などを手がけ、情報発信を売上へつなげるマーケティングを実践していた古田氏は、その手法を和菓子に応用した。商品がある以上、あとは購入につながる動線を逆算して組み立てればいい──との考えの下、補助金も活用しながらECサイトを構築していった。
動線の設計は緻密だった。XやInstagramといった無料のSNSからクーポンを発行できるLINE公式アカウントへ誘導し、ECサイトへつなげる。実店舗のチラシや、駅のキオスクに置かれる商品のしおりにはQRコードを刷り込み、オンラインへの入り口を張り巡らせた。
1度購入した顧客には漫画を同梱してLINE登録を促す。こうした導線を最初から設計し「ストーリー」とともに伝えることを徹底したという。ストーリーで共感を生み、購買へつなげるのである。
この考え方はプレスリリース作成にも生かされ、PRの無料セミナーで学んだ手法を基に自力で原稿を仕上げ、地元の記者クラブや新聞社、テレビ局へと直接出向いて持ち込んだ。また、SNSの各種グルメアカウントにも資料を添えてDMを送り続けたという。
3年で売上10倍、「藤井聡太に選ばれ」アイマスとコラボも
とりわけ本店の売上が伸び、数々のコラボレーションがファンを呼び込んでいる。人気ゲーム「アイドルマスター」とのコラボの際には、店前に100人規模の行列ができたという。
「コラボ相手のファンの方が多く来ます。名古屋市中区で開催された2022年の『ヒューリック杯棋聖戦』で、藤井 聡太棋聖がおやつに鯱もなかを選んでくださった際には、『藤井さんが食べていたから、名古屋に来たら食べたかった』と、遠くから来てくださった方もいました」(古田氏)
コラボの多くは先方から直接持ちかけられるため費用がかからず、通常の販売と同じ形で取り組める。そして古田氏は、コラボ相手として選ばれる理由についてこう推察する。
「110年以上の歴史に加え、鯱もなかは名古屋を象徴する『金のしゃちほこ』をモチーフにした商品であることは大きいでしょう。名古屋らしさを押し出したブランドは、名古屋を舞台とした企画と親和性が高いです。それらにかけ合わさって、5年近く続けてきたSNS発信やメディア露出によって認知を高めてきたことが、新たなコラボを呼び込む土台になっていると思います。コラボで新たなファンが店を訪れ、さらに認知が広がる、そんな好循環が生まれているのではないでしょうか」
もっとも、最初はコラボ目当ての客と一般客が入り乱れて来店されていたため、オペレーションが追いつかない場面もあった。古田氏はこうした失敗も率直に語り、受け皿づくりの重要性を改めて強調する。
そして同氏の視線は、すでに次の展開へも向かう。
メタバースが盛り上がった時期にはマップ制作を試みたが、その熱は生成AIの台頭で鈍化したと見る。そこで自ら手を動かすのではなく、その領域を得意とする人材との協業へと舵を切った。
子ども向けのAIワークショップなどを展開する15歳の起業家、近藤 にこる氏とのパートナーシップの下、金の鯱をテーマに、3DCG制作から3Dプリンターでの造形までを体験する取り組みを、すでに実施したという。
「この分野は自分がやる必要はないな、と思ったんです。得意な人と組んでいく。そのほうがうまくいきますからね」(古田氏)
廃業寸前だった老舗を、逆算の動線設計とバズへの備えでよみがえらせた古田氏。その復活を語る上で欠かせないのが、動線の入り口を担ったSNSの運用である。後編では、5年足らずで14万件超の投稿を積み重ねてきた古田氏が実践する「企業公式X」の運用術や、バズを生み出す投稿設計、炎上時代のSNSとの向き合い方を詳しく紹介する。
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