- 2026/10/26 06:50 掲載
結局、建設業「残業45時間超」はOK?労基署の指導はどう変わった?【社労士が解説】
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル、図解即戦 建設業法の規制と対応がこれ1冊でしっかりわかる本がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
建設業の「残業45時間」は本当に緩和された?
2026年9月1日、労働基準監督署(労基署)による時間外・休日労働への監督指導の運用が見直されました。これまで行われてきた「月45時間以内」への削減を一律に求める指導が見直されたのです。工期末に業務が集中しやすい建設会社であれば、「これからは月45時間を超える残業も認められるようになったのでは?」と感じるかもしれません。しかし、この受け止め方には注意が必要です。
なぜなら、今回変わったのは労基署による「指導の仕方」であり、法律で決められた「残業時間の上限」ではないからです。
では、そもそも残業時間にはどのようなルールがあるのでしょうか。
【そもそも】残業時間のルールをおさらい
労働基準法では、労働時間は原則として「1日8時間・週40時間」までとされています。これを超えて従業員に働いてもらうには、会社と労働者側で「36(サブロク)協定」を結び、労基署に届け出る必要があります。ただし、36協定を結んでも、無制限に残業させられるわけではありません。法律上、残業時間の上限は原則として「月45時間・年360時間」と決められています。
一方、通常は予想できないほど業務量が増えるなど、臨時的な特別の事情がある場合には、「特別条項付き36協定」を結ぶことで、月45時間を超える残業も認められます。ただし、工期末に業務が集中するという理由だけで無条件に認められるわけではなく、臨時的な特別の事情により限度時間を超える必要がある場合に限られます。
さらに、特別条項があっても、残業時間は年720時間以内、休日労働を含む単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内という上限があります。月45時間を超えられるのも年6カ月までです。
建設業では、こうした上限規制の適用が長らく猶予されてきましたが、2024年4月から原則として適用されています。なお、災害時の復旧・復興事業には、一部の上限規制が適用されない特例があります。
つまり、今回の見直しによって「月45時間を超える残業が自由になった」わけではありません。では、法律が変わっていないのに、今回の「月45時間」の見直しは一体何だったのでしょうか。
実はこれまでは法律上問題のない残業であっても、労基署から「月45時間以内に減らすように」と指導されることがありました。今回は、その「指導」が変わったのです。
では、今回の見直しでその指導はどう変わったのでしょうか。そして、工期末や天候によって残業が増えやすい建設会社にとってどんなメリットがあり、何に注意する必要があるのでしょうか。詳しく解説していきます。
36協定を守っても指導?「45時間超」の判断はどう変わるのか
これまでは、特別条項付き36協定を締結し、その範囲内で適法に時間外労働を行わせている場合であっても、労基署の監督指導において、時間外・休日労働の時間数に着目し、「月45時間以内に削減するように」と指導されることがありました。つまり、法律上は一定の条件を満たせば月45時間を超える時間外労働が認められているにもかかわらず、監督指導では45時間以内への削減を求められることがあったのです。
2026年9月からは、このような「45時間」という時間数だけに着目して、一律に削減を求める指導が見直されました。
今後は、時間外・休日労働の状況に加えて、事業場の実態や、36協定で定めた健康・福祉を確保するための措置が適切に実施されているかなどを確認したうえで、必要な指導が行われることになります。
今回の変更を一言で表すなら、「45時間ルールが緩和された」のではなく、「45時間という数字だけを見て一律に削減を求める監督指導が見直された」ということです。
法律上のルールと労基署の監督指導。この2つを分けて考えることが、今回の見直しを正しく理解するポイントです。 【次ページ】建設業にとって今回の見直しは「メリット」なのか?
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