- 2026/10/26 06:50 掲載
結局、建設業「残業45時間超」はOK?労基署の指導はどう変わった?【社労士が解説】(2/2)
建設業にとって今回の見直しは「メリット」なのか?
では、今回の見直しは建設業にとってメリットといえるのでしょうか。筆者としては、適切な労務管理に取り組んでいる建設会社にとって、一定のメリットがある見直しだと考えています。建設業では、工期や工程、天候、発注者や元請けとの調整などによって、特定の時期に業務が集中することがあります。現場によって繁閑の差もあるため、年間を通して毎月同じように労働時間を管理することが難しい業界でもあります。
こうした建設業特有の事情がある中で、適切に36協定を締結し、法律上の上限を守っている会社に対してまで、「45時間を超えた」という数字だけに着目して一律に削減を求めるのではなく、それぞれの事業場の実態を踏まえて監督指導が行われるようになることには意義があります。
一方で、今回の見直しを「建設業は忙しいから、45時間を超えて残業させてもよくなった」と捉えるのは危険です。
むしろ、会社側には「なぜこの時期に時間外労働が増えたのか」「36協定の範囲内で適切に管理できているか」「長時間労働となった従業員の健康を守るために何をしているか」といった点について、これまで以上に自社の状況を把握しておくことが重要になります。
つまり、今回の見直しは、建設業に対する残業規制が緩和されたというよりも、「時間数だけを見る労務管理」から「現場の実態まで見る労務管理」へと移行するきっかけとして捉える方が良いでしょう。
今回の見直しによって、“これまで以上に重要”になる項目
今回の見直しによって、これまで以上に重要になると考えられるのが、従業員の健康を確保するための取り組みです。特別条項付き36協定では、限度時間を超えて労働させる従業員の健康・福祉を確保するための措置を定めます。たとえば、医師による面接指導や勤務間インターバル、健康診断、連続休暇の取得などが挙げられます。こうした措置を36協定に記載するだけでなく、実際に実施することが重要です。
ただし、ここでもう1つ考えておきたいことがあります。それは、従業員の心身への負担は、残業時間という数字だけで決まるものではないということです。
たとえば、時間外労働がそれほど多くなくても、上司からのパワーハラスメントがある、職場の人間関係が悪い、1人の従業員に過度な責任が集中している、困ったときに相談できる相手がいない、といった環境であれば、大きなストレスを抱える可能性があります。
だからこそ、会社としては「何時間働いたか」だけではなく、普段からストレスをためにくい職場をつくるという視点も大切です。
困ったときに相談できる、従業員同士がお互いにフォローできる、業務上の問題や改善案を言いやすい。このような職場環境をつくることは、従業員の心身の健康を守るだけでなく、働く人の意欲や仕事の効率にも良い影響を与える可能性があります。
つまり、36協定に基づく健康・福祉確保措置を適切に実施することと、従業員が過度なストレスを抱えにくい職場環境をつくること。この両方を意識することが、本当の意味での健康確保につながるのではないでしょうか。
書類作成・移動・属人化…残業の原因をどう見直す?
時間外労働を減らすために、「とにかく残業を月45時間以内にしよう」と考えるだけでは、根本的な解決にならない場合があります。たとえば、これまでと同じ業務量のまま残業時間だけを減らそうとすれば、従業員が限られた時間の中で仕事を急ぐことになったり、管理職など一部の人に負担が集中したりする可能性があります。
大切なのは、「なぜ残業が発生しているのか」という原因まで掘り下げることです。
そして、そこで重要になるのが前述した職場環境です。
従業員が安心して意見を言える職場であれば、「この作業はもっと簡単にできるのではないか」「この書類はこうした方が効率的ではないか」といった現場からの改善案も生まれやすくなります。
「残業時間をどう減らすか」だけでなく、「従業員がどうすれば健康に、効率よく働けるのか」を考える。今回の見直しを、建設会社が自社の働き方そのものを改めて考える機会にしてみてはいかがでしょうか。
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