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- 2023/03/14 掲載
失業給付金の見直しで格差が拡大?「円滑な労働移動」がもたらす残念な未来
懸念がぬぐえない? 失業給付金のあり方見直し
失業給付金の支給方法が見直される。岸田首相は、2月15日の「新しい資本主義実現会議」で本件について言及。これまで自己都合退職の失業給付金の受け取りまでには2カ月の期間制限があったが、これを見直す。転職を促し、労働移動の円滑化を目指す目的のようだ。
前提として、会社都合退職の場合、ハローワークでの手続き後7日間を経て失業給付金を受け取ることができる。「支給期間の短縮といった方向に見直されるのであれば嬉しい話だ」と、歓迎する労働者の声もある。
一方で、「規制を緩和して、労働者の解雇や賃下げをやりやすくするものだ」という見方も多くある。
中高年の転職の支援を行い、転職市場の中に身を置く著者としても、たしかに労働市場はこれまで以上に活性化するきっかけになりそうだと思う。
しかし、企業の採用意欲を高めるかは間接的で不透明であるし、転職市場の求職者の中で採用される人の裾野が今以上に広がるのか、採用時の条件が上がるのかと言うと、そこには直結しないし、解雇や賃下げの懸念も拭えない。
政府が検討する失業給付金の見直しを含めた「労働移動の円滑化」が転職市場に与える影響と行方を解説する。
焦点となる岸田首相「三位一体」の労働市場改革
失業給付金の見直しの検討状況だが、一切未定の状態である。何かしらが決まるとすれば、6月末に策定される指針に盛り込まれることになる。会社都合退職と自己都合退職で失業給付金の支払い方に差がなくなるかもしれないし、現在よりも期間制限が緩和されるだけかもしれない。
しかし、見直す方針が決まったとしても、そこから法改正までにはさらに長い期間がかかるだろうし、法改正時点で内容が変化することもある。
また、岸田首相が見直しを目指すものには、リスキリングも挙がっている。現在主流の企業を経由したリスキリングではなく、受講者個人への支援を主流にすると言う。
リスキリングについては首相就任直後から繰り返し発言がある。
具体的には、1月23日の通常国会の施政方針演説で、「リスキリングによる能力向上支援」、「日本型の職務給の確立」、「成長分への円滑な労働移動」これらが「三位一体の労働市場改革」と称された。
「三位一体」とは、これらはそれぞれ単独で検討されるのではなく、すべてセットで検討され、制度化を目指すということだ。つまり、単独ではなく総合的に考えなければ、新たな制度が誕生した時に面食らうことになりかねない。 【次ページ】「円滑な労働移動」はどのような未来をもたらす?
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