• 会員限定
  • 2024/05/23 掲載

円安・インフレでも日銀が「今」政策変更しない謎、驚きの言及の数々

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
5月10日に発表された金融政策決定会合における「主な意見」(4月25~26日開催分)は、かなりタカ派(金融引き締め支持)であった。4月26日の金融政策決定会合後の総裁会見がハト派(金融緩和支持)と受け止められ、円安が進行した経緯があるだけに、そこでの情報発信に修正を加えたかった意図も透けて見える。ただ、そうした事情を割り引いたとしても、日銀が市場関係者の平均的な想定を上回る速度で政策変更を議論している可能性が高い。その可能性を点検するために「主な意見」で注目すべき発言について、藤代氏が見解を示した。
photo
4月会合では追加利上げを見送った日銀
(写真:つのだよしお/アフロ)

個人消費は本当に勢いを取り戻す?

 まずは個人消費についての言及を見てみよう。

 個人消費は物価上昇を受けて弱めであるが、足元の賃上げモメンタムの強さを踏まえると、先行き勢いを取り戻していくものと見ている。

 日銀が金融引き締めを躊躇(ためら)っている要因の1つに個人消費の停滞がある。日銀が算出する実質消費活動指数に目を向けると、1年近くも横ばいないしは微減となっており、お世辞にも消費が強いとは言えない。

 そうした中で、個人消費の先行きに明るい意見をあえて掲載したのは、夏場にかけて実質賃金がプラス転換すると見込まれる中、先行きは持ち直しに向かうという自信を示すことで、政策変更の地ならしをする意図があったのではないか。

 なお、物価が中央銀行の目標を上回って推移しているのは日本も米国も同様であるが、米国は個人消費の強さがインフレの根底にあるのに対して、日本はそうではない。景気の強さに悩む米連邦準備理事会(FRB)に対して、景気の弱さに悩む日銀といったところだろう。

高まる24年度後半以降の物価上昇圧力

 続いて、円安と原油高についての言及を見てみよう。 

 円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要である。

 足元の円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある状況を鑑みると、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある。

 輸入物価上昇を起点としたコストプッシュや予想物価上昇率の上昇に伴うインフレ率上振れのリスクもあるため、今後、2022年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じるか、予断なく見極める必要がある。

 日銀が「第1の力」と表現する、輸入物価由来の物価上昇圧力が再度高まりつつある中、2024年度後半以降の物価見通しが上振れリスクに晒(さら)されていることを懸念していると見られる。

画像
メディアを中心に「強すぎる第1の力(輸入物価上昇などコスト要因による物価高)」に対する批判は以前から強かったが、今や政策委員の間でもそれが中心的な議題になりつつあるということだろうか
(Photo/Shutterstock.com)

 なお、話は逸(そ)れるが、政府がデフレ脱却宣言を見送っているのは、物価高に不満を持つ国民感情を逆なでしてしまうことを恐れているからではないだろうか。物価上昇率に加え、春闘賃上げ率が大幅に高まるなど、政府にとって積年の課題であったデフレ脱却を実現したというのに、その成果を誇示しない(できない)のは何とも皮肉な現状だ。 【次ページ】日銀がそれでも利上げをしない理由

関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます