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- 2024/04/17 掲載
なぜ利上げしない?34年ぶり歴史的「円安」に立ち向かう、日銀の“ジレンマ”
約34年ぶりの歴史的円安、利上げにつながるか?
約34年ぶりの歴史的円安是正のため、日銀に利上げを迫る向きは多い。そこには緩和的な金融政策を止めれば、為替が円高方向にシフトするとの前提があるのだろう。たしかに、これまでの金融緩和が円安を招いたことに疑いの余地はない。では、日銀が金融引き締めに転じれば、本当に円高方向に振れるのだろうか。筆者は、それほど話は単純ではないと思う。また筆者が想像するに、日銀も(自身の)金融政策によって為替を円高方向に動かせるとは考えていないだろう。円安は、日銀に利上げを促す一因になったとしても、日銀が円安抑制を主目的に利上げに動くとは考えにくい。
仮に連続利上げでも利上げ幅は1%が限度であるワケ
仮に日銀が連続利上げに動く場合、日本経済に非連続的な悪影響を与えない範囲で可能な利上げ幅は、どんなに高く見積もっても1%であろう(5%超の利上げをしても景気後退に陥らない米国経済とは比べモノにならない)。個人消費がマイナス基調にある中、変動型の住宅ローン金利の上昇を伴う急速な利上げに限界があるのは間違いない。また日銀のバランスシートが膨れ上がっている現状において、利上げは超過準備への付利(民間銀行が日銀の当座預金内に保有している残高のうち「超過準備」と呼ばれる残高に付す利息)が大きな負担になるという問題があり、日銀財務の観点でも難しさを抱えている。もちろん政府の利払い費増加という問題もある。そもそも投機筋がそれを見越しているからこそ現在の円安があるのかもしれない。
ここで改めて認識したいのは金利の絶対水準だ。FRBが2022年3月から1年半にも満たない期間に5%超の利上げを敢行したのに対して、日銀は調整に調整を重ねてようやく0.1%の利上げを英断したにすぎない。
日銀の利上げが日米金利差縮小に直接働きかける効果が限定的なのは火を見るよりも明らかであるから、円安抑止力に対する過度な期待は禁物であろう。円安対策として日銀の利上げを求める声もあるが、その威力は竹やり程度ではないだろうか。マイナス金利解除後に円安が進行した事実は、為替市場における日銀の金融政策の非力さを物語っているように思える。
こうした事情を踏まえると、やはり日銀が通貨防衛的な利上げに踏み切るとは考えにくい。ただ植田総裁は為替が「経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすなら、金融政策としての対応を考えていくことになる」とも発言しており、円安を無視できる状況ではなくなりつつあるのは事実。
そう考えると、次回の利上げ時期がおのずと見えてくる。 【次ページ】日銀が狙う、「合理的な利上げ時期」はいつ?
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