- 2025/11/06 掲載
否定派を黙らせた…3~6年で「AGI革命」到来、教科書に載りそうな「AIの新常識」とは
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
(こちらの図は次のページで紹介します)
AGI懐疑派を圧倒、「サンフランシスコ・コンセンサス」とは?
米グーグルの元CEOであるエリック・シュミット氏が4月に、首都ワシントンで開催された「AI+バイオテクノロジーサミット」での講演内容が、大きな反響を呼んでいる。主張の内容は、人間のようにさまざまな知的タスクをこなせる仮想的な知能が3~6年以内に実現するというものだ。その内容自体はAGIとして広く知られるものであり、目新しさはない。
しかしシュミット氏の発言で関心を集めた理由は、そうした見方が「サンフランシスコ・コンセンサス」という共通認識として、AGI懐疑派を圧倒するまでに至った点にある。すなわち、(1)AGIは必ず実現する、(2)それは数年以内に起こる、(3)大きな社会的変容を巻き起こす、という予測に疑義を差しはさむ人が大きく減ったということだ。
たとえばシュミット氏は、現在の状況について「プログラマーの大半が12カ月以内に生成AIに取って代わられ、どのような言語でも実用的なコードを書けるようになる」と予測する。しかし実際には、そのような大規模な「AI失業」は起こっていないように見える。
その一方で、2025年1~7月の期間において、民間部門の米労働者1万人が実際にAIに取って代わられたと、米転職支援大手のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは推計している。決して小さくない数字だ。
これは、OpenAIの最新版の動画生成AI、Sora 2による精緻な「作品」に見られるように、AIの進化スピードが従来の予測と比較して極めて速いためだ。
OpenAIも「数年後にAGI達成」を主張
また、米IT情報サイトのWindows Centralは9月に、OpenAIのサム・アルトマンCEOがAGI達成の指標として、「もし数年後にGPT-8が(現代物理学における最も困難な)量子重力の問題を解き、その問題に取り組んだ過程や経緯を説明できたとすれば、それは単なる言語モデルではなく、真正な知性を示したことになる」と主張したことを伝えた。こうしたアルトマン氏の挑戦が単なる大見得ではないと多くの人が考え始めているのは、AIの顕著な進化を実際に感じているからである。
AGIに関して懐疑的であることから、「シリコンバレーのAI界隈から破門された」と自嘲気味に語る、認知分野の指導的科学者ゲイリー・マーカス・ニューヨーク大学名誉教授でさえ、徹底して否定的な従来の論調を若干弱めているほどだ。
懐疑派の大きな減少は相対的に「サンフランシスコ・コンセンサス」の支持者を大きく増やしたと言えよう。 【次ページ】コンセンサスが「教科書に載る」と言えるワケ
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