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- 2023/06/26 掲載
BYDはなぜテスラ並みの大躍進を遂げたのか? EV時代のものづくりの「こだわり」とは?
バッテリーがコアテクノロジー、商用車やEV建機は参入済み
中国の広東省深セン市に本社を置くBYDは、1995年の創業当時はPCや携帯電話のバッテリー事業、周辺の電子部品事業を中心にビジネスを伸ばしてきました。現在はバッテリーをコアテクノロジーに、ITエレクトロニクス事業、新エネルギー事業、EV事業、モノレール事業などを主要4事業として「テクノロジカル・イノベーション・フォー・ベターライフ」、つまり技術革新を通じて世の中を良くし、人々の暮らしに役立つ商品を提供することをブランドミッションに掲げています。
自動車事業には、中国国営企業を買収した2003年から参入しました。2010年に当時のダイムラーAG(現 メルセデス・ベンツ・グループ)と合弁会社を設立し、EVを共同開発しました。
日本国内では、2023年1月に販売を開始した日本進出第1弾となるEV乗用車「BYD ATTO 3」が乗用車分野の参入となります。それ以前からバスやフォークリフトなどの商用車は展開していて、2015年には中国メーカーとして日本へ初めてEVバスを納入した実績があります。
また、リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したEVフォークリフトは、室内で使ってもガスを排出しないクリーンなバッテリーフォークとして生鮮市場などで活用されています。これまではBtoB事業の企業から信頼いただいているブランドでもあります。
BYDとテスラどちらのEVが世界一なのか
BYDは世界70超の国と地域、400超の都市にEVを展開し、中国国内では9年連続でEV販売台数1位です。米国テスラとよく比較されますが、テスラはバッテリーEVしか生産していないので、バッテリーEVだけで2022年の年間販売台数を比較すると、テスラは131万3851台でBYDは91万1140台となります。一方、中国国内では「ニューエナジービークル(NEV)」というカテゴリがあります。その定義ではバッテリーEVとプラグインハイブリッド、燃料電池車が含まれるのですが、このカテゴリにおいて1番販売台数が多いのはBYDなので、この視点でみれば、世界1位と言えるかもしれません。
私が参画した2021年の年間販売台数は、ガソリンエンジン車も含めておよそ73万台でした。その後、2022年3月にはエンジン車の生産を終了し、以降は完全にバッテリーEVとプラグインハイブリッド(PHV)の2本立てにシフトしました。
2022年の販売台数は186万台になり、2020年比で4倍超、前年比でも約2.5倍の規模に成長しています。長いこと自動車業界にいますが、こんな成長は聞いたことがありません。
BYDが3年で4倍の大躍進を遂げた「開発力」
BYDが躍進した理由として、まず考えられるのが「多様なバリエーションを幅広く展開できる開発力」です。BYDの創設者で現在は会長を務めている王伝福は、中国屈指の研究機関で研究者として従事した後に起業しており、開発ドリブンな会社である点が強みです。
また、バッテリーをメインの祖業としていることから「品質の良いバッテリーと、それを管理するシステムを全部自前で提供できる」点が挙げられます。いわゆるパワー半導体と呼ばれる非常に高度で複雑な制御をするコンポーネントを、すべて自社で開発・生産して搭載できる「垂直統合型の供給力」を備えています。
さらに、バッテリー自体の寿命や出力を高度な制御が可能など、バッテリーそのものに対する非常に高い技術力と知見があります。加えて、中国各地に生産拠点を増強中です。
このように開発と生産・設備投資が両輪のように走り、販売もそれに呼応する形で、すべての歯車が上手くかみ合った点が急成長につながっていると思います。 【次ページ】金型は日本の工場で製造、BYDのものづくりへのこだわりとは?
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