- 2026/01/17 掲載
ほんとに安い… EV「価格戦争」が激化、BYD・テスラ・トヨタの戦略と今後の価格見通し
EV値下げの圧力と過度な値下げを抑える動き
2025年の世界EV登録台数は約2070万台で前年比2割増だったが、伸びは減速しつつあり、2026年は伸び率がさらに鈍るとの見通しも出ている。特に競争が激しい中国市場では国内需要の鈍化が指摘され、価格競争の圧力が高まっている。その結果、2026年1月には中国当局が主要な新エネルギー車メーカーを集め、無秩序な価格競争を避けるよう呼びかけたほどだ。
「値下げが進み過ぎた」と中国政府が言及をするのは、市場がそれだけ荒れている裏返しだ。値下げが続けば、体力の弱い企業は先に脱落し、体力のある企業も利益率が削られる。さらに部品メーカーや物流に負担が波及し、品質や安全性のリスクが高まる。規模の大きい自動車産業では、一社の判断が産業全体に連鎖するため、当局も放置しにくい。
もう一つの背景は、海外市場でも「中国車の安さ」が政治問題になりやすい点だ。欧州連合(EU)では中国製EVの価格を巡り、最低価格の設定を含む枠組みが議論されている。価格は企業間競争の手段であると同時に、通商政策や規制を呼び込む要因にもなる。
BYD・テスラ・トヨタ3社の値下げ戦略の違い
値下げを巡る3社の立ち位置は実は同じではない。BYDは「価格を下げても戦える体質」を先に作り、テスラは「価格で市場を動かす能力」を武器にし、トヨタは「値下げに踏み込みにくい理由」を抱える。消費者が注目するのは店頭価格だが、企業の勝敗は原価と稼働率、資金力で決まる。BYDは2025年に世界の電気自動車販売でテスラを上回ると報じられた。販売の勢いが市場心理を動かし、価格でも主導権を握りやすくなる点は見逃せない。日本市場では、2025年秋口に50万~117万円の値下げが行われた。
同社は車両の中核部品である電池の内製比率が高く、価格決定の自由度が大きいことだ。部品の外部調達に過度に依存しない構造は、値下げ局面で効く。
一方で、値下げは部品メーカー側にコスト削減圧力を転嫁しやすく、産業全体として摩擦が生じやすい。中国当局が価格競争に神経質になるのは、この構造を熟知しているからだろう。
テスラもモデル3について5~60万円の値引き継続している。同社は価格設定で市場に基準を作る企業だ。値下げだけでなく、金利やオプションの料金体系を変えることで、実質的な負担を上下させる。実際、分割払いの金利負担をゼロにするキャンペーンを継続実施している。
さらに2026年には、完全自動運転支援機能を月額課金のみに移行する考えだ。車両本体を下げにくい局面でも、周辺の価格設計で需要を刺激する発想が見える。
トヨタはEVで急進しない姿勢がしばしば論点になる。ただ、値下げ競争の観点では「守り」と「布石」が同居する。象徴例として、豪州では2026年型bZ4Xの価格を大幅に引き下げたと現地メディアが報じた。日本市場でもbZ4Xは前モデルの同一グレートと比べると70万円も値下げした。
ただしトヨタは市場ごとの事情を重視する傾向があり、EVの採算が不安定な局面ほど、ハイブリッド車など既存の収益源とのバランスが経営判断に影響する。ここは「値下げできない」のではなく、「値下げの意味が市場によって異なる」と見るほうが実態に近い。 【次ページ】原価はどこまで下げられるのか
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