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  • 2023/04/17 掲載

岸田内閣 肝いりの「GX基本方針」に隠された、日本の原発利用の“裏事情”

連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」

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日本の脱炭素を進める指針となる「GX基本方針」が2月に閣議決定された。そこでは「原子力の活用」が強調されている。原発の再稼働の推進だけでなく、これまでタブー扱いだった新設にも踏み込んだ。政府の進める原発利用はどういう意図なのか、そして、電気代の値下げやカーボンニュートラルに本当に寄与するのか。世界の最新データなども使い、“原発への期待度”を解説する。

執筆:日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村 和也

執筆:日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村 和也

早稲田大学政治経済学部卒。ドイツ留学などを経て、日本における再生可能エネルギーの拡大、地域脱炭素の実現などに関する執筆、セミナー、また企業や自治体へのコンサルティングを行う。最近は、脱炭素先行地域選定のアドバイスや、地域経済循環や地域活性化との連動を主たるテーマとする。埼玉大学工学部非常勤講師。

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新設設備の均等化発電原価、2022前半(後ほど詳しく説明します)
(出典:自然エネルギー財団)

GX基本方針で示された、世界的に珍しい「原発利用の柱」

 2月に閣議決定されたGX基本方針は、岸田内閣の肝いりの政策である。GXとは、グリーントランスフォーメーションの略で、脱炭素実現のための基本施策として“化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する”ことを意図している。

 そのための具体的な取り組として大きく3つが掲げられ、(1)徹底した省エネ推進、(2)再エネの主力電源化、(3)原子力の活用、となっている。

 カーボンニュートラル達成に向けては、ほとんどの国で(1)(2)を前面に押しているが、原発を同等に並べる国は世界では珍しい。原発利用の柱は、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組むこと」と「運転期間は40年、延長期間は20年の制限の上で、追加的な延長を認めること」であり、新設に踏み込んだことが特徴的である。

 日本の原発の現状はどうなっているのだろうか。

 次のグラフのように、2023年2月7日現在、33基の原発が存在する。2011年の福島事故の際には54基あったが、その後廃炉などが相次いで、ここまで減少した。

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日本の原発炉の2月7日の状況
(出典:自然エネルギー財団、日本原子力産業協会)

 すでに再稼働しているのは10基、新しい基準に合格したが未稼働のものが7基で、合計17GWの発電能力がある。ただし、現在、原発による発電量は日本の数%程度にすぎない。残りは審査中と申請していないもので合わせて16基、こちらはいつ動くかはっきりとはわからない。

 政府の掲げる2030年時点での目標値(第6次エネルギー基本計画)は、再生エネ発電が36~38%、原発は20~22%である。あまり現実味がないと言われてきた原発をなんとか後押しをしようとするのが、今回のGX基本方針でもある。


世界の原発シェアは頭打ち、発電量全体のわずか1割にすぎない事実

 ここで世界の動きを見てみよう。昨年のエネルギー費高騰の中、欧米などが原発利用にかじを切ったような報道も日本で行われた。ドイツが昨年末での脱原発を延期したことなどが背景にある。

 実は、世界的に原子力発電は頭打ちで、発電量は横ばい、シェア(次図の赤い折れ線)は下がってきていた。福島原発の事故の影響は大きく、2020年時点で世界の電力の1割にすぎない。

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世界の原子力発電による発電量とシェア
(出典:WINSR)

 では、今後はどうなるのか。たとえば、ロシアのウクライナ侵略で、欧州は、脱ロシア化石燃料に大揺れしたが、2050年のカーボンニュートラルに向けて原発を重要視するような姿勢はない。

 次のグラフは、欧州での電源構成の実績と2050年の脱炭素への想定が示されているが、現在20%程度のシェアがある原発は2050年にはわずか数%の予測である。

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欧州の電源別シェアの実績と2050年への予測(1990-2050、%)
(出典:Rystad Energy)

 一方で、再生エネ発電の合計はほぼ85%と圧倒的で、空前のブームが続く太陽光発電の割合が急増するとされている。再生エネ発電の急拡大の傾向はアメリカや国際エネルギー機関(IEA)の想定でもほぼ同じで、IEAの2050年予測でも原発の割合は数%である。ドイツが今年にかけて緊急に原発を生きながらえさせたように、世界の原発利用は、一時的なつなぎか、わずかな量の供給という限定された役割と考えられている。

 その理由はいくつもあるが、まず目の前に立ちはだかるのがコストである。 【次ページ】GX基本方針と日本の原発利用の“からくり”

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