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- 2023/11/01 掲載
建設業「2024年問題」とは何かをわかりやすく解説、現場から「悲痛の声」が上がるワケ
連載:現場の声から読み解く建築業界のリアル
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に「 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル」がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
何が変わる?建設業の「働き方改革」
まず初めに、建設業の働き方改革制度の概要について、説明をしていきます。2024年4月から施行される建設業の「働き方改革」というのは、「時間外労働の規制」をするというものです。
上図のとおり、時間外労働については、原則「1カ月で45時間、1年で360時間以内」が限度となるわけです。
時間外労働については、例外的に「臨時的な特別の事情がある場合」には、上記の原則以上に時間外労働をさせることができます。
この場合、年間6カ月以内は、時間外労働を年720時間以下、直近2~6カ月平均では80時間以下(休日労働含む)、1カ月だと100時間未満(休日労働含む)にすることができますが、あくまで臨時的なものであるため、年間を通じて行えるわけではないことに注意が必要です。
これまでは、建設業の時間外労働については、使用者と労働者の間での時間外労働や休日労働をすることについての協定(これを36(さぶろく)協定といいます)を結んでいれば、時間外労働などの上限自体はありませんでした。
これが「建設業の働き方改革」といわれているものの概要になります。
そして、ここが労働基準法における大きな改正点になるのですが、この労働時間の上限規制を守らなければ、労働基準法第119条違反により「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられます。
また、労働基準法違反での事案については、インターネット上にて名指しで公表されますので、企業の社会的な信用度が暴落することにもなり、非常に大きなダメージを企業として受ける可能性があります。
「働き方改革」に対する“現場の声”
この問題、実は「物流の2024年問題」とまったく同じで、建設業についても法律により時間外労働の上限規制の猶予期間が5年間設けられていました。しかしながら、現実的には、大手のゼネコンから地方の中小企業まで、ほとんどの企業において、この時間外労働の上限規制への対応ができていないのが現実です。
もともと上限規制の時間内に収まっているような企業も存在するのですが、収まっていなかった企業のほとんどは、5年前と比べて、あまり改善されていません。
私が建設業界の方々と接する中で、現場の声として特に多いと感じるのは、
「工期が決まっているので、間に合わせるために土曜日なども現場に出ざるを得ない」
「県や市といった発注者からの要望事項が多いため、休日も含めて、書類づくりをせざるを得ない」
「日給制だから、土曜日や日曜日も関係なく、現場に出た方が得」
「働き方改革をしなければならないというのはわかっているが、さまざまな事情があり、すぐに対応することが難しい」
「建設業界全体が、労働時間を抑えても問題がないような構造に変わるしかない」
といったところです。
この声を基に、「働き方改革」が進まない理由について、さらに詳しく見ていきましょう。 【次ページ】「働き方改革」が進まない“4つ”の理由
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