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- 2025/08/04 掲載
JALもANAも捨てたのに…「世界最強エアライン」がまさかの大阪で“店舗”に賭けるワケ
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
「え、今さらリアル店舗?」日本市場を狙う“5兆円の優等生”
航空業界では今、実店舗の発券カウンターを次々と閉鎖し、顧客をオンラインへと誘導する動きが加速している。日本でも例外ではなく、後述するように日系大手の実店舗はすでに姿を消した。そんな“デジタル一強”の潮流に、真正面から逆らい、「リアル」の力に再び賭けたのが、ドバイを本拠とするエミレーツ航空だ。
2025年7月8日、極東で4番目、日本では初となるリアル拠点「エミレーツ・トラベル・ストア大阪」を堂々と開業し、デジタル全盛の時代において、あえて旅を“店舗で売る”という異色の戦略に踏み切った。
この大胆な動きの背景には、圧倒的な業績がある。
エミレーツ航空は2024~25年度に過去最高の業績を達成している。グループ全体の売上高は1,454億ディルハム(約5兆8,160億円)、税引前利益は227億ディルハム(約9,080億円)に達し、世界で最も収益性の高い航空会社の1つに躍り出た。
このような堅牢な財務体質が、他社が躊躇する“リアル店舗回帰”という一手を可能にしたのだ。
同社が掲げるのは「世界一の航空輸送力」の実現。その布石としての大阪出店には、日本市場の戦略的価値が色濃くにじむ。
単なる航空券販売の場にとどまらず、顧客との深い接点を築くための体験拠点として、同社はリアルの可能性を再定義しようとしているのである。
本稿では、ストアオープンのセレモニーにあわせて来日したエミレーツ航空のエグゼクティブ・バイス・プレジデントのナビル・スルタン氏の発言を交えながら、航空業界の“優等生”と呼ばれる同社が今なぜ「リアル」を重視するのか、その真意と展望を現地取材からひもといていく。 【次ページ】【JAL・ANAと比較】数字で暴く「世界最強エアライン」の実力
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