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  • 2023/11/27 掲載

花王・豊橋工場の次世代倉庫のすべて、完全自動/無人化・少量多品種対応が可能なワケ

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ニーズが多様化する中、消費者に適切に商品を送り届け続けるためには、全国に必要な商品を必要な量だけ届けることが重要になる。花王はESG戦略の一環として、少量多品種生産への対応と自由度の高い物流機能を連携した生産・物流機能一体型拠点の実現を通して環境負荷の低いサプライチェーンを目指している。同社の物流の特徴はメーカー物流だけでなく卸物流まで自社で行っている点だ。豊橋工場内の新しい倉庫ではパレット自動倉庫、そしてロボットと無人搬送車(AGV)を組み合わせた自動化が進められていた。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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花王は「コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」を目指す
(写真:筆者撮影)

次世代物流を目指す花王・豊橋工場、倉庫内の作業をゼロに削減

 花王は、スキンケア・ヘアケア製品を中心に24時間稼働で多品種を生産している豊橋工場で次世代の自動化倉庫を運用中だ。工場から物流拠点や販売店へ柔軟で効率的に製品を供給できるロジスティクスを目指して2023年3月27日に竣工し、同31日より運用を始めた。11月時点で、おおよそ半年が経過したところだ。

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2023年3月から運用されている花王・豊橋工場の次世代倉庫。場内の対面に建つ製造棟で生産された商品が入荷され、出荷している
(写真:筆者撮影)
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120万ケースを保管可能なパレット立体自動倉庫
(写真:筆者撮影)

 建築面積は7204平方メートル。1日あたりの入出荷能力は4万ケース。120万ケースを保管可能なダイフクのパレット立体自動倉庫と有軌道高速仕分け台車(STV、Sorting Transfer Vehicle)を1階に6台、2階に12台、合計18台活用している。パレットには自動認識用のRFIDタグが付けられており、QRコードと組み合わせることで、隣接した工場で製品とひも付けられて追跡される仕組みだ。

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有軌道高速仕分け台車(STV)による入庫作業
(写真:筆者撮影)

 大きな特徴は、段ボールケースの仕分け作業のためにコンベヤーのような固定設備ではなく、MujinのAGVを28台、パレタイズ/デパレタイズを行う知能ロボットを3台活用している点だ。多品種製品のパレットからの荷卸しとパレットへの積みつけが自在に同時にできる。稼働開始時は25台だったAGVは、その後の運用を経て、より効率を高めるために3台増やした。「作業の効率化だけでなく、今後の事業環境の変化にも柔軟に対応できる」と判断して導入に踏み切った。

花王 豊橋工場 次世代倉庫でのMujin 知能化ロボット+AGV

 倉庫全体を管理するWMS(Warehouse Management System)は花王製で、その下に自動化機器をコントロールするために、大和ハウスグループ傘下のフレームワークスが開発したWCS(Warehouse Control System、自動化設備制御システム)を導入。各自動化設備を統合的に制御して完全自動倉庫を実現している。

 フレームワークスのWCSは、Hacobuのトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ バース)」とも連携。カメラでクルマのナンバープレートを読み取って自動認証し、ドライバーに行き先指示を出すシステムだ。さらに、トラックの予約と到着状況を考慮し、WCSから出庫指示ができるシステムも構築した。トラック待機時間を削減する。トラックが場内に入ったらWCS経由で自動で積載する荷物が用意され始めるので、ドライバーの待ち時間は減った。

 今はまだ倉庫から出庫された後の作業で少数の人手が使われているが、トータルとして従来は30人で行っていた作業を、2人から3人にまで減らしている。経済産業省 資源エネルギー庁公募の「AI・IoT等を活用したさらなる輸送効率化推進事業」による自動運転フォークリフト実証事業とも連携し、トラックへの積み込み作業の自動化・無人化を進めている。今後は自動運転フォークリフトも、使える範囲から活用していく予定だ。

花王 コーポレート KAO TOYOHASHI Next-generation Warehouse 花王豊橋工場で次世代新倉庫が始動

花王のESG戦略、ムダのない商品供給で物流コストを抑制

 花王グループは、「豊かな共生世界の実現」をパーパスに、2019年にESG(環境・社会・ガバナンス)戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定。2021年には「未来のいのちを守る~Sustainability as the only path」をビジョンに掲げた中期経営計画「K25」を発表。さらに2023年度には「K25」を見直し「K27」を発表した。経営にもESGの視点を導入している。

 今回取材に訪れた豊橋工場隣接の次世代倉庫もこのESG戦略の一環で、効率的な少量多品種生産への対応と自由度の高い物流機能を連携した生産・物流機能一体型拠点「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」の実現と、持続可能なサプライチェーンを目指している。

 つまり、多様化するニーズに対応しつつ、必要な商品を必要な量だけ届けることで、資源や環境への負担が少ない循環型社会に貢献しようという視点の中での取り組みの1つだ。取材に対応してくれた花王SCM部門 デジタルイノベーションプロジェクト チーフデータサイエンティストの田坂 晃一氏は、この点を強調した。

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花王SCM部門
デジタルイノベーションプロジェクト チーフデータサイエンティスト
田坂 晃一氏

全国54拠点の物流拠点を持ち、メーカー物流に加えて卸物流も手がける

 花王は全国に家庭品24拠点、化粧品7拠点、化学品23拠点の物流拠点を持っている。豊橋工場はスキンケア用品の「ニベア」などビューティーケア製品の供給拠点として少量多品種製品へのフレキシブルな製造と物流を主な業務としている。

 花王の物流の特徴は、メーカーから卸への「メーカー物流」だけでなく、卸から小売への「卸物流」も自社で手がけている点だ。グループ会社の花王ロジスティクスにより卸売業者を使わず自社で手がけることで効果的なロジスティクスとコスト削減により市場競争力を高めてきた。

 ちなみに花王の商品は国内で年間約22億個消費されており、これを段ボールケースに換算すると1.9億ケース、つまり国民1人あたり年間1ケース以上に相当するという(花王のサプライチェーンマネジメント)。 【次ページ】機械学習アルゴリズムで需要予測的中率を91%まで向上

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