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- 2025/09/30 掲載
最初から違う……「品質管理のAI導入」が失敗多いワケ、日立だけが知る“成功手順”
通信系ベンチャーに新卒で入社。翌年新規事業立ち上げに参画。通信サービス・チャットボット・IVRなど幅広いサービスの営業を経験。その後、SNS運用代行を担当し、カスタマーサクセス部門の責任者として幅広い業界のお客様への運用企画・実行・サポートに従事。株式会社INDUSTRIAL-X参画後は、パートナーアライアンス業務に従事し、100社を超えるパートナーネットワークの構築。パートナーネットワークを通じた、業界・ソリューションノウハウをDXを実現するための様々な経営資源(リソース)の調達をワンストップで支援するプラットフォーム「Resource Cloud」へ展開すると共に、お客様のソリューション相談窓口として、様々なプロジェクト支援に従事。
なぜ「品質管理のAI導入」は頓挫する?見えてきた共通点
品質管理部門におけるAI導入が失敗に終わる最大の理由は、「学習に耐え得るデータが整っていないこと」に尽きる。たとえば、ある製造業の現場では、キズの有無をチェックする外観検査の自動化を目的にAI導入が検討されていた。検査対象となったのは、一見単純に見える部品である。部品の状態をカメラで撮影し、そのデータをAIに判断させることで外観検査を自動化させようと考えていたのだ。
しかし、撮影対象となる部品は立体形状であるため、一方向から撮影するだけでは表面全体を確認できず、あらゆる角度から撮影する必要がある。加えて、この部品は発注元からの品質基準が非常に厳しく、わずかな傷や微細な不具合も見逃さないことが前提条件とされていた。
このような難しさがある中で、AI導入を前提に部品の撮影が進められた。いざ分析のためのデータ収集を進めると、すぐにいくつかの課題が浮き彫りになった。
- 部品の種類が多く、限られたデータでは学習対象を十分に網羅できない
- 撮影角度や照明条件が統一されず、同じ不良でも画像の見え方が異なる
- 2図面や仕様に公差や判定基準が十分に明記されておらず、従来は検査員の経験的判断に依存していた
- 発注元の要求水準が高いため、わずかな誤判定でも受け入れがたいリスクとなった
これらはすべて「AIが判断できる構造になっていないこと」の表れである。AIそのものの精度が問題なのではなく、人間が暗黙知として扱ってきた判断条件や検査基準を形式知として整え、データに落とし込めていないことが本質的な課題だった。それでは、どうすれば良いのだろうか。
誤解が多い…AI活用「成功・失敗」を決める”ある工程”
多くの企業は「検査工程にAIを導入すること」だけを考える。しかし、それでは失敗する可能性が高い。なぜなら、製品や検査プロセスが「AIにとって扱いやすい前提になっていない」からだ。AIが力を発揮するためには、設計段階から以下のような工夫を取り入れる必要がある。
- エッジ形状を明確にし、画像認識で捉えやすい構造にする
- 検査工程でのカメラ位置や照明条件をあらかじめ想定して設計する
- 良否判定を数値で定義し、公差やしきい値を図面に明記する
- 使用する検査装置の測定能力を前提に設計を進める
つまり、「検査工程をAIに置き換える」発想ではなく、「AIが生きるように製品を設計する」という逆転の思考が求められる。
ただし、設計だけを工夫しても十分ではない。品質問題の多くは、設計・製造・品質が分断されていることに起因する。ここからは、その“部門横断のつながり”を実現した事例として、日立製作所の取り組みを紹介する。 【次ページ】日立製作所が実践、品質管理の質をグッと上げた方法
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