- 2025/11/12 掲載
ホリエモンと“空のUber”目指す──新潟発「トキエア」が明かす“型破り”黒字化戦略
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
業績は「非常に厳しい」、CEOが明かす“リアルな現状”
トキエアでCEOを務める和田氏は、同社の現状について、「導入したフランス製ATR機のAOC(航空運送事業許可)取得が遅延したことなどにより、当初予定していた就航計画から2年という大幅な遅れを余儀なくされました。現在、業績は非常に厳しい状況にあります」と語った。和田氏は、エンタメ業界から航空会社トップへと転身した異色の経歴を持つ45歳のCEOだ。就任から日が浅いものの、「会社を根本から立て直す」という強い責任感を持っており、「私の責務はこの困難な状況を打破し、会社を黒字化のフェーズに持っていくことに他ならないです」と決意を表明する。
また、和田氏は航空業界に対して深い思い入れがあるという。兵庫県伊丹空港の近くで生まれ育ったことから、「子供の頃から飛行機は身近な存在でした」と明かした。
トキエア参画前には、インドネシアで家具製造工場を経営していた際にも航空産業への参入を計画したことがあったが、「航空会社は国策のようなイメージが強く、外資の参入が厳しかったため断念しました。それでも、いつかは航空業界に携わりたいという思いは持ち続けていました」と述べた。
海外での仕事が多く、コロナ禍以前には年間100回以上の航空機利用があったことを明かす。「ATR機にも何度も乗った経験があり、最初はエンジン始動時の音に驚いたりもしましたが、今では景色も見えて良い飛行機だと思います」と機材への理解と愛着を語った。
カギは「JR」、補助金に頼らない“新潟経済圏”の活性化
和田氏が最優先の経営課題として掲げているのは、補助金に依存しない自立した経営体質の確立である。「補助金の存在を前提としたスタンスは、納税者意識に反し、経済的合理性に欠けるため、私は好みません。トキエアは補助金なしで黒字化を目指す方針を堅持します。自治体からの出資については経済的合理性がありますが、それ以外の資金については自助努力で調達し、事業を推進していきます」(和田氏)
この自立経営の「成功方程式」は、機材の稼働率を劇的に向上させることだ。
現状、トキエアは1日2往復4レグ(注1)での運航が中心だが、「新潟空港の運用時間を最大限活用し、1日最大8レグまで引き上げることで、稼働率を現在の2倍にすることを目標としています」と具体的な数値目標を示した。
さらに、近く就航を開始する名古屋(中部)~札幌(丘珠)線(注2)など、就航先同志を結ぶ路線は考えても、事業の中心拠点はあくまで新潟に据え、新潟経済圏の活性化を最優先課題とする方針を改めて強調する。
「日本の航空事業には、羽田と結ばないと黒字化できないというジンクスがあるようですが、新潟でその常識を覆したいです」と考える。JR新幹線によって航空路は消えたわけだが、むしろライバルであるJRを味方につける構想があるという。
「たとえば、大宮からは新幹線を利用して約2時間で新潟空港にアクセスできます。大宮から羽田空港までの所要時間と比べても大きな差がなく、新たな選択肢となり得ます」と関東広域に商圏が広がることを期待する。 【次ページ】燃料効率こんなに違う……強みは「圧倒的な低コスト」
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