- 2026/03/12 掲載
「産業用AI市場」を徹底解説、トヨタも巨額投資…2030年“24兆円市場”の10大トレンド(4/4)
AIはクラウドから「現場」へ、エッジAIが次の主戦場
製造業者はエッジAIの導入に注力しています。製造業者が業務最適化のためにAIを導入する中、集中型クラウドベースモデルが重視されてきました。
しかしながら、データコストの上昇、遅延の少ないアプリケーション、セキュリティ上の考慮事項により、AIワークロードの一部を機械や生産ラインの近くで処理し、専用のエッジAIハードウェアを活用する方向へ注目が集まっています。
過去数年間における2つの急速な技術的発展が、多くの製造業者にとってエッジAIを実現可能な目標とする一助となりました。すなわち、a)専用エッジコンピューティングハードウェアの成熟化、そしてb)専用エッジAIソフトウェアプラットフォームの確立です。
a)専用エッジコンピューティングハードウェアの成熟
エヌビディアのJetsonプラットフォームは、産業用エッジにおけるAIコンピューティングの事実上の標準として成熟しました。性能向上により、クラウドに依存せずに、複雑なAIワークロード(例:リアルタイム映像解析、深層学習推論、センサーフュージョン)をデバイス上で直接実行することが可能となりました。
その結果、産業用オートメーションベンダー、産業用PCメーカー、ロボティクスOEM、スマートカメラメーカーは、遅延が少なく計算負荷の高い環境におけるJetsonモジュールの価値を認識し、自社システムへの組み込みを開始しています。
b)専用エッジAIソフトウェアプラットフォーム
エッジデバイス上でのAIモデルの展開とトレーニングを効率化するため、半導体およびハードウェアベンダーは新たなエッジAIソフトウェアプラットフォームの提供を開始しました。
これにより、顧客はAIアプリケーションの開発、制約のあるデバイス向けのモデル性能最適化、分散型産業資産全体での更新管理が可能となります。
半導体分野では、ベンダー各社から提供される新たな統合開発環境の一例として以下が挙げられます。
- インフィニオンの「DEEPCRAFT」
- クアルコムの「AI Hub」と「Edge Impulse」の統合
- STマイクロエレクトロニクスの「STM32Cube.AI」
以上のプラットフォームは、モデルトレーニング、量子化、デプロイ、無線アップデート(OTA)のためのフルスタックエッジAIツールチェーンを提供します。
ハードウェア面では、新たなソフトウェアプラットフォーム/提供サービスの一部として以下が挙げられます。
- アドバンテックの「Edge AI SDK」
- ベッコフオートメーションの「TwinCAT Machine Learning Creator」
汎用LLMではムリだから…製造業は「専用AIモデル」へ
OpenAI、グーグル、アンソロピックなどのLLMを用いてアシスタントやコパイロットの構築を試した製造業者の中には、これらのモデルが産業分野の知識を十分に理解していないという課題に気づく企業もあるでしょう。
LLMの訓練に必要な産業データポイントの多くは、パブリックインターネット上に存在しないため、一部の産業技術ベンダーは、汎用モデルではなく、設計、生産、保守、運用にわたるドメイン固有のデータ(CADファイルや機械故障コードなど)、オントロジー、ワークフローを用いて訓練され、「エンジニアリングの言語を話す」ことを目指す、専用設計の産業基盤モデル(IFM)の構築を開始しています。
具体例としては以下が挙げられます。
- シーメンス:
産業オートメーションのリーダーであるシーメンスは、マイクロソフトと共同で、CAD/CAEファイル、センサー時系列データ、オートメーションコードで訓練されたマルチモーダル産業基盤モデルの開発を発表。
- グーグル:
2025年3月、グーグルはGemini Roboticsプラットフォームのクラウド版を公開。Geminiマルチモーダルモデルをロボットエージェントに統合し、産業空間などの複雑な物理環境においてロボットが解釈・推論・行動することを目指す。Gemini Roboticsのオンデバイス版は2025年6月にリリース。
- エヌビディア:
2025年3月、エヌビディアはヒューマノイドロボット向けに最適化されたビジョン・言語・行動(VLA)基盤モデル「Isaac GR00T N1 for robotics」を発表。同年8月には、ロボットおよび物理AIシステムの開発・展開を加速させることを目的とした「新たなNVIDIA Omniverseライブラリ」および「NVIDIA Cosmosワールド基盤モデル」を公開。
- Figure AI:
米AIロボティクス企業Figure AIは2025年2月、Helix VLAモデルを発表。同社によれば、このモデルは知覚、言語理解、連続高レート制御を統合し、複数のヒューマノイドロボットがタスク固有の再トレーニングなしに未知の操作課題で協調可能。
エージェント型AIに期待高まるものの…カギは「MCP」
生成AIから発展したエージェント型AIは、産業界においても主な関心事として成長しています。エージェント型AIとは、AIモデルに基づき、複数の個別AIエージェントを連携させることでワークフロー全体を実行するソフトウェアシステムを指します。
2025年には多くの産業用ソフトウェアベンダーがメッセージングで「エージェント型AI」という用語を前面に打ち出しましたが、導入は依然として初期段階にあります。
ハノーバー・メッセ2025において、IoTアナリティクスが観察した展示の大半は基本的なオーケストレーション機能のみを実演していました。有望な展示の1つがアクセンチュアの「エンジニアリング・オーケストレーター」で、ユーザーが自然言語を用いて設計変更を行える機能を備えています。エージェント型エンジニアリングチャットボットは既存ツールの上位制御層として機能し、ユーザーのプロンプトを解釈しながらシーメンスNXやアルテアHyperMeshなど複数ツールを並行して操作し設計変更を実行します。
しかしながら、多くのベンダーはエージェント型AIを長期的な機会と位置付けており、今後本格的な導入が期待されています。
時を同じくして、AIエージェントの潜在的なオーケストレーション標準となり得るMCP(モデルコンテキストプロトコル)が登場しました。MCPはアプリケーションがLLMにコンテキストを提供する方法を標準化するものです。米AI企業アンソロピックが2024年11月にMCPを初めて公開し、その後マイクロソフト、OpenAI、グーグルといった主要テクノロジー企業がMCPを採用しています。
「MCPを通じて、世界最速の技術標準化がまさに進行しているのを目の当たりにしました」──ジョー・ボーマン氏(シーメンス 製品ライフサイクル管理(PLM)製品担当エグゼクティブバイスプレジデント)(2025年7月、Siemens Realize Liveにて)
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