- 2026/07/23 07:10 掲載
“人間向け”インターネットは不要に? AIエージェントが変える「UX新常識」の衝撃
インターネットは「機械向け」「人間向け」に分かれる
米サイバーセキュリティ企業であるHUMAN Securityの「2026 State of AI Traffic & Cyberthreat Benchmark Report」は、1000兆を超えるインタラクションの分析から、自動化トラフィックの伸び率が人間によるトラフィックの約8倍に達したことを明らかにした。自動化トラフィックの割合は51%となり、人間によるアクセスを上回ったという。Adobe Analyticsの直近データでは、米国小売業者へのAIトラフィックが2026年第1四半期に393%増加し、AIエージェントによる購買額が人間の購買額を超えた。
ガートナーのバイス プレジデント、アナリストのブレント・スチュワート氏は、この数字について「インターネットが『人間向け』と『機械向け』の2つにレイヤーに分かれつつある証拠です」と語る。
「機械向け」のエージェントレイヤーはAPI駆動型のシステムが直接読み取れる構造を持ち、AIが効率的に処理できるよう最適化されている。一方のヒューマンレイヤーは、体験・感情・本物らしさを軸とした「人間向け」のインターネットで、ソーシャルメディア、ライブ配信、クリエイターコンテンツなどがここに属する。
AIエージェントに「最適なインターネット」とは
このレイヤー構造は「誰のために設計するか」という視点を根本から変える。AX(エージェントエクスペリエンス)はAIエージェントによる利用に最適化されたインターフェースとシステム連携のためのデザイン・アプローチだ。見た目がリッチなGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の代わりに、システムが直接読み取れる構造化されたインターフェース、十分に文書化されたAPI、標準化された通信プロトコルを重視する。APIを用意するだけがAXではない。エージェントという新たなユーザー像(ペルソナ)を定義し、独自の設計ルールや評価基準、システム構成の型を備えた、デザインと開発の体系的なアプローチなのだ。
エージェントは人間のように感情やブランドストーリーには反応しない。評価するのはAPIレスポンスの完全性、データの一貫性、コスト効率、相互運用性、そして信頼性だ。スチュワート氏は航空券予約を例に挙げる。
「人間なら、ブラウザを開いてページの読み込みを待ち、バナー広告をスクロールして避けながら出発地や日付を入力し、数十件の検索結果から価格や手荷物規定を比較して座席を選び、20分後にようやく確認メールを受け取るでしょう」
しかしAIエージェントは構造化された意図をAPIで送信し、1秒以内に完了する。「AIエージェントにとって重要なのは、クリーンなAPI、構造化されたデータ、信頼できるレスポンスです」とスチュワート氏は言う。
人間向けは「完全に不要」になるのか?
ガートナーは「2029年までに、アプリケーションの60%は主にAIエージェントによる利用を前提として設計・構築されるようになり、人間向けのUX(ユーザーエクスペリエンス)は2次的なレイヤーになるか、完全に不要になる」と予測している。モバイル革命がモバイル非対応のサイトを市場から排除したように、エージェント革命はエージェント非対応の製品を市場から淘汰していく。エージェントが自社サービスと容易にやり取りできなければ、よりスムーズに連携できる競合他社を選ぶ。そのエージェントを操作する人間は、自社ブランドを目にすることすらない。
収益モデルのあり方も大きく変わる。サブスクリプションや体験重視のプレミアムコンテンツは「ヒューマンレイヤー」の主な収益源となる一方、データライセンスやAPIの有料提供といったビジネスは「エージェントレイヤー」で成長していくだろう。
ここですべての企業が向き合うべき切実な問題がある。それは、自社の貴重なデータがAIエージェントに大量に消費されている現状が、正当な対価を得られる「価値交換」となっているのか、それとも単にフリーライドされてしまっているのか、ということだ。 【次ページ】知っておくべき3つの設計モード「UX・HAX・AX」
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