- 2026/08/19 06:50 掲載
【比較】フジクラ「利益率26%」の衝撃、住友電工・古河電工・SWCCと大差が開いたワケ(2/2)
なぜ利益率に4倍差?「電線会社」の中身がもう違う
データセンターにはGPUなどの半導体だけでなく、大量のデータを高速で伝送する光ファイバーや光コネクター、さらに膨大な電力を供給する電線・電力設備が必要になる。
SeizoTrendでは、データセンター関連企業は同じ需要を取り込んでいても、製品構成によって利益率には大きな差が生じると指摘してきた。
今回の4社比較で最も象徴的なのが、フジクラと住友電工だ。先述した通り、フジクラの情報通信事業は営業利益率が約37%に達し、全社営業利益の約94%をこの1事業で稼いでいる。対して住友電工の情報通信事業も、売上高865億円に対して営業利益272億円と高い収益力を示す一方、売上高の約6割を占める自動車事業は、売上高8,028億円に対して営業利益260億円、営業利益率は単純計算で3%強にとどまる。
両社では事業構成が大きく異なるため、単純に優劣を比較することはできない。それでも、高収益な情報通信事業への利益集中度が高いフジクラと、自動車をはじめ幅広い事業を抱える住友電工という構造の違いは、両社の全社営業利益率が大きく離れた理由を読み解く材料の1つになる。
重要なのは「AI需要があるか」ではなく、その需要の中で何を売っているかだ。光ファイバーそのものだけでなく、高密度な光コンポーネントなど付加価値の高い領域が利益拡大に寄与する可能性はある。
ただし、フジクラの売上高50.1%増に対して営業利益が155.1%増となった理由を、製品の高付加価値化だけで説明することはできない。同社が今回明示している主な要因は、光コンポーネント製品を中心とした伸長と新規データセンター大型案件である。
一方、事業が分散していることは弱みとは限らない。住友電工は自動車、環境エネルギー、産業素材など巨大な事業を持つ。SWCCは国内電力インフラ、古河電工もエネルギーや自動車部品などを抱える。
AIデータセンター投資が高水準で続く局面では、フジクラの情報通信事業の高収益が大きな強みになる。一方、需要サイクルが変わった場合に事業分散が業績の安定にどう作用するかは、今後の検証事項だ。
電線4社の勝敗を分けているのは、もはや「電線を何本売ったか」ではない。限られた生産能力を、どの成長市場の、どの付加価値の高い製品に振り向けられるか。今回の決算は、各社の収益構造の違いが鮮明になっていることを示している。
フジクラ独走は続く? 次の勝敗を分ける「3つの条件」
フジクラは営業利益予想を3,100億円から4,320億円へ39.4%上方修正した。売上高予想1兆7,550億円に対する営業利益率は単純計算で約24.6%。第1四半期だけの一過性ではなく、高収益が一定程度続くとの計画である。フジクラの強気な見通しが際立つ。
ただ、第1の条件はAIデータセンター投資そのものが続くかだ。フジクラは第1四半期に大型案件の寄与も受けた。高い需要と製品価格、高付加価値品の構成比が同時に維持されなければ、37%前後という情報通信事業の利益率を永続的に前提とすることは難しい。
第2が「追う3社」の収益改善である。古河電工は通期営業利益予想を950億円から1,230億円に引き上げた。売上高1兆5,300億円に対する利益率は約8.0%で、まだフジクラとの差は大きいものの、光ソリューションの黒字転換が続けば差を縮める余地がある。
住友電工も営業利益予想を4,250億円から4,500億円へ上方修正した。売上高予想5兆4,000億円に対する利益率は約8.3%となる。SWCCも営業利益を285億円から330億円へ引き上げ、売上高3,300億円に対する利益率は10.0%。国内電力インフラとAI関連の双方がけん引するという。
そして第3が「AI以外の稼ぐ力」だ。現在の数字だけなら、フジクラの収益力は別格である。しかし、それは情報通信事業への利益集中と表裏一体でもある。対して住友電工には自動車を中心とする巨大な事業基盤があり、SWCCには電力インフラ、古河電工にも複数の成長領域がある。
つまり、今回の決算で「最も稼ぐ会社」はフジクラだった。しかし、次の勝負はAI特需の大きさだけでは決まらない。
フジクラが高利益率をどこまで維持できるのか、古河電工が復活を本物にできるのか、SWCCが電力とAIの二刀流を伸ばせるのか、そして住友電工が巨大な事業規模を利益成長につなげられるのか。4社の決算は、同じ「電線」という看板の下で、まったく違う成長競争が始まっていることを示している。
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