- 2026/10/08 06:50 掲載
日立・ヤマトも大注目…日本人のシリコンバレー連続起業家が挑む「物流AI革命」の正体
連載:デジタル産業構造論
法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 准教授 / d-strategy,inc / Third Ecosystem,inc / Inclusive AI,inc 代表取締役CEO
野村総合研究所、産業革新投資機構JIC-VGIなどを経て現職。法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 准教授として、産業価値デザイン研究室にて生成AI・AIエージェントや、フィジカルAI・AIロボット、データスペースなどデジタル技術・先端技術をビジネスや社会の価値へ転換するための手法論の教育・研究を実施。
戦略・DX支援企業のd-strategy,inc(企業のAI変革、DX戦略、デジタルソリューション戦略)を創業し代表取締役として、フィジカルAI、AIエージェントをはじめとするデジタル化・自動化・技術変化の中での企業やスタートアップのDX/ソリューション・イノベーション戦略を支援。
また、グローバルでのスタートアップエコシステム連携プラットフォームのThird Ecosystem,incの代表取締役CEOとして海外・国内のスタートアップエコシステム(VC/CVC/企業/大学/政府機関/スタートアップ)の連携・活性化、スタートアップ企業やエコシステム企業の海外展開支援や、海外スタートアップの日本展開に取り組む。
Inclusive AI,incにおいて盲ろう者(目が見えない・見えづらく、耳が聞こえない・聞こえづらい)、視覚障害者、高齢者等向けのAIエージェントなどのAIサービス開発を実施。「制約のある方を含めすべての方が前向きに活き活きと暮らし、学び、挑戦できる世の中」をAIエージェントやフィジカルAIを通じて実現していくことを目指す。
最新刊として『フィジカルAI進化論~自律するロボットとともに作る産業の未来~』(SBクリエイティブ)を26年10月1日に出版予定。
その他、近著に『生成DX~生成AIが生んだ新たなビジネスモデル~』(SBクリエイティブ)、『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)、『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)があり、ビジネス+IT連載『デジタル産業構造論』、MONOist等にてWebメディア連載。
youtubeチャンネル『フィジカルAI時代の産業論 (d-strategy / Third Ecosystem 小宮昌人)』 @dstrategyinc にて生成AIをはじめ産業のデジタル化を解説
シリコンバレー連続起業家の正体
LeeapLabs Founder & CEO 鈴木智之氏
鈴木氏の技術的専門領域は、インフォメーション・リトリーバルと呼ばれる情報検索技術である。グーグルが上場した当時は、ディープラーニングによる画像解析などが台頭する以前の時代であり、世界の技術トレンドの中心は検索技術や、Amazon・YouTubeに代表されるレコメンデーションシステムであった。
検索とレコメンデーションは技術的に表裏一体であり、共通する技術要素が多い。鈴木氏はこの領域で自然言語処理にも深く携わり、高度なAI技術の知見を蓄積してきた。
この巨大なデータ群に対する情報検索やデータ解析における深いバックグラウンドこそが、物理空間における複雑なデータのシミュレーションや最適化モデルを構築する同氏の強みとなっている。
日立も大注目した「倉庫最適化」技術を開発
鈴木氏はLeeapLabsを創業する前、最初の起業としてDatumix(データミックス)という会社を立ち上げ、約8年間にわたり経営。物流に関する知識がまったくない状態から3年間もがきながら現場のオペレーションを学び、倉庫管理システム(WMS)や各種制御機器から取得できるデータを活用したシミュレーションおよび最適化ソリューションを構築した。倉庫内のオペレーションにおける最大の課題は、入出荷の忙しさに激しい波がある波動だ。この波動を吸収するには、人と自動化機器・搬送ロボットの処理能力やタイミングを合わせる必要がある。鈴木氏はこれらをシミュレーションによって同期させることで、忙しさを平準化し、全体の作業時間を短縮、大幅なコスト削減につなげた。
また、棚のロケーション配置や出荷経路の最適化においては独自の特許技術を取得。従来、どの棚にどの製品を置くかは現場の長年の経験則に依存していた。だが過去の出荷実績データに基づくABC分析により、頻繁に出荷されるA品を作業場所の近くに、出荷頻度の低いC品を奥へという従来型から、A~Cのカテゴリ数を無制限に多く、かつ季節性(例:夏にはよく売れるが冬には売れない)や共起性(例:ノートとペン、や鉛筆と消しゴム)を考慮できる機械学習拡張によるグラデーション状に配置するアルゴリズムを開発した。
シャープとの共同実証実験(PoC)においては、倉庫内のデータをAPI経由で処理した結果、作業員の歩行距離および自律走行搬送ロボット(AMR)の移動距離を約20%削減することに成功。これは、たとえば9時から17時まで(休憩なしで)かかっていた業務を、15時までに終わらせるほどの劇的な効率化を意味する。この特許技術の発表を契機に、ヤマト運輸の本社からも声がかかり、協業の議論が始まった。
さらに、出庫時の最適な経路設定や、複数のAIフォークリフトおよび搬送ロボットの制御最適化でも実績を残した。日立製作所とのPoCにおいては、AIフォークリフト3台に対する最適なパレット搬送タスクの割り当てを実施。
フォークリフト同士が近接することで発生する待機ロス(デッドロック)を回避するため、事前学習でリアルタイムにタスクの順序を並び替え、稼働効率を最大化させた。この制御シミュレーションにおいても、同様に業務時間を大幅に短縮する成果を得ている。
こうしたDatumixの取り組みは海外からも評価された。2020年には、オーストリアに本社を置くデータサイエンス企業のStartUs Insightsが、物流・サプライチェーン領域でデジタルツインやAIを手掛ける世界のスタートアップ135社を分析。その中から有望な4社のうちの1社として、Datumixを選出した。
倉庫技術を探索していた日立製作所が、この英語の選出記事を発見し、Datumixに日本子会社(Datumix Japan)があることを知って連絡を取ったことが接点となり、日立製作所、そして日立物流(現ロジスティード)を交えた5年間に及ぶ3社共同プロジェクトへと発展した。 【次ページ】ヤマトやシャープらも参加した「次なる挑戦」
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