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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社提供コンテンツ

  • スペシャル
  • 2020/04/15

伊藤忠商事によるSAP S/4HANAへの移行からグローバル展開まで

「既存の基幹システムを再構築する意味はどこにあるのでしょうか」――。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためには、多くの経営層が抱くこの“問い”に答えを出す必要があるようです。 2019年10月25日に開催された「CTC Forum 2019」では、DXを実現した伊藤忠商事の浦上 善一郎氏と、同社の取り組みを支えたSAPジャパンの首藤 聡一郎氏が対談し、ユーザー企業・プロバイダー企業の両社の立場から、日本企業の基幹システム刷新における問題点やポイントが語られました。

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次世代の経営を後押しするための基幹システム刷新

 経済産業省が平成30年度に発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」によると、レガシーシステムがデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現やデータ活用の足かせとなり、2025年以降に日本全体で年間12兆円もの経済損失が生じる可能性が指摘されています。

 多くの経営層はDXやデータ活用推進の必要性を感じているものの、基幹システム自体が問題なく稼働している中で、転換点を見極めるのが難しいと感じているようです。また、多くのIT部門は、経営層に対して基幹システムを再構築することの価値をどのように訴求すべきか、悩みを抱えている状況にあります。

 伊藤忠商事の場合は、ビジネス環境が変化する中で「第二の創業」ともいうべき局面を迎え、基幹システムの大幅な刷新を決断しました。同社は1970年代から運用してきたシステムに、数度にわたる大規模改修を行ってきましたが、システムコンセプトは当初から大きく変えておらず、そのままでは次世代型経営のリスクにつながるという認識に至ったのです。

 そこで同社のIT企画部は以下の4つの方針を掲げ、SAP S/4HANAに移行することを決断しました。

(1)リアルタイム損益把握の実現
(2)中長期的視野でのIT人材育成
(3)多様なワークスタイル実現を意識した現場視点の最適システム
(4)システムの拡張性・柔軟性を備えた長期安定利用

「当社は8つの事業カンパニーを有し、約100のシステムが稼働しています。また、2011年から2016年にかけて大規模な業務改革(BPR)に取り組んできたこともあり、現有資産を有効活用するためにアドオンをそのまま移行するマイグレーション方式を採用し、大きなBPRをともなわないプロジェクトとして進めることにしました」と伊藤忠商事 IT企画部 全社システム室長の浦上 善一郎氏は語ります。

 一方、経営層に対しては、「経営者視点でのシステム化」の狙いとして、同社の商売の基本である「か(稼ぐ)・け(削る)・ふ(防ぐ)」の徹底、働き方改革の推進、連結経営のさらなる深化を担うシステムとなることを説明したと言います。

 経営会議にはIT企画部と経理部が共同で上程し、業務とシステムの両輪からなるプロジェクトであることを強調。結果、経営判断として次世代に向けた基幹システム刷新が了承されました。

IT企画部長と経理部長の2オーナー体制でプロジェクトを牽引

 伊藤忠商事のプロジェクトは「基盤刷新」と「業務要件」のフェーズに分けて実施されています。

 2016年6月にキックオフ後、基盤刷新プロジェクトでアプリケーション基盤とインフラ基盤の2つを最新化。アプリケーション基盤はSAP ERPをSAP S/4HANAに移行するとともに、COBOLのプログラムで作成した仕訳作成処理のソースコードをSAPシステムの開発で活用されるプログラミング言語 ABAPに移植しました。さらにSAP HANAおよび『SAP Business Objects』を用いて全社統合データ基盤を構築したほか、インフラ基盤は従来のオンプレミス環境から伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)の基幹系特化型クラウドサービス『CUVICmc2」へ移行するなど、基盤刷新フェーズは全社統合データ基盤のリリースも含めて2018年5月に完了しました。

 一方、業務要件プロジェクトでは、連結経営のさらなる深化を実現すべく、連結与信、事業管理などの新機能を始めとして、およそ半期を目途にリリースしてきました。現在、2020年5月に予定されているリアルタイム更新への移行に向け、システム改修が進んでいます。

 プロジェクト体制はIT企画部長と経理部長の2オーナーのもと、基盤刷新と業務要件に分けてさらにサブプロジェクト化。同時に情報の分散化を防ぐため、プロジェクト横断チームを組成して全体の整合性を確保しています。また、PMOを含め各チームは、同社とCTCを中心とするマルチベンダー体制とし、SAP社の専任のテクニカルクオリティマネージャー(TQM)をアサインし、さらに要所で海外の技術者を活用しています。

 伊藤忠商事のプロジェクトの成功要因を、SAPジャパン バイスプレジデント Chief Innovation Officerの首藤聡一郎氏は次のように指摘します。

「IT企画部と経理部による共同上程により役割を一本化し、システムの価値向上を経営層に説明したことにあると思います。DXの推進や新事業の創出のカギは、基幹システムを守る経理側と、デジタル技術に長けたIT側の役割を一本化することにあります」(首藤氏)

全社データ収集基盤を構築し、データ分析の専門組織を立ち上げ

 伊藤忠商事はSAP S/4HANAへの基幹システム移行によって、以下の4つを実現しています。 

(1)CUVICmc2によるリソース利用の最適化
(2)処理時間の高速化
(3)リアルタイム化の要となる全社データ収集基盤の構築
(4)全社統合データ基盤(データレイク)の構築とデータ分析の専門組織BICC(Business Intelligence Competency Center)の始動

 中でもSAP BusinessObjectsを用いて構築した全社統合データベース分析システムと、SAP HANAで構築した全社統合データ基盤(データレイク)は、データ活用・分析の核として次世代ビジネスに重要な役割を果たすことが期待されています。同社ではデータを活用し、ビジネスをより高く打ち上げ、次世代へつなげるツールにしたいという思いをこめて全社統合データベース分析システムを「HANABI」と命名しました。

 BICCを設置した目的は、データ活用・分析リテラシーの全社的な底上げを図るためです。現場からデータ活用や分析に関する相談があれば、BICCの担当者がプロの立場から支援と教育を実施します。「BICCの活動により、全社におけるデータ活用が促進され、現在は現場のユーザー約2,000名がHANABIを使ってデータを分析しています」と浦上氏は説明します。

 SAP S/4HANAへの移行、全社統合データ基盤とHANABIの導入効果は早々に現れました。

 たとえば、アルミビジネスの損益月次分析において、従来は現物売買、為替損益、先物売買のデータを複数のシステムからダウンロードし、手作業で結合・集計して決算分析資料を作成していたため、作業に膨大な時間がかかりミスも発生していました。導入後は、各システムからあらかじめデータを自動で取り込み、HANABIテーブルに集約するだけで、ボタン1つで必要なレポートが出力できます。結果として作業ミスがなくなり、5~6時間を要していた月次のレポート作成時間も5分に短縮しています。

 首藤氏は、伊藤忠商事がデータレイクやHANABIの整備と同時に、データ分析の専門組織BICCを立ち上げたことの重要性を指摘しました。

「一般的にデータの利活用の促進を阻害する要因は、活用の目的(何のために)が不明確なことと、活用スキルや人材の不足にあります。IT部門は、基幹システムの開発段階からこの2つの課題を埋めながら、オペレーションに移行する必要があります。さらに情報活用は、業務を担うすべての人が実施していけるようにすべきです。このような企業文化を醸成していくためには、小さな成功体験を積み重ねる必要があります。これをBICCが牽引し、すでに数千名規模のユーザーがデータ活用・分析を行っている伊藤忠商事の取り組みは、非常に画期的といえます」(首藤氏)

海外拠点は標準機能を活用し、アドオンなしでSAP S/4HANA化へ

 世界63カ国(日本を含む)に約120の拠点を持つ伊藤忠商事では、海外拠点も多くの基幹システムを利用しています。

 アドオンが多くを占める総本社の基幹システムに対して、海外はSAP標準ベースで構築しているのが特徴です。1996年に米国現地法人が初めてSAP ERPを採用し、2002年からは連結経営強化の一環として、米国法人をベースに「海外基本システムG-SAP」を導入。現在24カ国、約50拠点にSAP ERPを展開しています。次のステップとして、SAP ERP(ECC6.0)のSAP S/4HANA化プロジェクトも進行しています。

「海外法人向けの次世代G-SAPは、アドオンを使わない標準ベースで導入しています。キーワードは、さらなる標準化、デジタル化促進、UXの向上、データ基盤、クラウド活用の5つです」(浦上氏)

 一般的に欧米企業は、機能の標準化を推進する傾向にあります。SAPの海外イベントではITを経営にどう活かすか、経営者自らが語る場面を多く見かけるという首藤氏は、「日本と海外では経営者にとって、ITの存在価値が異なるともいえます。『システムは誰のものか?』と問うと、海外の経営者は『経営者のもの』であると答えるのに対し、日本の経営者は『現場の作業効率や生産性を上げるため』と答えます」と、経営におけるITの立ち位置の違いを指摘します。

 これを受けて浦上氏は「当社も含め、近年は日本の経営者の意識も変わり始めています。DXに向かうためには優位性の領域は別として、基本はベストプラクティスを採用しようという意識が高くなっています」と語りました。

インフラ基盤はマルチクラウドで柔軟性を維持

 基幹系を含む大規模システムに、クラウドを活用する企業も増えています。伊藤忠商事は今回のプロジェクトで本社基幹システムをCUVICmc2に移行しましたが、海外もクラウドへのシフトが進んでいます。今後、同社はマルチクラウド化に向けてCUVICmc2とのAPI連携も検討していく方針です。

 一方、SAPもベンダーとしてクラウド、オンプレミス、マルチクラウドの選択肢を利用者に約束することが重要と考えており、クラウド型アプリケーションを提供しながらプロセスの最適化を支援していく考えを示しています。今後に向けて首藤氏は「SAPとしては、AIやRPAといった先端技術をSAP S/4HANAのようなアプリケーションに組み込みながら、お客様のインテリジェンスな業務の実現を目指します」と強調しました。

 対談の締めくくりに、浦上氏は「国内、海外ともにデータ活用を通して新たなビジネスを創出することが共通のテーマです。SAPが新たに展開するエクスペリエンスデータ(Xデータ)を活用していくためにも、オペレーショナルデータ(Oデータ)をSAP S/4HANA上で管理し、IT部門が主導権を取ってDXを牽引していきたいと思います」と展望を語りました。

記事協力:デルテクノロジーズ
記事内にあるクラウドサービスCUVICmc2はデルテクノロジーの技術に支えられています。

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