- 2025/11/17 掲載
なぜ「日本の受験秀才」はAI時代に通用しない…教育が全然違う「米国との致命的な差」(3/3)
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
“米国型”学歴社会との「決定的な違い」
「問題を探し出す重要性」は、社会に出て初めて要求されることではない。勉学の過程でも、大学院に入って学位論文を書くようになると、「問題を捉える」ことがいかに重要かが分かる。論文の成否はテーマの選択で大きく左右されるからだ。つまり、与えられた問題に答えるだけではなく、「問題は何か?」「研究テーマは何か?」を探し出すことが重要な課題になる。
米国では、大学院の教育が重視されている。そのため、大学入学時点の能力だけではなく、その後の大学院での勉学や社会での成果も評価に影響する。米国でも学歴は重要だが、評価される内容が日本とは異なる。
さらに、「再評価の機会」が多いことが決定的な違いだ。転職市場が発達しており、大学卒業後にキャリアやスキルによって評価を高めていくことができる。
そのため、有名大学の卒業生だけが成功するわけではなく、スタートアップや実務スキルで地位を築くケースも多い。社会的評価が多元的であり、年齢や学歴に関係なく「実績」で再挑戦できる。どの大学を卒業したかだけでなく、実績とスキルが重視され、多元的な評価が働く。これらは本人の努力によって、大学卒業後も高めることができる。
つまり問題の核心は、日本では大学入学時点での評価が社会的序列として固定化されてしまい、再評価の機会が少ないことだ。この硬直性こそが、日本型学歴社会の病理の核心である。
日本に必須の「大転換」とは
このような状況を変えるため、日本でもリカレント教育(学び直し)や専門職大学などの新しい学びの仕組みが整いつつある。しかし依然として、「どの大学に入学したかが決定的」という固定観念が根強い。そのため、再訓練や実務実績による社会的再評価が進みにくい。さらに、学び直しへの投資意欲が低く、生産性向上につながりにくい。
求められるのは、「学歴」から「学習歴」「職能」「実績」への転換だ。そのためにはまず、企業の採用方式が新卒一括採用から中途採用へと転換することが求められる。
また、大学名よりも「何を学び、どう社会に生かしているか」を可視化する仕組み(職務経歴ポートフォリオ、スキル認証、AI活用型採用など)を整えることが、「学歴社会から学力社会」への転換点になるだろう。
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