- 2025/12/25 掲載
もはや大卒は負け組に…? トランプ政権が煽る「ブルーカラービリオネア」現象の真相
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
ブルーカラーは「人手不足」、でも大卒は「就職氷河期」
米Newsweek誌によれば、米Z世代の間でブルーカラー職は、「きつい、勤務時間に柔軟性がない、出世の道が限られる」「大卒ほど稼げない」というイメージがある。そのため、ワークライフ・バランスを大切にする若年層からは敬遠されてきた経緯がある。日本でも「3K(きつい、汚い、危険)」という言葉があるように、おおむね同じ傾向にある。米国では結果として、ブルーカラーの仕事の多くは、苦労をいとわない外国人労働者、特に不法移民が引き受けてきた。しかし、トランプ政権の不法移民追放政策でブルーカラー労働者の人材不足が起こったのだった。
こうした状況がある一方で、米国の新卒者は今、就職氷河期とも呼ぶべき厳しい状況に直面している。米労働統計局がまとめた22~27歳の大卒者の失業率は2025年3月に5.7%と、同月の全国平均4.2%と比較しても1.5ポイント高かった(6月には4.8%まで改善)。
また、2025年の5~6月に卒業した新卒者に対する世論調査によると、図1のように1人当たりの求人数の中間値が0.78件まで低下している。2022年には1人当たり1.14件、2023年には1.13件であったことと比較すると、大幅な悪化だ。
さらに米教育ローン大手Sallie Mae(サリー・メイ)によれば、過去5年間に卒業したZ世代の47%が両親と同居している。多額の学生ローンで借金をして大学教育を受けている新卒者は多い。その一方で就職率が低下することで、インフレ高進のために親から独立して家賃を支払ったり、持ち家を購入するのが困難になっているのだ。
こうした中、米NBCニュースが1000人の米国人成人を対象にした10月の世論調査では、半数以上の63%の回答者が「大学教育は元が取れない」と回答した。「アメリカン・ドリーム」実現のために、「大学教育が必須の条件である」と見る人が確実に減少しているのだ。
新卒者の多くが就職できず、一時的に大卒資格を必要としない職に就いて苦境を乗り切ろうとする若者が増加。そこで注目されるのが、ブルーカラー職だ。だがその裏には、トランプ政権の思惑が関係している。
【次ページ】高卒の防水・修理工が「まさかの年収○億円」
人材管理・育成・HRMのおすすめコンテンツ
人材管理・育成・HRMの関連コンテンツ
PR
PR
PR