• 2025/12/14 掲載

「このままじゃ戦いにならない」スイカゲーム生みの親が年200億円企業を築いた逆転劇

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儲かりそうだから、上司に言われたから、なんとなく良さそうだから──そんな動機で動き出すと、必ずどこかで挫折する。「スイカゲーム」開発者の程涛(てい とう)氏によると、大ヒット商品を生み出し、年200億円規模の企業へと成長させる原動力となったのは、popIn創業時に失敗した苦い経験から編み出した“ある思考法”だという。日常の目標達成にも使える、その思考フレームワークの具体的な活用例を、『道具としてのアイデア』を上梓した程氏が教えてくれた。
執筆:issin代表取締役CEO 程 涛

issin代表取締役CEO 程 涛

issin 代表取締役CEO。連続起業家。1982年 中国・河南省生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)卒。2008年 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻の修士在学中に、研究成果のpopInインタフェースを基に、東大のベンチャー向け投資ファンド「東京大学エッジキャピタル(UTEC)」の支援を受けて、東大発ベンチャー popInを創業。2015年 中国IT大手のBaidu(百度)と経営統合。2017年 世界初の照明一体型3 in 1プロジェクター「popIn Aladdin」を開発。4年間でシリーズ累計販売台数25万台を突破し、異例のヒット商品となる。2021年4月 issinを創業。同年6月 popIn Aladdin版「スイカゲーム」を開発。12月にNintendo Switchソフト「スイカゲーム」を発売し、累計1200万DLを突破し大ヒットゲームとなる。2022年4月 日常生活に溶け込む体重計「スマートバスマット」をリリース。『日経トレンディ』(2022年12月号)の「2023年ヒット予測ランキング」で、「ステルス家電」として2位にランキングされる。3年間で10万ユーザーを突破。2022年8月 popIn代表を退任し、issinのビジネスに集中する。

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「スイカゲーム」の構想にも活用した思考フレームワークの実践方法を解説する
(Photo:Koshiro K / Shutterstock.com)

儲かりそう、会社に言われ、断れないから…では長続きしない

 思いが実現しない場合、そこには根本的な原因、共通点があります。

 それは、「形にすること=実現」と考えてしまっていることです。

 たとえば、次のような状態です。

  • 新規事業で、他社の成功事例を真似して売れそうなプランを立ててしまう
  • 同窓会で転職して年収が増えた友人の話を聞き、転職しようと準備を始めてしまう
  • トップやクライアントが「やれ」と言うからとりあえず仕事に取りかかってしまう

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【画像付き記事全文はこちら】
(出典:サイモン・シネック著、栗木さつき訳『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』日本経済新聞出版、261ページ
TED“サイモン シネック:優れたリーダーはどうやって行動を促すか”TED,September 2009,)
 これらは「ゴールデン・サークル」の図(右図参照)で言えば、「WHAT」と「HOW」を行き来している状態。

 「なぜ、実現したいのか、実現しなければいけないのか」という「WHY」の掘り下げが足りていないため、行動の動機がぼんやりしています。

 すると、自分もチームも心から納得しないまま動き出して、途中で熱が冷めたり、ネガティブな意見に惑わされたり、小さなトラブルで挫けたりして、目指した目標を実現できないままに終わってしまうのです。

 だから、実現力のステップ0は「信念を持つ」です。ステップ0「信念を持つ」で最も重視するのは、本質的な方向性を誤らないこと。それが次のステップ1の差別化にもつながります。

 「本質的な方向性を誤らない」とは、自分の人生観、価値観に反した方向の取り組みはしないということ。

 儲かりそうだから、やる。会社に言われたから嫌だけど、始める。強く誘われて断れないから、取り組む。そんなスタートを切ると長続きしません。また、人の邪魔をする人たちは、できない理由を探し、必ずその点を突いてきます。

 しかし、実現する動機を人生観、価値観と照らし合わせたときに違和感がなければ、大丈夫。その方向性は間違っていません。

「あの会社のサービスと何が違う?」に答えられなかった

 進む方向性が定まった後、次のステップとなるのが価値のある差別化です。

 実現しようとしている取り組みは、既存のものとどう違うのか。その違いによってどんな価値を生み出すことができるのか。

 差別化は自分を納得させるためにも、チームの仲間を増やしていくためにも、顧客の心をつかんで事業を成功に導くためにも不可欠なものなのです。

 これを私は最初の事業の立ち上げから数年の間に痛感しました。

 popIn創業時に開発したWeb関連のツールは、収益化が難しく、丸2年間、収益ゼロが続きました。

 悩んだ私は、popInの技術を使いながら、海外で登場した斬新な広告を真似ようと考え始めました。既存の市場で上位にいる会社の手法を日本に合うようにアレンジしたら通用するのではないか、と。

 実際、その発案に興味を持ってくれるクライアントもいました。

 しかし、結局は勝負に出ることができずに終わります。

 理由は、相手がいずれ日本の市場に入っていることが見えていたからです。

 あちらは海外のリーディングカンパニーで、経験もリソースも大きい。

 小さな会社だったpopInではとても戦いになりません。

 何より、「あなたたちの広告サービスは、あの会社のサービスと何が違うのか?」と聞かれたとき、独自性をアピールすることができないことに気づいていたため、信念を持って動き出すことができなかったのです。

 その後、私は事業をピボット(事業の方向転換や路線変更)し、2014年にローンチしたのがネイティブ広告配信プラットフォームの「popIn Discovery」でした。 【次ページ】「WHY」が固まるまでは、手を動さないことが最重要
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