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  • 2020/10/14

ECの“割引”は信用できない? 中国で社会問題化する「殺熟現象」とは

連載:中国イノベーション事情

ECサイトなどのネットサービスが普及する中、自社のサービスを長く利用してくれて、ある程度の信頼関係を構築している消費者、いわゆる“お得意さま”は貴重な存在だ。消費者側に立ってみれば「多少のひいきがあっても良いのでは?」と考えたくもなる。しかし、実際には「お得意さまになるほど損をする」という現象が起き、中国で社会問題化している。その背景には、対岸の火事ではない「会員ビジネスの構造的な問題」がある。

ITジャーナリスト 牧野武文

ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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なぜ、同じECサイトなのに「損する人」「得する人」がいる?
(Photo/Getty Images)


お得意さまをないがしろにする「殺熟」現象とは?

 2018年頃から、中国の消費者の間で「殺熟(シャーシュー)」という言葉が話題になっている。これは「殺熟客」の略で、「お得意さまをないがしろにする」といった意味だ。殺熟とは、「ネットサービスで、長年使っている人の方が、同じ商品の価格が高く表示される現象」を指す。ちなみに、中国語の「殺」という言葉には日本語ほど強い意味はない。

 中国のECサイトでは、もはや「定価」とか「正価」という概念が存在していない。同じ商品であっても、ECサイトによって価格は違うし、人によっても価格が違う。さらに、人によって受けられる優待クーポンが違う。

 ECサイトの商品のページでは、価格表示に消し線が使われ、優待価格が表示される二重価格表示になっているが、この価格を信用している人はいない。なぜなら、11月11日の「独身の日」のような大型セールが近づくと、販売価格がじわじわと上がっていき、割引率を大きく見せるという手法が常態化をしているからだ。

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図1
アリババのECサイト「淘宝網(タオバオ)」のワンピースの商品ページ

 たとえば、図1はアリババが運営するECサイト「淘宝網(タオバオ)」の商品ページだ。販売価格「188元」に消し線が引かれ、「69元」の優待価格が示されている。この店舗を利用するのが初めての場合は、「5元」の割引クーポンが利用でき、さらに同じ店舗で「99元」以上買うと「5元」割引になる。

 加えて、タオバオポイントを利用して購入すると「1.38元」の割引もある。ほとんどパズルのような状態で、一体いくらが適正価格なのか分からなくなる。さらに、殺熟現象により、元の価格自体が人によって異なっているというのだ。

サービス利用者の募る不信感、相次ぐ体験報告

 殺熟が問題になっているのは、サービス利用者の間で「利用頻度や利用年数の高い“お得意さま”ほど高く買わされているのではないか」という不信感があるからだ。自分1人では、表示された価格が高いのか安いのかが分からないため、SNSや掲示板では価格情報を交換することが盛んに行われている。


 そのような掲示板情報によると、PCからあるECサイトにアクセスして、あるDVDが「26.24ドル」と表示された後、ブラウザーのCookie(利用情報などを保存しているファイル)を削除してアクセスし直したところ、同じ商品の価格が「22.74ドル」に下がったという例が紹介されている。

 また、タオバオで、ニューバランスの同じ型のスニーカーが「369元」で売られているが、長年利用している人には「20元」の優待クーポンであるのに、タオバオを使い始めたばかりの人には「75元」の優待クーポンが表示されたという。

 さらに、同じタオバオで「百億補助」と呼ばれるキャンペーンが行われた際にも同様の問題が指摘されている。ある豚バラ肉を購入するためにキャンペーンサイトからアクセスすると、価格が「159元」で、補助が「32元」となり、実質「127元」で購入ができた。今度はキャンペーンサイトからではなく、通常の入り口から入ると、補助がつかないのは当然としても、価格そのものが「168元」と高くなっていたという。

【次ページ】殺熟現象に遭った消費者がとった行動とは?

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