- 2025/11/20 掲載
スタバ完敗…中国事業「売却」の背景、“新王者”ラッキンもやらかした「大失態」とは
消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。
中国の最新技術とそれらが実現させる最新ビジネスをレポートする『中国イノベーション事情』を連載中。
「コーヒーの先生」スタバ、“カフェ激戦区”中国で敗北……
米スターバックスが中国事業会社の60%の株式を香港の投資会社「博裕資本」(Boyu Capital:ボーユーキャピタル)に売却することに合意した。今後はボーユーがスターバックス中国を率いていくことになる。ボーユーは、中国においてドリンクチェーンの蜜雪氷城(MIXUE:ミーシュエ)、ショート動画の快手(クワイショウ)など、地方市場に強い企業に投資をして成功させてきたことから、スターバックスも地方市場の開拓に力を入れて立て直しを図るのではないかと見られている。
近年のスターバックス中国は「停滞」としか言えない状況だった。2023年Q2に国内系の瑞幸珈琲(Luckin Coffee:ラッキンコーヒー)に売上高で抜かれて以来、ラッキンは順調に成長、スターバックスは足踏み状態で、現在では売上高に2倍以上の差がついてしまっている。
さらに、ラッキンの創業チームが再結集して創業した新興カフェチェーン「庫迪」(COTTI COFFEE:コッティコーヒー)には店舗数で抜かれ、蜜雪氷城のサブブランドカフェ「幸運珈」(Lucky Cup:ラッキーカップ)にも年内には店舗数で抜かれる可能性が出てきている。
かつて中国で「コーヒーの先生」と呼ばれたスターバックスは、中国第4位のチェーンにまで沈もうとしている。
なぜ、“天下のスタバ”がこんな事態に?
なぜ、スターバックスの中国事業はここまで停滞したのだろうか。その答えをひと言にまとめれば「ローカライズの失敗」だ。中国の文化や習慣に適応できず、国内系カフェに顧客を奪われ続けた。これは、1999年にスターバックスが中国に進出をした時、スターバックス文化をそのまま持ち込んで受け入れられた成功体験があるために、戦略転換が簡単ではなかったと思われる。
初期に成功したのは、出店場所が北京や上海という大都市に限られていたため、大都市在住の外国人と中国人ホワイトカラーという顧客層のスターバックス文化に対する親和性が高かったからだ。しかし、地方都市に拡大をするにつれ、“スターバックス流”を保ち続けたことが苦戦の要因となっていった。
転換点となったのは、2022年9月に発表した「2025ビジョン」だった。これは「2025年までに中国で300都市9000店舗を展開する」という方針で、地方市場への本格参入を意味した。スターバックスの戦略は「居心地のいいサードプレイス」「高価格帯の本格コーヒー」だが、これが中国の地方市場では受け入れられなかった。 【次ページ】スタバを陥落させた“新王者”ラッキンも…やってしまった同じ失態
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