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  • 2021/03/05 掲載

コロナ危機で「昇給・ボーナス無し」、それでもマンション人気が衰えないワケ

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このところ首都圏の不動産取引が活況を呈している。キーワードとなっているのは「ポストコロナ社会」である。コロナ危機が終息の兆しを見せない中、不動産業界は新しい産業構造を見据え、すでに動き始めているようだ。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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テレワークでオフィス需要は減少しているが、それでも不動産市場は崩れていない…その理由とは?
(Photo/Getty Images)
 

テレワークでオフィス需要減少、それでも不動産市場は下がらない?

 新型コロナウイルスの感染が拡大した当初、不動産市場は総崩れになるという予想が多かった。テレワークへのシフトでオフィス需要が減少し、企業の業績悪化が加わるので、オフィスビルの解約が相次ぐという見立てである。メディアでもテレワークが標準的になったことで都市部に住む必要がなくなり、郊外への転居が進むという報道が相次いだ。

 筆者はコロナ危機直後から、一部企業でオフィス解約という動きが出てくるものの、首都圏の不動産市況全体が悪化する可能性は低いという予想を行っていたが、状況はほぼ筆者の見立て通りに進んでいる。コロナ危機であるにもかかわらず不動産市況が悪化しないのは、コロナ危機による経済的打撃と同時並行で、ポストコロナ社会を見据えた産業構造の転換が進んでいるからである。

 コロナ危機をきっかけにテレワークに移行する企業が増え、オフィス需要が減少しているのは事実である。パーソル総研の調査によると、昨年11月時点でテレワークを実施している正社員の比率は24.7%だった。この数字は4月時点とあまり変わっていないので、第1回目の緊急事態宣言の時にテレワークに移行した社員は、継続してテレワークを行っていると推察される。

 2回目となる緊急事態宣言の発令で多少、テレワーク実施率は上がった可能性が高いが、街中の人出を見る限り、大幅に実施率が上がっているとは思えない。大雑把に言えば、引き続き4分の1の社員がテレワークを実施している状況と考えられ、現時点でテレワークを行っている組織は今後も積極的にこの仕組みを使っていくだろう。そうなると、オフィス需要は以前と比較して減少せざるを得ない。

 このところ電通グループやエイベックスなど著名企業が相次いで本社ビルを売却している。直接的な理由は両社とも業績の悪化だが、テレワークが浸透しており、社員の出社率が低いことも決断を後押しした。富士通のようにコロナ後もテレワークを継続する決断を行い、オフィス面積を半減する方針を打ち出したところもある。

 これらのケースはコロナ危機による業績悪化とテレワークシフトの両方が原因であり、この部分だけを見れば、オフィス需要は一方的に減るように見える。だが不動産市場は意外と柔軟性があり、そう単純な図式にはならない。

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コロナ危機による業績悪化や、テレワーク移行などの影響を受け、オフィス需要は減っていくように思えるが、不動産市場はそう単純な図式にはならない
(Photo/Getty Images)
 

オフィスはすでに玉突きが始まっている

 たしかにオフィス需要だけを見ればある程度のマイナスかもしれないが、その分を新築マンションの建設がカバーすることで市場全体としてはイーブンになる可能性が高い。理由は以下の通りである。

 空室が発生したビルのオーナーは多少割安な家賃を提示することで、より競争力の低いビルからテナントを奪ってくるので、大型ビルに空室は発生しない。つまりテナントの玉突きが発生し、最終的に競争力の低いビルの経営が困難になる。これまでは仮に競争力が低いビルであっても、都心部にある物件の場合、売りに出ることはそうそうなかったが、今年に入ってこうしたビルの売買が活発になっている。つまり不動産市場では、テナントの玉突きを想定した動きが水面下で進んでいるのだ。

 売りに出されたビルは立地条件が良ければ、新しいオフィスビルとしてリニューアルされるだろうが、条件を満たさない物件の大半は新築マンションに変貌する可能性が高い。近年、マンション価格は資材価格の高騰から異様なまでの上昇を見せており、2020年における首都圏の新築マンションの平均販売価格はとうとう6000万円を突破した。

 ここまで高くなってしまうと、もはや普通の庶民には到底手が出ない水準だが、それでも利便性の高い場所のマンション人気は衰える気配を見せない。その理由は、ポストコロナ社会を見据え、消費者がライフプランの見直しを進めているからである。

 終身雇用はすでに過去の遺物となりつつあるが、それでも年齢に応じて昇給するという年功序列型賃金はまだ維持されている。だがコロナ危機をきっかけに希望退職を募ったり、ボーナスや昇給を見送る企業が増えており、年齢に応じた昇給も望めなくなってきた。継続的な昇給が期待できない以上、住宅ローンを組めるうちに組んでおこうという世帯が増えるのは当然のことだろう。

 さらに言えば、今後は年金の減額が予想されるため、多くの世帯が生涯労働を余儀なくされる。定年後の再雇用において今とまったく同じ条件でテレワークができる保証はまったくない。場合によっては現場への出勤を命じられる可能性もあり、将来に対して慎重な人ほど遠距離のマイホームには消極的になる。


 ところがコロナ危機で利便性の高いエリアにおけるマンション供給戸数が減っているため、数少ない物件をめぐって争奪戦となり、不況であるにもかかわらず価格が下がらないのである。

【次ページ】大型のREIT合併が実施される理由

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