NTTデータ、KDDI、日立、JR東が語る「判断の再設計」メソッド、AIとデータどう活用?
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NTTデータ:勤怠管理の改善につながった「行動データ可視化」
同社の情報システム部門全体では、予算削減という厳しい制約の下、レガシーシステム更改における投資対効果(ROI)の説明が困難であるという課題に直面していたと、同社 ITマネジメント室 システム開発担当 部長の高田哲生氏は振り返る。
ITマネジメント室 システム開発担当 部長
高田哲生氏
データは定量的に取得できるが、問いを立てる「課題設定」と、施策前の「KPI設計」を徹底しなければ、具体的な改善策の決め手に欠けるという教訓を得た同社は、ユーザーの行動データの可視化に着手することにした。
「ユーザーの声は言葉だけでなく、行動にも表れる。そう考えPendoを導入しました」(高田氏)
具体的な改善事例として、まず10年以上稼働する勤怠管理システム(スクラッチ開発)が挙げられる。
同事例に携わったNTTデータグループ ITマネジメント室 システム開発担当 課長の江口萌氏は、勤怠申請や確認などで月末には一般ユーザーの約40%が画面を往復しているという操作負荷をデータで裏付け、画面を並列表示するUIへ改修したと振り返る。
「Pendoにより、私たちの想定以上、たとえば月末に50回以上画面往復をしているユーザーもいることを確認できました」(江口氏)
ITマネジメント室 システム開発担当 課長
江口 萌氏
当初は「データが見えれば自走する」と想定したが、実際には課題設定とKPI設計が成否を左右した。そこでPendo社のTAM(テクニカルアカウントマネージャー)を交え、情シスの推進チームがハブとなり各システム担当の業務課題を言語化し、効果検証まで徹底的に伴走する体制を構築した。ノウハウを共有し、設計や実行をサポートする3方向のコミュニケーションが、改善活動の基盤となった。
同社では現在、システム更改や大規模な機能追加の際にも、事前に改善のサイクルを開発プロセスへ組み込む仕組み化を強化しているという。
KDDI:店舗システム改善を支えた「連携体制」とは
KDDIでは、全国に広がるキャリアショップや量販店など、その広範な販売ネットワークにおいて、数万人規模のスタッフが接客・受付用タブレットシステムを日々利用している。
モバイル通信、光回線、電気、スマホ決済のau PAYなど多種多様な商材を扱っている同社だが、サービス拡大に伴うシステムの複雑化と接客時間の長期化という課題に直面していた。店舗運営の多くを代理店が担う同社にとって、タブレットを用いた店頭システムは「社外向けサービス」と同義であり、「説明しなくても使える分かりやすさ」が絶対条件であった。
KDDI 情報システム本部 DXシステム1部 開発3G グループリーダーの中西隆治氏は、従来の店舗システム運用において、「定性的な要望に頼り投資対効果(ROI)が不明確な開発プロセス」、「操作が分からずマニュアルやヘルプデスクへの問い合わせで接客が停滞する課題」、「ポータルにお知らせを載せるだけでは読まれないPull型の情報周知の限界」の3点の課題に悩まされていたと振り返る。
情報システム本部 DXシステム1部 開発3G グループリーダー
中西 隆治氏
その迅速な改善を可能にしたのが、販売現場の運用企画を担うオペレーションサポート部と、システム開発を担う情報システム本部による、強固な「2者連携」の推進体制であったという。
「今まではライトな改修であっても期間とコストがかかり、システムのサポートも追いつきませんでした」(中西氏)
この課題に対し、両部門はPendoをハブに据え、現場から上がった要望を数日~数週間の超短サイクルで直接システムに反映する運用を確立した。
この運用で、中西氏が情報システム部門でシステム化要求の実現と安定稼働を担ったのに対し、販売店からの要望を吸い上げて要件化し、情報システム部門に要求を伝える立場を担ったのが、システム開発本部 オペレーションサポート部 エキスパートの三ツ屋一樹氏だ。
システム開発本部 オペレーションサポート部 エキスパート
三ツ屋 一樹氏
この例では、同プランの加入時の特典であるオプションサービスの登録漏れを防ぐため、店頭登録画面で未加入が選択された際のみ、ピンポイントで加入を促すポップアップガイドを表示。これにより体験の低下と現場の登録ミスを未然に防止した。この対策は追加開発を必要とせず数日で展開可能となり、数百万~数千万円規模のシステム改修費を削減し、数ヶ月の開発期間を劇的に短縮したという。
また、繁忙期である1~3月の学割商戦期には、割引適用に必要な情報の登録忘れを検知してリマインドするガイドを数日で適用。結果として、バックヤードにおける手作業でのリカバリー工数を最大30%も削減することに成功した。
「いかに現場に求められる形でスピード感を持って届けられるか。それが非常に大事だと学んだ事例でした」(三ツ屋氏)
日立製作所:AIエージェント実装の「3ステップ」とは
同社では、自社のIT環境を実験台としてテクノロジーを使いこなし、得られた知見を顧客へ還元する「Customer Zero」を掲げ、従業員体験(EX)向上を目指す「EXEVO Project」を推進している。
利用開始から定着までを10プロセスに分解し、従業員の目線で社内ITサービスの改善サイクルを回す中で、「利用実態やユーザフィードバックの把握」「課題の仮説検証」「ITサービス改善に向けた短期的対策」の全PDCA行程をPendoで実施し、成果を挙げている。さらにその次のステップとして同社が今、挑戦しているのが「Pendo×生成AI」による自律型AIエージェントの実装である。
同社 デジタルシステム&サービス統括本部 IT戦略統括本部 ITイノベーション本部 本部長の勝部聡氏は、AIエージェントの実装について、「一気に自律型ワークフローを開発しようとすると、精度やリスクの壁にぶつかり、実用に耐えません」と振り返る。
デジタルシステム&サービス統括本部 IT戦略統括本部 ITイノベーション本部 本部長
勝部 聡氏
特に、経理や調達といったSOR(記録システム)領域ではコンプライアンスに対する高い正確性と責任が伴うため、完全な自動化は難易度が高い。そこで同社は、アジャイルに効果を刈り取りながらエージェントを進化させる「3ステップアプローチ」に挑戦している。
ステップ1として、画面上にPendoで起動ボタンを配置し「点」としての簡易的なエージェントへのタッチポイントを設置。ステップ2で既存のRPAなどに組み込んで自動化し、ステップ3で分岐点に生成AIを挿入して自律的なフローを実現する戦略だ。これにより、最初から自律型エージェントを目指すウォーターフォール型から、実データに基づくアジャイルな「育てる」プロセスを実現した。
このアプローチにより、AI活用の促進とそれによる業務改善への直接的な効果に手応えを感じていると、Pendoの導入を担当する同社 デジタルシステム&サービス統括本部 IT戦略統括本部 ITイノベーション本部 デジタルトランスフォーメーション推進部 技師の中澤 匠氏は話す。
デジタルシステム&サービス統括本部 IT戦略統括本部 ITイノベーション本部 デジタルトランスフォーメーション推進部 技師
中澤 匠氏
同社におけるPendo活用の第1の事例は、派遣雇い入れシステムへの移行(SAP Fieldglass導入)である。入力画面上に、禁止操作の明示やマニュアルリンク等の59のオンボーディングガイドを展開した。ユーザーの習熟に合わせて利用回数は落ち着き、求人募集画面への到達時間はシステム利用開始時の約半分(1分30秒から42秒)にまで大幅に短縮した。
第2の事例は、セキュリティ強化月間における画面占有ガイドの導入だ。従来のメール周知に加え、画面を覆う強制表示ガイドを採用したところ、これまで未閲覧だった1,000名以上のユーザーがわずか1日で新規に閲覧した。
第3の事例は、前述したAIの活用だ。Workdayを用いて定期的に行われる社員の目標管理において、目標や成果を記入する際の入力支援やチェックをするエージェントをGemini Enterpriseで作成し、そのリンクをPendoで入力画面に配置した。これによりエージェントの存在を知らなかった社員にも一気に活用が拡がり、目標管理における公平性などの質の向上につながった。
「Pendoでの分析は、色々なデータを見ることができる分、きちんと仮説を立てることが最も重要です。何のためにデータを見て、どんなアクションを起こすのかという目的を忘れてはなりません」(中澤氏)
JR東日本:内製化チーム改革で実現した「自社アプリ」改善
同社 マーケティング戦略部 マーケティング戦略・グループ統括ユニット デジタルビジネス統括の阿部健司氏によると、同社では、Suicaをあらゆるビジネスの基盤と位置付け、「Suica Renaissance」という概念のもと、モビリティと生活ソリューションの二軸経営による相乗効果を狙っているという。
「これまでは移動や決済の手段として利用いただいていたSuicaで、より深いサービスを提供できないか、という思いから『Suica Renaissance』と名付けています」(阿部氏)
マーケティング戦略部 マーケティング戦略・グループ統括ユニット デジタルビジネス統括
阿部 健司氏
2014年の当初は、使いにくさからストア評価が星1.9と低迷していたという同アプリ。JR東日本 マーケティング戦略部 マーケティング戦略・グループ統括ユニット マネージャーの安倍孝典氏は「社外のみならず、社内からも『このアプリは何のためにあるんだ』といった声が聞かれました」と話す。
そのため同社は、アプリの人気低迷の原因となっていた「何ができるかわからない」「使いたいときに使えない」「思い込みによる開発」を解決するべく、2019年に開発スタイルを抜本的に変革。ウォーターフォール開発を排し、リーンやユーザー中心設計、XPを融合した「Lean XP」による内製チームを組織した。当初は4名だったチームを現在は18名に拡大。年50回以上のリリース頻度を維持し、ストア評価はApp Storeで4.5、Google Play Storeで4.4へと急成長を遂げたという。
マーケティング戦略部 マーケティング戦略・グループ統括ユニット
マネージャー
安倍 孝典氏
共通基盤が整った同社は、顧客理解のプラットフォームとしてPendoを導入した。期待した第1の要素は「分析コストの低減」だ。操作ログを自動収集することでアプリ改修とリリース待ちのタイムラグを排除し、仮説検証を数週間から即日へと短縮した。
第2の要素は「データの民主化」である。他部署への依頼やデータ受け渡しの調整時間を排し、アプリの移動データと「JRE MALL」の購買データをポータル上で相互に素早く利活用し、迅速な意思決定を可能にした。
第3の要素が「顧客理解の促進」だ。従来の過去データ分析から、アプリの利用をほぼリアルタイムに検知して体験に反映するアプローチへとシフト。アプリの利用状況に応じた情報を配信する実験を推進している。
「移動に関わる体験の向上を目指し、将来的に『JR東日本をつかってよかったね』と言われるリアルな顧客体験につなげていく努力を進めています」(安倍氏)
利用者が自律的に前へ進み、価値を生み出せるような「真の顧客体験」の創出こそが、これからの時代にIT部門が提供すべき最も重要な価値だ。今後はさらにAIを活用し、リアルとデジタルが高度に調和した、心豊かな生活空間を創造していく。
NTTデータ:https://r.sbbit.jp/826/18223pendo1
日立製作所:https://r.sbbit.jp/826/18223pendo2
東日本旅客鉄道:https://r.sbbit.jp/826/18223pendo3