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- 2023/07/07 掲載
分断から変革へ、パナソニック コネクト執行役員が「製造業は今が面白い」と語るワケ
Seizo Trend創刊記念インタビュー
現場最適しても「悪い状態」に戻るワケ
製造業におけるサプライチェーンの重要性が高まっています。サプライチェーンと一口に言ってもその領域は広く、たとえばグローバルでの供給という文脈もあれば、現場における生産性向上という文脈もあります。私の担当領域はその両方です。特に現場という意味では、日本の製造業は「現場をいかに最適化するか」に継続的に取り組んできた歴史があると考えています。100年を超えるパナソニックの歴史の中でも、生産現場の生産性向上は常に命題としてありました。
一方で、「現場の改善」を行ったときに、せっかく改善したプロセスを継続すること、つまり「最善な状態を維持する」ことが難しいという課題があると考えています。
たとえば、業務改善を科学的に分析・遂行するIE(インダストリアルエンジニアリング)であれ、現場を教育する担当者であれ、改善を進めたとしても、しばらくするとまたそれまでの「悪い状態」に戻ってしまうことが多くあります。担当者が取り組みを継続できない、新たなムダが発生してしまうなど「悪い状態」への復元力が働いてしまうのです。
「現場の最適化」という意味で、多くの企業はDXをまだやりきれていない状況だと感じます。我々パナソニックもその取り組みの途上にあります。そして、最善な状態を維持することに、「もう少しIT力を活用すれば良いのでは」とも感じます。
そのため我々パナソニック コネクトの現場改善のための各ソリューションは、「ITやテクノロジーを活用し、さまざまな現場における最適な業務プロセスを維持していく」という考え方が中核にあります。
DXやデジタル化で陥りがちな「PoC地獄」
「デジタル化」や「DX」というのは決して目的ではありません。DXというのはあくまで、現場の働き方を変え、生産性をさらに高めることで企業の価値を高めていくための手段の1つでしかありません。言い換えれば、DXの取り組みは、会社が目指すべき「ゴール」と、そのために具体的に何をしていくのかという「戦略」がなければ効果が出ないということです。
しかし、こうしたゴールや戦略が明確にされていない多くの企業でも、DXに向けた「PoC(概念実証)」の取り組みが進められました。ただそうした企業からは、なかなかその成果を実証できず、PoCで終わってしまうという声が多く聞かれます。こうしたPoCばかりに取り組んで、PoCから次の段階に進めない状況を、私は「PoC地獄」と呼んでいます。
企業価値としてどのような成果を生み出せるのか、といった目的につながらなければまったく意味がありません。だからこそ、ゴールや戦略を明確にする必要があるのです。そうでなければ、結果的にただITソリューションを導入して終わりになってしまいます。
単にITソリューションを導入しただけでは当然現場は変わりません。ITをうまく使いながら業務の可視化、プロセスの標準化といった「現場のプロセス改革」を継続的に推進していくことがDXの目的の1つだと言えるでしょう。 【次ページ】DXの成功を左右する「人材戦略」
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