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  • 2021/11/18 掲載

グローバルライトハウスとは?お手本にすべき「世界の凄い工場90拠点」まるごと解説

連載:デジタル産業構造論

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「グローバルライトハウス」とは何か──。世界経済フォーラムは、世界の工場の中から、各国製造業企業のお手本となるような工場を選定・認定をしており、この認定を受けた最先端工場をグローバルライトハウスと呼ぶ。現在、認定を受けている工場は90に上るが、この大半を中国や欧米企業の工場が占めている。かつて、ものづくり大国と呼ばれた日本の認定数を見ると、厳しい状況にあるが、巻き返しはあるのか。ここでは、グローバルライトハウスが何かを解説するとともに、グローバルライトハウスに認定された工場の特徴から見えてくる、日本のものづくりの課題を解説する。

執筆:JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ 小宮昌人

執筆:JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ 小宮昌人

JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ プリンシパル/イノベーションストラテジスト、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 研究員。

日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所を経て現職。22年8月より官民ファンド産業革新投資機構(JIC)グループのベンチャーキャピタルであるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ(VGI)のプリンシパル/イノベーションストラテジストとして大企業を含む産業全体に対するイノベーション支援、スタートアップ企業の成長・バリューアップ支援、産官学・都市・海外とのエコシステム形成、イノベーションのためのルール形成などに取り組む。また、22年7月より慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 研究員としてメタバース・デジタルツイン・空飛ぶクルマなどの社会実装に向けて都市や企業と連携したプロジェクトベースでの研究や、ラインビルダー・ロボットSIerなどの産業エコシステムの研究を行っている。

専門はデジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム・リカーリング・ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

近著に『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)があり、2022年10月にはメタバース×デジタルツインの産業・都市へのインパクトに関する『メタ産業革命(仮)』(日経BP)を出版予定。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

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お手本とすべき工場として、世界経済フォーラムに認められた最先端の工場「グローバルライトハウス(Global Lighthouse)」は、世界に90ある。日本の工場はいくつ認定を受けているのか? そもそもの認定基準は?(後ほど詳しく解説します)

「グローバルライトハウス」とは?

 「グローバルライトハウス(Global Lighthouse)」とは、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)が、製造業のロールモデル(灯台)となる工場として認定した工場だ。全世界の1000以上の工場から、選定・認定されており、これまで90工場が認定されている。選定基準は主に下記である。

【主な選定基準】
  1. 自動化による生産効率向上
  2. 人材育成や働き方
  3. 企業や業界の持続可能性
  4. 社会や環境へのインパクト

 特に、環境対応やサステナビリティの重要性が高まっており、最新の2021年9月の認定においては、通常のライトハウスとともに、環境対応・持続可能性の観点でのロールモデル工場として「サステナビリティライトハウス」も新たに認定されている。

 これからはデジタル化によるビジネスの高度化・効率化と、環境対応の両立であるエコエフィシェンシー(環境効率)が不可欠とされている。ドイツのIndustry4.0も新たに発表されたVision2030で「持続可能性」をキーコンセプトとして打ち出すとともに、欧州委員会は「持続可能性」「レジリエンス」「人間中心」からなるIndusutry5.0を打ち出している。

 先端ものづくりの領域においても“デジタル”と“環境”が切り離せない関係になってきているのだ。

日本は何個認定されてる? 世界の認定工場の内訳

 グローバルライトハウスの90認定工場の所属国内訳としては、中国が29カ国と圧倒的に多く、米国(9カ国)、ドイツ(5カ国)がそれに次ぐ状況である。また、インダストリー4.0の提唱国であるドイツを中心とした西欧・東欧の欧州は合計では23カ国と多い。

 トルコは4工場と世界4位(フランスと同位)の認定工場数を有し、東南アジア・インドの合計で10工場が認定されるなど、新興国にも認定工場が多いことも特徴だ。

 今まで新興国のものづくりは先進国企業が本社国のマザープラントの生産技術を「移管」する対象であった。しかし、新興国で先端的なライン・ものづくりが生まれ、それが先進国に逆流する流れも生まれてきている。

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図表1:Global Lighthouse認定企業(全90工場)
(出典:公表資料より筆者作成)

 また、産業別に認定工場を見ると、家電・エレクトロニクス分野で25工場、自動車(10工場)などの組立産業や、生活消費財産業(11工場)が多い。インダストリー4.0、製造業のデジタル化は組立産業が起点となっているが、プロセス産業として6工場のオイルガスや、化学・バイオ・製薬・鉄鋼なども含まれてきていることが特徴である。

 加えて、同一企業が複数工場認定を得るカスも増えてきている。7工場のジョンソン&ジョンソンや、4工場のシュナイダー・P&G・フォックスコンなど、優れた生産技術を持つ企業が複数の工場で評価・認定を受けている。

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図表2:認定工場の上位国・産業、複数認定企業
(出典:公表資料より筆者作成)

ハイアール事例、最多認定の「中国」は何が凄い?

 製造業のIT化政策である「中国製造2025」を強力に推進し規模・量のみならず、「製造強国」としての質も含め製造業のリーダーになることを標榜している中国は、他国を圧倒する29工場が認定され圧倒的なプレゼンスを誇っている。

 29工場のうち、中国系企業が14企業、外資系企業が9企業、台湾系企業が6企業となっている。中国は今までの安い人件費と市場の大きさを生かした製造拠点を提供する「世界の工場」の位置付けとしての“製造大国”であった。それが、中国製造2025で掲げられているようにイノベーションを生み他国製造業をリードしていく“製造強国”へ立ち位置が変化していることを表している。


 ものづくりにおいて先端へと変化しつつある中国の動きとして、特に特徴的なのが1984年設立の世界最大規模の家電メーカーであるハイアールの展開である。同社は三洋電機の買収や、GEアプライアンスの買収が日本では知られており技術やノウハウを買っている企業とのイメージも大きいかもしれない。

 しかし、その立ち位置は大きく変わってきており、新たなものづくりのイノベーションを生み、世界に提供する側へ転換している。同社は自社の冷蔵庫など工場(瀋陽、青島)において顧客の機能・デザイン・色などのニーズに合わせた個別生産をデジタル技術・自動化技術を活用して高効率に行う「マスカスタマイゼーション」の仕組みを実現しており、その成果が評価され先述のグローバルライトハウスに認定されている。

 それらの仕組みを世界20カ国の幅広い業界の製造業企業に外販する世界に先駆カたマスカスタマイゼーションプラットフォームとして展開しているのが「COSMOPlat」である。

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図表3:ハイアールのマスカスタマイゼーションプラットフォーム「COSMOPlat」
(出典:公表資料より筆者作成)

認定工場たった2社…日本がロールモデルではなくなった理由

 それでは、ものづくり大国の日本はどのように評価されているのだろうか。日本の製造業はかつて世界を席巻し、トヨタ生産方式をはじめ世界から研究され、ベンチマークされてきた対象であった。

 そうした日本だが、現在のグローバルライトハウス認定工場数は2工場のみである。そのうち1工場が外資系企業のGEヘルスケアの1工場のため、国内の日系企業の工場認定は日立製作所の「おおみか工場」のみとなる。

 今まで日本は、ものづくりにおいて世界の先頭を走っていると考えられていた。デジタル技術の進展に伴い、「灯台」の役割は新興国を含めた他国へ移ってしまったのではないだろうか。

 もちろんグローバルライトハウスが日本のすべての工場を見ているわけではないし、同取り組みへのプロモーションにかかる労力も他国と日本で異なっていると想定され、この結果のみが工場の先端性を示しているものではない。

 しかし、グローバルな機関がロールモデルとして認定する企業のネットワークに日本企業が食い込めていないことは、デジタル化の中でものづくり先端の国としての位置付けを失いつつあることを端的に示す例と言える。

 同様にグローバルライトハウスとともに、世界では先端ものづくりや工場を評価する仕組みや基準が着々と生まれてきている。

 たとえば、シンガポール経済開発庁(EDB)がドイツと連携してSmart Industry Readiness Index(SIRI)を開発し、各企業がインダストリー4.0にどの程度対応できる状態にあるかを評価する指標を提示している。SIRIは世界15カ国でのものづくり企業の評価に活用されており、今後世界経済フォーラムとの連携のもとグローバルでのものづくり評価指標としての浸透を急速に図る。

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図表4:ものづくり評価指標:Smart Industry Readiness Index
(出典:シンガポール経済開発庁より筆者作成)

 これらグローバルでのものづくり評価指標関連の取り組みにも日本企業・機関の姿はない。このままでは世界からより日本のものづくりが評価されない環境が構築され、求心力を更に失ってしまいかねない。これらの指標作りや、これらの認定に対して積極的にアプライや自社の取り組みのプロモーションを図っていくことが求められる。

 ここからは、グローバルライトハウスに日本で唯一認定されている日立製作所の「おおみか工場」の取り組みと特徴を紹介しつつ、日本のものづくりが直面する課題と解決法をまとめて解説する。

【次ページ】日本唯一の認定工場「日立製作所おおみか工場」は何が凄い? そして日本のものづくりの課題とは…?
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7項目のチェックリストを見れば、自社のものづくりの問題点が分かる?(後ほど詳しく解説します)

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