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  • 2023/09/28 掲載

産業用AR市場「年率39%」成長、いち早くいすゞ自動車やエアバスが動く納得の理由

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IKEAの家具ARアプリ『IKEA Place』やスマホゲーム『Pokemon GO』など、一般消費者向けのコンテンツとして利用が進むARテクノロジーだが、少しずつ産業領域での利用も拡大しつつある。特に自動車や航空機産業などで導入が進んでおり、ドイツのバス/トラックメーカーのMANや欧州の飛行機製造メーカーのエアバスがその代表例だ。MANやエアバスは、AR技術を何に活用しているのだろうか。
執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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MANやエアバスはAR技術を使い製造現場に変革を起こしている。具体的にどのような取り組みを進めているのだろうか?
(Photo:vaalaa /Shutterstock.com)

製造業の海外直接投資が急拡大、どれだけ伸びてる?

 ウクライナ情勢、脱中国などパンデミックをきっかけとする世界情勢の大きな変化は、米国や欧米の製造業にも大きな変容をもたらしている。変化の1つは、サプライチェーンリスク軽減を目指した、自国における製造業投資の拡大だ。

 たとえば米国では、パンデミックや米中貿易戦争を機に、超党派によるインフラ法、CHIPS・サイエンス法、インフレ削減法など国内の製造業投資を促進するさまざまな枠組みが導入された。

 米国政府の2023年8月23日の発表によると、現在これら一連の枠組みによる効果があらわれ始めている。米国では、製造業の海外直接投資(FDI)は、この数年減少傾向にあったが、2022年に53億ドルと前年比では247%増、約2.5倍の規模に拡大したのだ。米国における製造業FDIは、2015年に約40億ドルだったが、その後数年間は30億ドル前後に縮小、2020年には25億ドル、2021年は20億ドルを下回る水準まで下落していた。

 製造業と非製造業を含めたトータルFDIに占める製造業の割合も顕著に増加している。トータルFDIに占める製造業の割合は、2014年に19%、2020年に15%、2016年に19%などと、20%を下回る状態が続き、2019年に40%を記録するものの、2020年に36%、2021年には17%まで下げていた。しかし、2022年には、トータルFDIに占める製造業の割合は66%に跳ね上がった。特に投資が活発な分野は、コンピュータおよび電子製品であり、ハイテク製造投資が拡大していることが示されている。

 大西洋を隔てた欧州でも、米国と同様にハイテク製造投資を推進する枠組みが整備されている。

 2023年4月の報道によると、欧州評議会と欧州議会は、EU予算として36億ドルを投じ、437億ドルの民間投資を呼び込み、域内の半導体製造能力を拡大することで合意した。2030年までに、世界半導体市場における欧州のシェアを10%から20%に拡大するという大胆な目標を掲げている。

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欧米で、製造業への投資が加速している。どの程度、伸びているのだろうか?
(Photo/Shutterstock.com)

製造業の大問題、なぜ「AR」が解決策になる?

 米国と欧州では、ハイテク製造投資が活発化しているのは明白であるが、大きな課題も存在する。それは、製造業における熟練労働者不足やスキルギャップの問題だ。コンピュータ、半導体に加え、電気自動車や航空機など複雑なハイテクプロダクト製造を担える人材の供給が十分ではなく、人材不足問題は今後さらに深刻化する可能性が指摘されている。

 たとえばデロイトの試算によると、2030年の米国製造業では、埋まらない求人数が210万件に達し、その経済損失額は2030年単年で1兆ドルに上る可能性があるという。

 こうした状況下、米国や欧州の製造産業で注目を集めているのがARテクノロジーだ。

 測定精度の向上、AIによる画像認識精度の向上、ウェアラブルデバイスの性能向上など、この数年ARをとりまく技術要素の進化が著しく、製造業でも活用するケースが増えつつある。

 エンタープライズ向けのARグラス/ソリューションを開発するVuzixの創業者兼CEOであるポール・トラバース氏は、Manufacturing Digitalの取材で、AR技術自体の進化に加え、AI技術との統合により、製造業で大きな変革が起こりつつあると指摘している。

 同氏は、まずARに関して、同テクノロジーが製造業においてトレーニングと開発のためのインタラクティブなプラットフォームとして機能し、従業員のスキル・知識アップを促進できると述べている。

 たとえば、新人が組み立て作業を担当する場合、ARヘッドセットを装着することで、部品を組み立てる方法をステップバイステップの視覚オーバーレイガイドで学ぶことが可能となる。この方法では、実際に作業を行いながら学習できるため、読むだけ/聞くだけの学習プロセスに比べ、知識・スキル開発の効率を大幅に改善することが可能になるという。

 これにAIが加わることで、ARの価値は飛躍的に高まる。AIを活用することで、トレーニングプロセスのパーソナライゼーションが可能になるからだ。AIアルゴリズムは、学習者の進捗をリアルタイムに分析し、弱点領域を特定、学習者の理解度に合わせてAR学習コンテンツを調整することができる。また、学習だけでなく、リアルタイムのパフォーマンス分析も可能で、スーパーバイザーやトレーナーによる直接フィードバックにより、パフォーマンス改善も期待できる。

 トラバース氏は、上記に加え、ARとAIの組み合わせは、予測メンテナンスや安全性の改善にも寄与すると指摘している。

 AIが機械/システムの障害や故障の予測を行い、それをARディスプレイにオーバーレイすることができ、作業員は機械の保守・修理においてダウンタイムを減少させつつ、生産性を向上することができる。また、ARグラス/ヘッドセットであれば、必然的にハンズフリーとなるため、安全性も向上すると述べている。 【次ページ】MAN・エアバスのARを使った「製造現場」のスゴイ改革

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