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- 2024/05/13 掲載
メタの新OS「Meta Horizon OS」開放、対アップルだけでなく対グーグルでも重要なワケ
連載:根岸智幸のメタバースウォッチ
そもそもXR市場に将来はあるのか?
その一方で、メタのAR/VR部門であるReality Labは、Questシリーズの売上が好調で、2024年1月~3月期は前年同期から30%の売上増となったと発表した。
ただし、赤字はまだ大きく、マーク・ザッカーバーグ氏は2030年代まで利益は出ないだろうとしている。とはいえ、メタは巨大な利益を稼ぎ続ける限り、Reality Labへの投資を継続していく考えだ。
若年層向けで人気のオンラインゲームプラットフォームのRobloxがメタとの連携を発表し、QuestからRobloxに入れるようになったのは2023年のこと。
RobloxのDAU(デイリーアクティブユーザー)は6600万人にのぼる。アクティブ利用率も、23年秋の31%から24年春には34%に増えた。Robloxをプレイしたことがない10代は22%で、23年秋の24%から減少しRobloxは若者世代の常識になりつつある。
米国1000万人、日本30万人と言われるVRゲーム市場は、10年前のモバイルアプリやSteamのような状態だという。10年後、米国のZ世代やα世代が社会を動かし始めたときには、XRや空間コンピューティング、メタバースが当たり前になっていても不思議ではない。
だからこそ、メタやアップルは次世代コンピューティングプラットフォームとしてのXR領域の覇権を狙って大金を投じて開発を続けているのだろう。
XR機器普及のカギとなるvisionOSのUI
本題に戻ろう。VR/MRヘッドセットやARグラスなど、XR機器の用途は4つに分かれると筆者は考えている。ゲーム、ソーシャル、個人生産性、組織生産性だ。利用用途をtoB/toCとパーソナル/コラボレーションの2軸四象限に分類した。ゲームとソーシャルはtoCで、個人生産性と組織生産性はtoBだ。また、ゲームと個人生産性はパーソナルで、ソーシャルと組織生産性は複数人によるコラボレーションとなる。
この4つの分野はすべて実用化されており、それぞれ産業として成長しつつあり、2030年代には今よりもずっと当たり前になっているだろう。
しかし、本格的な成長と普及のためには、ハード的には高性能化と低価格化が進み、ソフト面ではアプリの拡大とUI/UXの改善と統一が重要だ。
特にUI/UXの整備はカギとなる。昔は一部のマニアや専門家しか使いこなせなかったコンピューターを、今では途上国の子供でさえ使いこなせるようになったのは、優れたUI/UXが整備されたからだ。
そこで大きな役割を果たしてきたのがアップルだ。マウスとウィンドウによるGUI(グラフィックスユーザーインターフェイス)はアップルの発明ではないが、シンプルで直感的な操作系を整備してサードパーティのアプリまで統一できたのは1984年のMacが最初で、Windowsその他のPCのUIはこの優れたUIととてもよく似たものになった。
スマートフォンもアップルの発明ではないが、誰でも使えるシンプルで直感的なUIになったのは2007年のiPhoneからで、Androidはそれを取り入れた。
PC、スマホに続く第3のIT機器として2016年以降にさまざまなXRデバイスが現れ、Questシリーズは累計2000万台以上売り上げた。しかし、現在のQuestのUIについては(やや厳しい意見かもしれないが)1980年代のMS-DOSと同じだ。QuestでXRアプリを切り替えたいとき、現在のXRアプリを終了して目的のアプリを立ち上げ直す。つまりMS-DOSと同じシングルタスクOSだ。OSはアプリランチャーでしかなく、UIはアプリごとに異なる。
メタは2Dアプリの限定的なマルチタスク(最大3つまで)をうたっているが、MS-DOSでも限定的マルチタスクを実現する「常駐アプリ」はあった。
この状況に一石を投じたのがVision Proだ。MacOSは操作画面を、事務机を模した「デスクトップメタファー」でマルチウィンドウとマウスによるUIのルールを定めた。
visionOSの「空間コンピューティング」は、現実空間の上に「共有スペース(Shared space)」を重ねて、複数の「ウィンドウ」や「ボリューム」(3Dオブジェクトに特化した入れ物)を配置して、視線とハンドトラッキングで操作するUIを提案した。
すなわち、visionOSはマルチウィンドウのマルチタスクOSなのだ(もちろん映画鑑賞やゲームなどのための没入モードも用意されている)。
この仕組みは、iPhoneやiPad用のアプリを共有スペースのウィンドウ内で動作させることが可能で、アップルの豊富なモバイル2Dアプリ資産を活かせる点でも秀逸だ。
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