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- 2024/11/11 掲載
メタのARグラス「Orion」がヤバすぎる。生成AI×メタバースで何が変わるのか?
メタのメタバース構想、ARグラスで息を吹き返すか
メタがメタバースへのコミットメントを示すため、フェイスブックから現在の社名に変更して約3年経過した。当初、ザッカーバーグCEOはVRヘッドセットによるメタバース変革を構想していたが、その構想は未だ実現していない。メタは2014年に20億ドルでオキュラスを買収して以来、AR(拡張現実)およびVRハードウェアとソフトウェアを手がけるReality Labs部門に630億ドル以上を投じてきた。しかし、その成果は乏しく、Reality Labsの2024年第2四半期の売上高はわずか3億5,300万ドルと、全社売上高の1%にも満たなかった。
同期のVRおよびARヘッドセットの世界出荷台数も、前年同期比約28%減の110万台に留まるなど、市場全体の盛り上がりも欠ける状況にある。
VRヘッドセットによるメタバース構想が頓挫したように見える中、メタは別のアプローチで仮想空間と現実世界を融合させる戦略を推進している。その中心となるのが、メガネで現実を拡張する「スマートグラス」だ。
Ray-Banとのパートナーシップによる第2世代スマートグラスは、2023年9月の発売以来、予想を上回る成功を収めている。
カメラ品質の向上、バッテリー寿命の改善、AI音声アシスタントの搭載などの改良が施されたこのスマートグラスは、2023年の年末商戦期にTikTokでバイラルヒットとなった。市場調査会社IDCによると、発売から3四半期で73万台以上を販売したという。
この成功を受け、メタはLuxotticaとのパートナーシップを延長し、2024年の年末商戦に向けてより高機能な第3世代モデルの発売を計画。新モデルはレンズの1つに小型ディスプレイが搭載されると報じられている。
さらに、メタは約10年の開発期間を経て、次世代ARグラス「Orion」のプロトタイプを発表。この発表は、社内外で大きな反響を呼び、プロトタイプを実際に利用した人々からもかなり高い評価を与えている。
たとえば、テックメディアThe Vergeのアレックス・ヒース氏は、ザッカーバーグCEOとOrion上でPongゲームをプレイした際、「ほとんどラグを感じなかった」と報告している。
Meta Connect 2024で明らかに、AI駆動のメタバース構想全貌
メタはこの1年、生成AI関連の取り組みに没頭してきた。こうしたAIの取り組みがメタバース戦略にどのように生かされるのかが注目されるところ。2024年9月に実施されたイベントMeta Connectで、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、人工知能(AI)を融合させたメタバース戦略の全貌が語られた。ザッカーバーグCEOは、これらの技術が単なる未来の構想ではなく、日常生活に溶け込む現実となるビジョンを提示。ハードウェア、AI統合、新規パートナーシップを通じて、メタはAI駆動の没入型メタバースの基盤構築に乗り出しているという。
特にAIは、インテリジェントな仮想世界を構築する上で中核的な役割を担う。メタのビジョンは、ユーザーの相互作用から学習し、よりパーソナライズされた体験を提供する適応型かつ応答性の高い空間を作り出すことにある。AIを仮想世界に組み込むことで、メタバースを単なる社交やゲームの場ではなく、学習、仕事、個人の成長のハブにすることを目指す。
またメタバース内における仮想アシスタントの構築においてもAIが重要な役割を担う。タスク実行、仮想空間ガイド、パーソナライズ、レコメンドなどを実行する生成AI駆動の仮想アシスタントを構築することで、より直感的な仮想世界を構築するという。
ハードウェア面では、Ray-Banスマートグラスの進化がメタバース戦略の重要な一歩になる。
2024年版のスマートグラスは、カメラ機能の向上、音声コントロールの改善、AIとの統合を特徴とし、ARをより身近で実用的なものにするというメタの戦略を体現。ザッカーバーグCEOは、これらのスマートグラスが現在のARと、より高度な混合現実体験を提供する「Orion」ARグラスのような将来のデバイスとの橋渡し役になると強調している。
Orion ARグラスは、メタのメタバース構想における次世代デバイスとして位置付けられている。デジタルオブジェクトを現実世界に重ね合わせることができるこれらのグラスを通じて、生産性、コミュニケーション、エンターテインメント体験を強化するのが狙いだ。
さらに、ソーシャル、ビジネス、クリエイティブ産業にまたがるOrionアプリケーションの提供により、ARをスマートフォン並に普及させる野望も明らかにされた。
VRヘッドセット「Meta Quest 4」も、メタバース戦略の重要な要素だ。Quest 4は単なるゲーミングデバイスではなく、フィットネスや生産性向上のための多目的ツールとして位置付けられている。
フィットネストラッキング機能やウェルネスアプリの充実により、エンターテインメント以外のユースケースを拡充、また仮想会議やリモートコラボレーションを強化する新機能の追加により、生産性ツールとしても存在感を高める計画だ。 【次ページ】メタの次世代ARグラス「Orion」とは?
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