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  • 2024/03/18 掲載

3D設計ソフト先駆者「ダッソー・システムズ」、次に目指す“製造工程の未来”が面白い

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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フランスの大手ソフトウェア企業のダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)は、3D設計の思想を世の中に普及させ、その後も「DMU(デジタル・モックアップ)」や「PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)」などのソリューションを提供し、設計から製造、顧客接点まで、エンジニアリングチェーンをつぐ製造業向けソリューションを提供してきました。そんな3D設計に基づくモノづくりを牽引してきたダッソー・システムズは今、何を考えているのでしょうか。同社の戦略から3D設計の最新トレンドを探ります。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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3D設計ソフトの先駆者「ダッソー・システムズ」が次に目指す“製造工程の未来”とは
(写真:ロイター/アフロ)

ダッソー・システムズとは

 ダッソー・システムズは1981年に設立され、当時から一貫して3Dを前面に押し出した製品を提供しています。関連会社には3D設計(CAD)ソフトウェア、解析ソフトウェア、製品データ管理用ソフトウェアの開発および販売を行うSOLIDWORKSなどがあります。

 ダッソー・システムズの母体は「ミラージュ」などの航空機を製造するダッソー・アビアシオン(Dassault Aviation)であり、そのIT部門がスピンオフして作られた会社です。

 航空機の風洞(固定した模型の周りに空気を流し、大気中を飛んでいる状態を模擬し、その模型に働く力やその周りの風の流れを計測する試験設備)のモデル開発においては、設計の段階から3次元で表現する必要があり、それを実現する「3D設計の会社」として設立されています。

 ダッソー・システムズは、3D設計(CAD)ソフトウェアである「CATIA(キャティア)」を1981年に発表し、その後、コンピューター上での試作モデルの作成や検証のためのソリューションである「DMU(デジタル・モックアップ)」の提供を開始しています。当時、ボーイングが開発していた「ボーイング777」はダッソー・システムズのテクノロジーを使用して設計された最初の航空機です。

 その後、次の段階として、「PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)」を推進します。製品は設計だけでは実現できません。製造も含めてプロダクトライフサイクル全般で3Dモデルを活用する取り組みを以降、同社は推進しています。

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成長に向けダッソー・システムズが買収してきた企業とは?
(Photo/Getty Images)

ダッソー・システムズの成長戦略、買収した企業とは?

 ダッソー・システムズは、自社のソリューションの拡大を実現するためにソリューションベンダーを継続的に買収し、顧客業界ごとにマッピングをしながら事業展開をはかっています。

 また、顧客提供時に得たケイパビリティを、買収した企業のソリューションを自社ソリューションに反映をし、カスタマイズによって顧客がバージョンアップの際の制約を受けないように配慮しながら自社製品の機能強化も進めています。

 たとえば、同社は2010年にフランスの組込みシステム・ソリューションベンダーであるGeensoftを買収したほか、2007年には英国ICEM(スタイリング、高品質サーフェスモデリング、レンダリング・ソリューションのリーディング・プロバイダーであり、自動車業界においては、圧倒的なシェアを持つ)を買収し、CATIAブランドに統合するなど、複数のソリューションベンダーを買収し、CATIAブランドに統合しています。

 1998年には、IBMのProduct Data Management(PDM)事業を買収し、コラボレーションソリューションである「ENOVIA(エノビア)」ブランドを設立し、その後、複数のソリューションベンダーを買収し、ENOVIAブランドに統合することで、BOM管理、プロジェクト管理、要件管理などCADデータを取り巻くさまざまな用途のデータをつなげて一元管理することなどを可能としています。

 2000年にはDeneb、Safework、DELTAを買収・統合し、製造・オペレーション計画・最適化ソリューションである「DELMIA」ブランドを設立し、その後、複数のソリューションベンダーを買収し、DELMIAブランドに統合することで、生産オペレーション最適化の支援、工程間の連携、モデル化、最適化、実行などを可能にしています。

 2005年には、Abaqusを買収し、シミュレーションソリューションである「SIMULIA(シムリア)」ブランドを設立し、その後、複数のソリューションベンダーを買収し、SIMULIAブランドに統合することで、設計プロセスと連携した性能評価から最先端の研究を支える超大規模・複雑シミュレーションまで。リアリスティック・シミュレーション機能を使用した、製品の実稼働検証などを可能にしています。

 最近では、2018年にモデルベースのシステムズ・エンジニアリング、ソフトウェア アーキテクチャやビジネス・プロセスのモデリング ソリューションで業界をリードするNo Magicを買収し、システムズ・エンジニアリングの裾野を広げ、「3DEXPERIENCEプラットフォーム」の用途を航空宇宙、モビリティ、ハイテク各業界の組込みシステム設計全般に拡大しています。

 2022年には、フランスのARソリューションベンダーであるDiotaを買収しています。これにより、同社にはバーチャルツイン、PLM(BOM)、MES、ARなどのソリューションが揃い、これらを組み合わせ、エンジニアリングチェーン上で顧客の顧客経験価値を高めるユースケースが実現可能になったとしています。 【次ページ】ダッソー・システムズが「顧客経験」を重視する理由

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