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- 2023/12/14 掲載
EVや気候変動で電力不足…再エネは“破滅”への第一歩?「火力発電」支持が爆増のワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
大寒波で電力供給がストップ…
近年のテキサス州では、大寒波や猛暑による電力供給の不安定化、さらに寒さや暑さをしのぐための暖冷房需要の急増が、州当局や電力企業にとっての喫緊の課題となっている。まず2021年2月に、連日の気温がセ氏マイナス10度という記録的な寒波で、暖房のための電力需要が急増。発電インフラがこれに追い付けず、450万戸以上の住宅や多数の事業所が大規模な停電に見舞われ、復旧に数日間を要した。停電や凍結による水道管破裂によって飲料水が止まり、さらに暖がとれないことで250人近くが亡くなった。損害は最大見積もりで2,000億ドル(約30兆円)近くにも上り、甚大な惨事となった。
このように被害規模が大きくなったのは、テキサス州の温暖な気候から住宅の断熱が十分でないことによることが大きい。そのため、寒波が襲った際に、非効率な電力ヒーターの利用が増加し、電力需要ははね上がった。
さらに州当局が掲げる電力自給で他州との電力相互融通が限られる中、豊富な地元産の天然ガスを使う火力発電所の機器・タービンが凍結し、発電不能に陥ったことも理由として挙げられる。一部停電により、発電所向けパイプラインにガスを送り込むコンプレッサーの一部がストップするなどで、ついには数日間にわたる全面停電となった。
猛暑日には「最大41%」を再エネで供給
そして2023年の夏。気温がカ氏100度(セ氏38度)を超える記録的な猛暑が州内で2カ月近く続いたことで、冷房を中心に電力需要が飛躍的に伸びた(図1)。州内電力の9割を供給する独立系統運用機関(ISO)であるテキサス電気信頼性評議会(ERCOT)によれば、過去のピーク電力需要のトップ10の記録が、ことごとく破られた。
ところが、2021年の大寒波の際とは違い、計画停電や予告なしの大停電は起こらなかった。なぜか。テキサス大学ウェバー・エネルギー研究所のジョシュア・ローズ研究員は、「2022年と比較して、テキサス州では太陽光パネルの数が倍増しており、照り付ける太陽光が冷房需要を支えたからだ」との見解を示した。
たとえば、2023年8月4日の総電力使用量における風力と太陽光を合わせた再生可能エネルギーの割合は14~41%で推移した(図2)。
エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の分析によれば、太陽光のみを見た場合、6月15日から9月15日の電力使用量が年間で最も大きくなる期間において、平均で全体の13.8%を安定してまかなえたという。
少なくとも猛暑の電力需要に関しては、太陽光と風力の貢献で停電を回避できることが証明されたのだ。こうしてテキサス州は、2021年の寒波と2023年の猛暑を通して、天然ガス火力発電の脆弱性と、再エネの高い信頼性に関する教訓を学んだ。
それなら、これからの電力供給安定のために、再エネの割合をさらに増やしてゆくべきではないか。ERCOTの広報担当者も「ピーク時における再エネへの依存を増やしてゆく」との方針を示している。しかし、テキサス州民は2023年11月の住民投票で興味深い選択を行った。
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