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- 2024/02/01 掲載
能登半島地震でも大活躍の「物流事業者」、物資輸送に奮闘する「苦闘と功労」の舞台裏
連載:「日本の物流現場から」
前編はこちら(この記事は後編です)
能登半島地震で活躍する「陸海の物資輸送」
大規模災害発生時における緊急物資輸送は、以下に分類される。能登半島地震における状況(2024年1月19日時点)と合わせて紹介する。- 1次輸送:全国から県が設ける1次集積拠点までの輸送を担う。
能登半島地震では、食料、飲料水、毛布、ダンボールベッド、ブルーシート、衛生用品などを、プッシュ型支援によって輸送。
物資供給事業者が輸送手段を確保するのが原則だが、できない場合は全日本トラック協会経由で輸送手段を手配している。
なお、1月9日からは県の要請によって、1次集積拠点における荷さばきや物資管理についてはヤマト運輸が協力している。 - 2次輸送:1次集積拠点から市町が設ける2次集積拠点までの輸送を担う。
能登半島地震を含め、自衛隊のほか、自治体からの要請に応じた県トラック協会が対応。 - 3次輸送:2次集積拠点から各避難所への輸送を担う。
能登半島地震では主として、市町の職員や自衛隊が、クルマや徒歩で対応するほか、西濃運輸(珠洲市)、日本通運(輪島市)、ヤマト運輸(輪島市)、佐川急便(能登町、七尾市)、石川県トラック協会(志賀町、七尾市)、トヨタ自動車(志賀町)が協力中。
また孤立する能登市内の避難所への輸送は、ドローン輸送を実施。
また、JR貨物や海上輸送も活躍している。
「大規模災害時においては、線路が損傷する鉄道輸送は役に立たない」、だから「モーダルシフトにはリスクが多い」と、「物流の2024年問題」に絡めて主張する人がいるが、これは正確ではない。
実際、東日本大震災では、1月18日から震災発生の1週間後である3月18日まで、1日当たりタンクローリー換算で約130台分の石油輸送を行っている(盛岡の備蓄タンクへ約70台/日、郡山の備蓄タンクへ約60台/日。それぞれ根岸〈神奈川県横浜市〉が発地)。実はそれまで、JR貨物では1000キロメートルを超える石油輸送を行ったことがなかったが、先例を覆して、東日本大震災では実施された。
海上輸送においても、以下のように多くの船舶が能登半島地震での物資輸送などで活躍している。
- 「東駿丸」(コーウン・マリン保有、オペレーションは東ソー物流):能登半島地震では、石川県七尾市への緊急物資輸送を実施。
- 「フェリー粟国」(和幸船舶保有、能登半島地震では日本財団がチャーター):燃料や発電機などを輪島市および玖珠市に輸送するほか、現在追加して支援船舶の確保を行っているところである。
- 貨客船「はくおう」(高速マリン・トランスポート保有、防衛省がチャーター):熊本地震でも活躍。現在、七尾市へ入港、被災者に対して入浴や食事を提供している。
- 高速フェリー船「ナッチャンWorld」(高速マリン・トランスポート保有、防衛省がチャーター):被災地に派遣された国と県内外の自治体職員が、情報収集と共有を行う災害対策拠点として活用されている。
このように、ガントリークレーンなどの港湾設備が災害によって損傷しても、岸壁が無事(あるいは軽微な損傷)であれば接岸可能なフェリーやRO-RO船(注)は、道路の寸断部や渋滞を避けて、被災地に支援車両やトラックを直接輸送できる手段として、過去の大規模災害発生時にも活躍してきた。
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