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- 2024/10/21 掲載
石川県の町工場「職人が教えない職場」から大激変、「若手自ら考え仕事する」仕掛け
なぜ技術継承はうまくいかないのか? 根深い4つの課題
茨城県つくば市のAIスタートアップ企業であるLIGHTzは、技術継承DXの技術家集団として、大手製造業出身の知見を持つメンバーが在籍する。同社 デジタルインダストリー事業本部 取締役 COOの雲宝 広貴氏は、これまでの技術継承について「背中を見て覚えるやり方が主流だった」と話し、その上で、継承がうまくいかない理由として4つのポイントを挙げる。
1つ目は「若手人材不足や早期退職」で、若手人材の採用が難しい状況に加え「背中を見て学ぶ」指導法が時代に合わず、さらなる若手離れを引き起こすものだ。
2つ目は「ベテランの作業負荷」の問題で、OJT主体の教育では教える側も負荷が高く、稼ぎ頭のベテラン作業員の生産性低下によって教育に二の足を踏んでしまうものだ。
3つ目は「勘やコツに頼ったOJT」だ。技術やノウハウが言語化、体系化されていないため伝えるのが難しく、教育に時間がかかる問題で、4つ目が「技術継承に対する優位性の低さ」である。技術継承は重要であるとの共通認識はあるものの、投資対象としては緊急度が低いく後回しにされがちなのだ。
技術継承のキーテクノロジーとなるAI活用
こうした課題に対し、LIGHTzが技術継承のキーテクノロジーに掲げるのが「BrainModel」(ブレインモデル)だ。これは、人の頭の中の思考ネットワークを可視化、デジタル化したもので、「インプットからアウトプットに至るプロセスを、自然言語AIや生成AIを活用して技術継承に活用するアプローチのこと」(雲宝氏)だ。具体的には、大きく2つのアプローチがある。
1つは「汎知化(はんちか)」と呼ばれる、暗黙知の可視化・言語化のことだ。同社が擁する製造業出身者のコンサルタントが熟練者へのヒアリングを行い、「独自の手法やツール、フレームワークなどを用いて、暗黙知を汎用(はんよう)的な知見に可視化、言語化していくプロセスだ」と雲宝氏は説明する。
2つ目は「ソリューションによる業務支援」だ。汎知化に加え、アウトプットされたデータを、それぞれの業務に適したソリューションに実装して業務支援を行うことである。
コンサルティングとテクノロジーによる2本柱によって技術継承を行うことが、LIGHTzの技術継承のアプローチということになる。特に、汎知化のプロセスで特に同社が重視しているのが「汎知化コンサルティング」だ。
熟練者の頭の中の思考は複雑に絡み合っている。これを同社のコンサルティングがヒアリングと独自の手法を用いてインプット、プロセス、アウトプットの情報に分解、抽出、整理をしていく。雲宝氏は「中でも分解・整理が最も重要なポイントだ」とする。
熟達者は普段、当たり前にノウハウを使って仕事をしているため、自らノウハウを言語化するのが難しい。これをどういった粒度で抽出するか、また、抽出後に、どのような切り口で整理していくかという点に「汎知化のノウハウがある」ということだ。
こうした汎知化がより効果を発揮する領域は、企業における研究開発や企画、設計、生産・設備保全といった領域だ。特に、多くの製造業で課題を持っているのが「少量・多品種生産における技術継承」だ。
少量・多品種生産ゆえノウハウ可視化の対象である設備やパターン、ルールなどのバリエーションが多く、「すべて可視化、言語化することが難しい」と雲宝氏は話す。
では、この点をどのように解決したら良いのだろうか。 【次ページ】ノウハウをすべて可視化、言語化するには?
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