• 2025/08/15 掲載

「建設業の長期ビジョン2.0」徹底解説、ただの理想か現実か? 現場に必須「行動4点」(2/2)

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【必読】建設現場が“今すぐ”取り組むべき「行動4点」

 建設業界は現在、長期ビジョン2.0が描く未来に向けて、歩みを進めてはいるものの、現実としては道半ばと言える状況にいます。デジタル施工やCCUSの導入は一部で進展しているものの、技能労働者不足や発注者優位の構造、ダンピングの常態化といった課題は依然として根強く残っています。

 また、若年層や外国人材の確保も思うように進まず、職場環境や企業文化の改善も十分とは言えません。技術革新と同時に、業界全体の意識改革と社会的評価の向上が急務です。

 筆者はこのビジョンに込められた理想に共感しつつも、実現のためには構造改革と意識改革の両方が必要だと感じています(見解については、一部、長期ビジョン2.0でも触れられておりますが、筆者の著書などを通じて、日々発信をしている内容です)。具体的な内容について4点を解説します。

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現場目線で考える、建設業が取り組むべきポイント4点
(編集部作成)

1.発注者との関係再構築が不可欠
 現在の建設業界では、依然として発注者側が強い立場にあり、特に中小の建設会社や下請業者は価格交渉の余地が少なく、不利な条件を受け入れざるを得ない状況にあります。この構造のままでは、賃金上昇や労働環境の改善といった「新4K」の実現は困難です。

 筆者は、「業界全体」が適正価格で受注することの重要性を再認識し、発注者とも対等な関係を築いていく必要があると考えます。ダンピングが常態化すれば、業界全体の価値が毀損され、優秀な人材も集まりません。業界として一枚岩となり、社会に向けて建設の適正な価値を訴える機運を高めるべきです。

2.建設業のイメージ刷新は“中から変える”べき
 給与・休暇といった条件面の改善も重要ですが、筆者がより重視しているのは各企業の「職場風土づくり」です。制度だけ整えても、現場での人間関係や成長実感が伴わなければ、定着にはつながりません。

 たとえば、技能労働者が安心して働ける環境づくり、若手が意見を言える風通しの良い組織文化、現場に誇りを持てるようなリーダーシップなど、企業風土の改善こそが最も効果的な定着・育成施策になります。これは中小企業にとっても大きな武器になります。

3.人手不足の本質は“業界”ではなく“企業”にある
 筆者がこれまで支援してきた建設企業の中には、若者から積極的に応募がある企業も少なくありません。これらの企業に共通しているのは、業務の透明性、処遇のわかりやすさ、社内コミュニケーションの良さなど、「魅力を見せる努力」を惜しまない姿勢です。

 つまり、人手不足は業界全体の問題である一方で、企業ごとの努力と工夫によって大きく改善できる側面もあります。採用サイトやSNSなどを通じた情報発信、社員の声を積極的に取り入れる制度設計など、自社を“見せる力”が今後さらに重要になるでしょう。

4.人材育成のカギは“社内文化”と“対話”
 働き方改革やCCUSの推進といった仕組みづくりも重要ですが、最も効果があるのは現場での「育てる文化」です。若手社員や外国人労働者が自ら育っていく環境は、上司や先輩が時間をかけて関わっている現場にあります。

 筆者は、「現場の声かけ」「業務外のコミュニケーション」など、何気ない関わりこそが人を育てる土壌になると実感しています。制度ではなく、『関係性』の中で人が育つ。この視点を多くの建設企業に共有したいと考えています。

まとめ:現場が未来を切り拓く「二重の変革」とは

 建設業の長期ビジョン2.0は、業界の進むべき方向を力強く示しています。AIやロボットといった技術開発がどこまで進歩するかは不透明ではあります。それでも、着実に理想に近づいていることは確かでしょう。そして、どんなに優れたビジョンであっても、それを現実に引き寄せるのは私たち現場にいる人間です。

 建設業が真に「選ばれる産業」になるためには、発注者との対等な関係性の構築、企業ごとの魅力の発信、そして現場からの人材育成が不可欠です。技術開発を進めるとともに、構造改革と意識改革、この“二重の変革”を同時に進めることが、未来を切り拓くための道だと筆者は信じています。

 今こそ建設業が、過去の常識に縛られるのではなく、自らの未来を創り出す力を発揮する時です。その主役は、ほかならぬ“現場”なのです。

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