• 2026/02/03 掲載

パナやシャープも震える…ダイソンと「掃除機王者」争うシャークが大逆転した“真因”(3/3)

新連載:家電で読むメーカー戦略図鑑

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パナソニックの一歩先を読んだ──シャークが作った“新基準”

 2022年9月には、自動ゴミ収集ドックを搭載するコードレススティック掃除機「EVOPOWER SYSTEM iQ+」が登場した。

 パナソニックが2021年10月に発売した「MC-NS10K」の方が先だったが、コードレススティック掃除機の上位モデルでゴミ収集ドックを採用したのはこの製品が最初だった。最近では国内大手メーカーの多くが上位モデルにゴミ収集ドックを採用しており、トレンドを先取りする形だった。

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2022年9月に発売されたゴミ収集ドック初搭載モデルの「EVOPOWER SYSTEM iQ+」
(出典:シャークニンジャ)
「米国でロボット掃除機を販売しており、社内にテクノロジーと知見はありました。毎回掃除後にゴミを捨てるのが面倒という困りごとは日本だけでなくグローバルでも同じだと思いますので、その悩みを解決するためにゴミ収集ドックを組み合わせました」(長瀬氏)

 当初のゴミ収集ドックは横幅が広くて圧迫感があったが、2023年6月発売の「Clean Sense iQ+」からはデザインを一新し、よりインテリアになじみやすくなった。

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こちらは2025年9月に発売された「EVOPOWER SYSTEM BOOST+」
(写真:筆者撮影)

「当初はロボット掃除機に使っていたゴミ収集ドックを流用した形だったので横長でしたが、次のモデルからは横幅を狭くして、視覚的に小さく見えるような工夫をするようになりました。最新モデルではひし形にすることによって、よりコンパクトに見えるように進化を遂げています」(長瀬氏)

日本向けに開発→アジア展開へ、次の“成長の手”

 ハンディ掃除機のEVOPOWERからEVOPOWER Plusが生まれ、前出のEVOPOWER SYSTEMへと進化を遂げた。

 スチームモップなどの場合は米国向けモデルをカスタマイズして日本向けに発売する場合もあるが、EVOPOWER SYSTEMは毎年日本市場向けに開発している。これは、日本のコードレススティック掃除機の市場規模が大きいのが1つの理由だ。

 シャークニンジャは韓国やシンガポール、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドなどAPAC(アジア太平洋地域)に幅広く展開しており、日本向けに開発した製品をベースとしてAPAC向けに展開していく流れになっているという。

「APACのビジネスも広がってきていますので、日本だけでなくAPACのニーズも入れながら、製品作りを検討していく可能性はあると思います」(長瀬氏)

 2018年の本格参入から8年目を迎え、シャークブランドの認知度も高まっているとシャークニンジャ マーケティングコミュニケーションズ・デジタル ディレクターの小原志織氏は語る。

「我々はブランドイメージを高めるために広告を出すという考え方ではありません。お客さまに満足していただける製品を出して、その製品が認知されることでブランドを作っていくという考え方です。シャークブランドは次第に広まっており、最近は周りの人に聞いてもシャークを持っているという方が増えてきました」(小原氏)

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左からマーケティングコミュニケーションズ・デジタル ディレクターの小原志織氏、プロダクトマーケティング ディレクターの長瀬陽子氏
(写真:筆者撮影)

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ミスト噴霧機能を搭載するサーキュレーターファン「FlexBreeze」シリーズ
(出典:シャークニンジャ)
 シャークブランドの今後の製品展開も気になるところだ。現在、シャークブランドではスティック掃除機とハンディ掃除機とスチームモップのほか、2025年からバッテリーを内蔵するサーキュレーターファン「FlexBreeze」シリーズをラインアップしている。

 お膝元の米国ではロボット掃除機も展開しており、さらにはヘアドライヤーやLEDフェイシャルマスク美顔器などの美容家電もラインアップしている。

 また、米国では販売金額でシャークブランドを上回っているキッチン家電の「NINJA(ニンジャ)」ブランドも2024年に本格参入したばかりだ。

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2024年2月に発売した「Ninja Blast コードレスミキサー」
(写真:筆者撮影)

「日本では新しいカテゴリーに参入したばかりで、ほとんどが掃除機のビジネスです。いかに掃除機以外のカテゴリーを膨らませていくかが我々の経営課題だと思っています。ニンジャではブレンダーに加えて加熱調理家電も発売しましたので、これから少しずつ広げていきたいと思います」(長瀬氏)

 2023年にはドライヤーとスタイラーの2製品で美容家電市場にも参入したが、いったん販売終了して再参入の機会を狙っている。

「購入された方や使われたスタイリストには好評だったのですが、競合ブランドの強さを痛感しました。後発メーカーとしては今までにない新しいものを準備して参入しないと、そこの牙城を崩すのが難しいのかなという印象です」(長瀬氏)

 サーキュレーターファンのFlexBreezeシリーズは2025年5月に第1弾モデルを発売したため、夏の扇風機商戦を若干逃してしまったものの、「ポテンシャルは感じました」と長瀬氏は語る。

 シャークニンジャの事例が示しているのは、後発メーカーでも、日本市場で勝つ余地は十分にあるという事実だ。ただしその条件は、性能競争でも価格競争でもない。生活者の困りごとを起点に、製品を小さく作り、素早く試し、失敗を前提に改良する。そして成功した設計思想を、次のカテゴリーへと展開する。

 家電市場は成熟していると言われて久しい。しかし、視点を変えれば、まだ戦い方は残されている。シャークニンジャは、その可能性を示した数少ないプレーヤーだと言えるだろう。

 掃除機市場でシェアを伸ばしたことで存在感を示したシャークニンジャが、今後どのような商品戦略でシャークブランドとニンジャブランドの魅力を高めていくのか。今後の展開が楽しみだ。

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