- 2026/02/19 掲載
【比較】ファナックら5社「フィジカルAI」覇権争い、カギは「AI技術」じゃなかった…(2/2)
儲けは出ているか? 注視すべき「3つのポイント」
これらの構造の違いを踏まえると、フィジカルAIの導入ニーズが強まる局面でも、装置・システムを提供する側の収益化には時間差やバラつきが生じやすい。もう少し具体的に説明しよう。第1に、AIを組み込むほど「前工程」が増える点だ。現場からデータを集め、品質を担保し、学習・検証のサイクルを回すには、それなりの人と時間が必要となる。
安川電機は、モーションコントロールでは付加価値改善に寄与した一方、ロボットでは案件ミックスの影響などで利益が下がったと説明する。収益性は、単純な台数増よりもどの用途・顧客で受注したかに左右されるのだ。
第2に、顧客側の「使いこなし」までを含めた費用が表に出にくい点だ。稼働率の向上や歩留まり改善といった効果は顧客のコスト削減として顕在化しやすい一方、メーカー側の収益はハード販売に依存する限り一過性になりやすい。
運用支援やソフトウェアの継続課金モデルへ転換できなければ、AI投資の成果が損益に表れるまでに時間がかかってしまう。さらに、導入時の調整や現場教育にかかるコストは販管費として先行し、外部からは収益化の進ちょくが見えにくい点も留意が必要である。
第3に、世界の設備投資の濃淡が大きい点だ。たとえばファナックはロボット部門で中国のEV関連向けや一般産業向けが伸びた一方、国内の自動車向けは復調せず、地域・用途でまだら模様が続くとしている。
フィジカルAIの勝ち筋は「ロボットの知能」ではない「あれ」
フィジカルAIの勝ち筋は、単体のロボットの知能ではなく、工場・物流のデータを束ねる設計にある。キーエンスが強いのは、センサーで現場の状態を計測し、改善テーマを定義しやすいことだ。高い利益水準は、計測と提案を繰り返すビジネス構造そのものを映す。ここで効いてくるのが「データの継続取得」だ。異常検知や予兆保全は、導入時点の精度より、運用で学習し続けられるかで差がつく。つまり、機器を納めて終わりではなく、稼働ログ、品質ログ、保全履歴を取り続け、アルゴリズムと現場の手順を同時に更新できる企業ほど、サービス化が進む。
ファナックや安川電機は、ロボットやサーボ、CNCなどの制御領域を起点に、稼働データをサービスへ接続できるかが焦点となる。
三菱電機はFAシステムを含む広い事業ポートフォリオを持ち、構造改革費用を除いたベースでは増益基調にある。ただ工場全体を最適化するには、機器間の接続とアプリ層の標準化が欠かせない。標準化が進めば、立ち上げ工数が減り、案件ビジネスのブレも小さくなる。
ダイフクは「物流のOS」に近い立場にあり、WMSや制御ソフト、保守を含む運用の一体提案ができる。売上の約4分の1を米国が占めるとし、現地生産能力の増強も進めた。物流は工程が可視化しやすく、AI最適化の成果をKPIに落とし込みやすい点で、サービス化と相性が良い。
フィジカルAIは「需要がある」段階から「儲かる型が固まる」段階へ移りつつある。ただし勝者は、AIを語る企業ではなく、(1)現場データを継続的に取り込み、(2)安全と品質を担保し、(3)導入後の運用で利益を回収できる企業だ。フィジカルAIはようやく実装フェーズに入った。2026年度で伸びるのは、売上ではなく、利益の質となるだろう。
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