- 2025/12/22 掲載
【独自】ホンダは「空飛ぶクルマ」をいつ飛ばす?eVTOLで示す“全電動ではない”答え
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
ホンダの“再挑戦”を託されたキーマン──eVTOL率いる東氏
本田技術研究所(以下、ホンダ)が開発を進める電動垂直離着陸機(eVTOL)は、民間小型ジェット機「HondaJet」に続く、ホンダの「第二の航空機」として世界的な注目を集めている。このプロジェクトを率いるのが、チーフエンジニアの東 弘英氏だ。東氏は、飛行艇で有名な新明和工業からホンダに入社後、長期にわたりHondaJetの開発に携わった経験を持つ。基礎研究所での空力やコンポジットの研究を経て、現在は埼玉県和光市の研究所に勤務し、米国と往復しながら次世代モビリティ開発の先頭に立っている。
ドバイで世界初公開、ホンダ「空飛ぶクルマ」の決定的な武器
2025年11月、世界150カ国から1500社が集まる航空業界最大級の展示会「ドバイエアショー」で、ホンダはこのeVTOLプロトタイプを世界初公開した。展示されたキャビンモックアップやターボジェネレーターは、ホンダの「次世代モビリティ戦略」の核心を体現している。ホンダのeVTOL開発は2020年から本格化しており、その設計思想の根幹には、同社が時間をかけて確立した民間航空機開発の実績、すなわち「HondaJetのアセット(資産)」が存在する。
東氏は、「このアセットこそが競合他社である、トヨタ・ANAと提携した『Joby Aviation』や住商・JALと提携した『Archer Aviation』との決定的な違いになります」と語った。開発チームにはHondaJetに携わった社員に加え、空力に精通したF1の技術者も参画しており、カリフォルニア州サンルイスオビスポの米国開発拠点と連携しながら、航空とモビリティの知見を融合させている。
ホンダのeVTOLが他社と異なる点はそれだけではない。真に注目すべきは、なぜ「全電動」を選ばなかったのかだ。その答えは、競合がまねできない設計思想と技術の核心にある。 【次ページ】「全電動では飛べない」ホンダのeVTOLが示した“現実解”
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